対決!戦車(チャリオット)!
「ヒャッハー!気持ちいいぜ!これが戦車の力だ!」
砲撃を繰り返しながら、ヒューマニアの指揮官、ジェイは歓声をあげている。一方的に敵陣に攻撃を出来る、その優越感に浸っていたのだった。
「ジェイ様!た、大変です!」
「ん?何事だ?」
再び砲身を構え砲弾を放とうとした時、部下から緊急の報告が入る。彼は頭上の入り口から顔を出し、部下を呼びつけた。
「おい、何があった!」
「刺客です!ケモリアから敵が来ました!」
「な、何!?もう来たか!外にいる騎士達は何をやっている!?」
「そ、それが……全員やられました!」
「ハァ!?全滅だと!?」
部下からの報告に驚愕するジェイ。部下は尚も言葉を続ける。
「敵は二人ですが、ここまで直進してきてます。まもなく到着するかと……。」
「そんなに近くにか!?クソっ、まあいい。この戦車の力で粉々にしてやる!」
ジェイは再び戦車の入り口に入り、中のモニター部分に目を向ける。そこには猛烈な勢いで進んで来る、二人の冒険者の姿があった。
「こいつ等か……ん!そのうち一人はあの女か!いいぜ!二人まとめて粉々にしてやるよ!」
◇◇◇
「邪魔だ!さっさと道を開けやがれ!」
「どいて下さい!貴方達に構ってる暇は無いんです!」
スノウとセインの二人はそれぞれ剣を振るいながら森の中を直進していた。途中で騎士が襲って来る事もあったが、二人で協力して突破し、遂に目的地の近くまでやって来た。
「そろそろ森を抜けるな。スノウ、行くぞ!」
「はい!セインさんも気をつけて!」
二人は少し離れた場所に移動し、同時に森から飛び出した。現れたのはゴツゴツとした岩場、その一番上に、奇妙な乗り物がドンと陣取っていた。
「あれか……早速壊すぞ!突撃だ!」
「待って下さい!何か細い筒が光ってませんか?」
二人が乗り物を見ると、突き出た筒が急速に光り輝いている。そこに光の弾が現れ、段々と大きくなっていった。
「セインさん……あれって何でしょう……?」
「……俺はああいう乗り物にはあんま詳しくないんだ。だけど一つ言える事がある。それはな……。」
やがて筒が二人の方向を向き、大きくなった光の弾がより輝き出す。そして……
「一気にジャンプだ!この場から離れろ!」
「はい!」
二人は足に魔力を溜めて、一気に地面を蹴り出す。近くの木に跳んだ直後、自分達の居た場所に光の弾が飛んで来ていた。弾が森の奥に消えると同時に轟音が響き渡る。そして二人の居た足元は……弾の通った地面がえぐれ、熱を持っているかの様に赤く光っていた。
「あ……アホか!?何だあの威力!?あんなの食らったら一発でアウトだぞ!?」
「あれが飛んできたなら、直したばかりの門も壊れますよね……。とにかく急いで壊しますよ!」
「ああ!さっさとぶっ壊してやるさ!筒が光り出したら注意しろよ!」
「チッ!避けやがったか。すばしっこい奴らだ!」
「あっ何か聞こえてきた!あの乗り物からです!」
戦車から響く声。それはスノウにとって聞き覚えのある声だった。
「あの時逃げた騎士です!こんな所に居たんですか!?」
「そうだ!お前達冒険者に復讐する為戻って来たぞ!このジェイ様が、今から消し炭にしてやるよ!」
再び砲身を二人に向けるジェイ。しかしその時、既に二人の姿はそこには無かった。
「き、消えた!?どこだ、どこに行った!?」
「上だぜ!その筒ぶった斬ってやる!」
セインは剣を構え、重力を乗せて砲身に叩きつけた。
「……あ、ありゃ?斬れない!?硬すぎんだろ!」
「へ、へっ!ビビらせやがって!」
「それならこれはどうですか!アイスバインド!」
続いてスノウが氷の鎖を作り出し、戦車に叩きつけるが、それも効き目が無い。セインと同じように、攻撃は弾かれてしまった。
「な、何ですあの乗り物!?全く攻撃が効かない!」
「硬いな。どうやって壊すか……。」
「オラ!もう一度攻撃だ!さっさと消えてしまえ!」
再び砲身が二人に向き、光の弾が生み出される。それを見た二人はもう一度ジャンプし回避するが、その度に森から轟音が響き渡る。
「どうする?当たりたくは無いが、何度も避けてたら森が消し炭になっちまう!」
「こうなったらこれを使います!………ハァァァァァァ!」
「それって……オイちょっと待て!それは使うな!」
スノウは全身に魔力を込めると、目の前に氷の槍が現れた。スノウはそれを握ろうとするがセインは制止する。
「それって前言ってたアーティファクトじゃないか!?使ったら暴走するんだろ!?」
「それでもやらなきゃ、この状況は打破出来ません!一気に凍らせてやっつけてやります!」
スノウは現れた槍を右手に握り締め、戦車に向かい合う。だが……
「さあ覚悟して下さい……って、……アアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
「スノウ!どうした!?」
「痛い!?急に手に槍が吸い付いて……!?取れなくなっちゃったんです!」
「だからやめろって言ったんだ!どうすんだよ!」
突然の激痛にしゃがみ込むスノウ。槍は彼女の魔力を吸い取り……奪い取っていく様だった。
「このままじゃ体が保たない!でも俺じゃどうにも出来ない……。」
「ハハッ、何だか知らんが自滅しやがった!ここでトドメを刺してやるよ!」
ジェイはこの機を逃すまいと砲身をセインへ向ける。セインは避ける事は出来るが、スノウの前に立ち、戦車に向かい合った。
「クソっ、俺は仲間を見捨てたりはしない!そんな砲撃、俺が真っ二つにしてやる!」
セインは十字剣を抜き、魔力を込め始める。剣は光り輝き変形、砲撃を受け止めるべく構えを取った。
「悪いけどその腕、一旦もらうわよ。」
「えっ……い、あ、アアアアアア!?」
「う、後ろか?何だよ次から次へと!?」
セインが振り返ると、スノウの右腕が体から離れ、魔力の供給を断たれた槍は消えていた。そこには自分を助けてくれたメイド服の女性が立っているのだった。
「あ、アンタは!」
「貴方がここに居るってことは、街は大丈夫そうね!ここに来て正解だった!」
「な、何でスノウの腕を?」
「!」
セインから出た「スノウ」の言葉に反応した女性は、一瞬遅れて彼へ、そして目を強く閉じ息を荒くした、足元のスノウへ話しかける。
「……あのままじゃアーティファクトに魔力を吸い尽くされて死んでたわよ?それに……貴方は魔族でしょう。腕の再生は出来ないかしら?」
「あ、再生……一応、出来ますが……?」
「だったらあっちで休んでいなさい。ここに居られると邪魔よ。」
「は……はい……。すみ、ません。」
スノウは女性に言われるがまま、森の側に隠れ、傷を癒やす事にした。おぼつかない足取りで森に入るのを見届け、メイド服の女性は戦車に向き直る。
「今からあれを攻略するわよ!準備はいい?」
「あ、ああ!大丈夫だ!必ず勝つ!力を貸してくれ!」
そしてセインとメイド服の女性は、戦車を倒すべく、走り出した。




