それぞれの戦い!合流、そして突入準備
ついに今回で60話目になります。楽しんで頂ければ嬉しく思います。
「皆さん急ぎましょう!早くしないと街が危ない!」
「分かってるさ!だがこっちの方が近い!道は俺達に任せてくれ!」
「そうよ!ここの森は私達の育った森!私達の庭のような物よ!」
皆が各地で戦っている中、スノウは戦士達と一緒にケモリアの街に向かっている。戦士達は慣れた足取りで森を駆け抜け、スノウもそれに続いていく。
「……この感じ、敵の気配だ!一度しゃがめ!」
「は、はい!」
三人は草木の生い茂る場所に体を伏せ、周りの様子を窺う。すると側から騎士達の声が聞こえてきた。
「おい!早くしろ!向こうの方が手間取ってるようだ!獣人が暴れまくっているらしいぞ!」
「クソ!何で俺達が反対に行かなきゃならないんだ!足止めを食うわけには行かないんだぞ!」
そう言って走っていく騎士達。その奥から、金属のぶつかる音や風の音が三人の耳に流れて来た。
「獣人……ナッツさん!?どうしよう、助けに行かないと!」
「待て!今行ったらケモリアの街に間に合わなくなる!」
「でもこのままでは!」
焦りながら騎士達を追おうとするスノウ。それを見た女性の戦士が彼女の肩を押さえて止める。
「スノウ!気持ちは分かるけど、向こうには鬼の人も一緒に居るはずでしょ!それに……ナッツは弱い子じゃ無い。私達と同じ、ケモリアの戦士だから!仲間を信頼して、今出来ることをやるのよ!」
「皆さん……。……そうか、そうだよね。今、私がやるべき事は!」
スノウは大きく深呼吸し、戦士達の方へ向き直った。
「ケモリアの街へ!道案内、お願いします!」
「よっしゃ任せとけ!ここを通れば早く着く!」
三人は森の中を抜け、敵を避けながら最短ルートでケモリアへと走って行った。
◇◇◇
「お頭急げ!さっきの音は間違い無く攻撃の音だ!ヒューマニアの奴らが来たんだ!」
「分かっています!首輪の件、きっちりとお返ししてやりましょう!」
「いたぞ!ヒューマニアの騎士だ!」
「全員でかかれ!一人も逃がすな!」
「「「「ウォーーーー!」」」」
各地での戦いの中、リン率いるゴブリンの戦士達の士気は高まっていた。頭であるリンの一件ももちろんあるが、今はそれだけではない。事情を理解し、和解の道を選んでくれたケモリアの人々への恩返しをすべく、彼女達は街に向かっていた。
「覚悟しろ!ヒューマニアの騎士め!」
「よくもお頭を酷い目に合わせたな!全員倒してやるぞ!」
「な、何だ貴様らは!?ギャァァァァァァ!?」
居合わせた騎士に向かって棍棒やナイフを突き立て、必死に攻撃する。頑丈な鎧に身を包む騎士も、不意打ちでは対応できず、その場に倒れ込んだ。
「よし!このまま騎士を倒しながら、街まで帰還します!皆の者、進めー!」
「「「オーーーーーー!!」」」
ゴブリン達は一直線にケモリアに進む。その過程で居合わせた騎士達を一人残らず薙ぎ倒し、怒涛の勢いのまま街の門に向かっていった。
◇◇◇
スノウ達は無事にケモリアの門に到着した。戦士達の索敵と道案内のお陰で、ほとんど消耗すること無く辿り着けたのである。
「よし!敵を避けてここまで来れたぞ!にしても、敵の数が多かったな。それにこの感じ、さっきまでヤバい奴らが戦っていたのか……?」
「そうね。スゴいピリピリした感じ。この分だと、街の中も危ないかもしれないわ。スノウ、追いつけてる?」
「問題ありません!早く入りましょう!」
「だが、門を開けなくちゃならない。力ずくで登ってもいいが……。っておい!?何だこれ!?」
門を開けようと城壁に近づく三人。すると城壁に巨大な穴が空いているのが分かった。丸く空いた大穴は、一度に何人も入れる程の大きさになっている。それを見た三人は顔が真っ青になった。
「大穴が開いてるじゃない!?敵がもう中にいるのなら、これは危険な賭けになるわよ!」
「……いや、そんな事言ってる場合じゃない!中の皆が危ないんだ!俺は行くぞ!」
三人が突入を考えていると、森の奥からガサガサと、何かがこちらに近づいて来る音がした。
「まさか敵か?ここまで上手く避けたつもりだったが!」
「仕方ないわよ!こんな状態で完璧な索敵は出来ないわ!」
「お二人は中をお願いします!ここは私に任せて下さい!」
スノウが雷鳴剣を構えて、敵を待ち受ける。やがてそこから勢い良く、誰かが飛び出してきた。
「皆さん!無事でしたか!」
「その声は、リンさんですか!」
「スノウさん、ケモリアの皆さんも!良かった!」
飛び出してきたのはリンとゴブリンの集団である。ケモリアへ帰還すべく、ひたすら敵を倒しながら直進してきたようだった。
「皆さん、街の中には入れないのですか?」
「いや、入れない事は無いが危なすぎる。ここに来るまでにあれだけの敵が居るなら、中も危ないと考えるのが自然だろう。」
ケモリアの戦士達は中を覗き、耳を澄ます。すると中から沢山の悲鳴が聞こえてきた。それを聞き、戦士は拳を強く握りしめる。
「だがそんな事言ってられない!ここは俺達の居場所なんだ!早く入らないと仲間が!」
「でも、迂闊に入れば私達も危ないわよ!もし私達がやられたら、誰が皆を助けるのよ!?」
「ストップ!ちょっと落ち着きましょう!はい!深呼吸!」
スノウの提案でここに居る皆が大きく息を吸い、吐いた。だが、状況が状況であり、落ち着ける状態では無い。それは彼女も分かっていた。
「そうだ!お二人が索敵すればどうですか?敵の大まかな位置って分かりませんか?」
「それも手だが、焦ってる今の俺達じゃまともに出来ないと思う。下手を打てば全滅だし、あまりにも不確定すぎる。」
「そうですか……。」
「あ、あのー。」
皆が悩んでいると、リンが自信なさげにそっと手を上げた。
「どうした?いい方法があるのか?」
「いえ、その……これだけ人数がいれば、無理矢理突入しても良いのでは?」
「ちょっと正気なの!?もしも全滅したらどうするのよ!?」
「で、ですから、先に私達の仲間が周りを偵察します。積極的に制圧しようとしてるなら、狙うは街の中心。外側は手薄になるはず。それを確認できれば、皆で一気に押しこんで……!」
それを聞いたケモリアの戦士は少し考え、すぐにリンの下に駆け寄った。
「確かに、それなら行けるかもしれない!頼んでいいか?まず中を探って、突入のタイミングを教えてくれ!」
「分かりました!それでは、お願いします!」
「おう!任せてくれ!」
偵察を担当する二人のゴブリン。その手に棍棒を持ち、早速中の様子を探るべく、大穴の側に近寄っていく。
「じゃあ行ってくるぞ!皆は何時でも入れるようにしておけよ!」
「ああ!よろしく頼む!」
そしてゴブリン達はそっと大穴から街へ突入するのだった。
「皆待ってろよ!必ず成功させて、助けに行くからな!」
今回も読んで頂き、ありがとうございます。
続きが気になる、おもしろかったと感じて頂ければ幸いです。




