増援到着!狂気との戦い
セインが襲われる少し前。メイド服の女性が森の拠点から進軍する記事たちを追尾していると、ケモリアの街から爆音が聞こえてきた。
「な、今の音……おかしいわね。確かに私は拠点を見張ってた!奴らが動いた気配は無かったのに……。」
不審に思う女性。すると騎士達が話し始めたので、木の陰からこっそりと様子を窺う事にした。
「あの音は、攻撃に成功したようだな!」
「あれが合図だ!更に進軍速度を上げろ!裏から回り込んで、ケモリアを潰すんだ!」
「しかし考えたよな。敢えて警戒の強い場所を狙うんだから。」
「お相手は普通こっちから来るって思うよな?警戒の強い場所は攻めてこないだろうってな!」
「そして奴らは向こうの対処に時間と人員を持っていくだろう!こちらが手薄になり次第、俺達が制圧する!行くぞー!」
「成る程、考えたわね……!なら一刻の猶予も無い。ここで止めるわ!」
会話を聞いた女性は即座に回り込み、騎士達の前に現れた。
「貴方達!ここから先へは行かせないわ!」
「誰だコイツ?」
「これがジェイ様が言ってた冒険者か!……しかし、中々可愛いじゃないか。」
「おい!そこのお前!俺達の部下になれ!俺達の言う事、何でも聞いてもらうぞ!」
余りにもおかしいその発言を聞き、彼女の目はたちまち冷たい目に変わった。
「……全然駄目ね。話し合うだけ時間の無駄かしら?」
「何だと!?おい、お前達、コイツを始末しろ!」
「ああ!楽しませてプギャァァァ!」
「ど、どうした!?」
大勢の騎士が見た光景……そこには、女性を襲おうとした騎士が宙を舞う様が映し出されていた。
「悪いけど、貴方達はここで終わりよ!」
女性は腰の鞘から一本の扇を取り出す。それを振ると、その地点から竜巻が巻き起こった。
「踊りは好き?もし好きなら舞ってもらおうかしら!」
彼女は扇を絶え間無く振り続ける。その度に風が巻き起こり、騎士達を切り裂いていく。
「な、何だあの化け物!?殺される!逃げなくては!」
「逃さない!全員ここで終わりよ!」
女性は扇を開いて、目の前にいる騎士達に照準を合わせると一気に振りかざした。
「唸れ、トルネード!」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」
扇から放たれた風はたちまち大きな竜巻となり、辺り一面を引き裂いていく。騎士達は散り散りに逃げ出すが、皆竜巻に巻き込まれて上空に吹き飛ばされていた。
「これでよし!思ったより大したこと無かったわね。」
女性の周りには、大勢の騎士達が倒れていた。当分の間、起きることは無さそうである。それを確認し手についたホコリを払うと、すぐにケモリアの街へと走り出した。
「あっちが本命かしら!待っててよ、今すぐ行くから!」
◇◇◇
時は戻ってここはケモリアの門。ナイフを持った男と向かい合った彼女は扇を持ちながら相手を睨みつけていた。
「いい顔だ。自信に満ち溢れている。だが俺は……そんな顔が苦痛に歪むのを見るのが何よりも楽しいんだよ!」
男はナイフを彼女に振りかざす。それを再び弾く女性だが、男は腰からもう一本ナイフを取り出し、再び斬りつけた。
「そんな攻撃、私には効かないわよ?」
「効かない、ねぇ。そんな事言ってられるのも今のうちだぜ?」
「そこっ!胸がガラ空きよ!」
「……チッ!」
激しい斬り合いが続く中、隙をついて女性は扇を男の胸に突きだす。攻撃を警戒した男はすぐに飛び退くが……。
「そんな距離、風には関係無い!旋風突き!」
「何っ、伸びるだと!?」
突き出した扇、そこから剣のように風が渦を巻き、男に突き刺さる。だが男は負傷しながらも距離を取り、飛び退きながらナイフを投げつけた。
「効かないって言ってるでしょう!?」
「ああ、そう言ってたな!」
再びナイフを弾き、距離を詰める女性。男は落ち着いた動きでもう一本のナイフを取り、彼女を牽制した。
戦いが始まってしばらく後。その戦いの影響か、あるいは時間が経ったからか、森の中には霧が立ち込めてきた。そんな中、女性は男を見てボソッと呟いた。
「……ぬるいわね。」
「ああ?」
「もっと強いかと思ったけど、口だけだったみたいね?」
「……挑発のつもりか?そんな物が俺に通用するとでも?」
「さっきの訂正するわ。八つ裂きショーじゃなくて、貴方が泣いて謝る謝罪ショーなんてどうかしら?結構映えるんじゃない?」
「このクソガキが!今すぐテメェの喉元真っ二つにしてやるよ!」
女性の挑発に乗り、再び突っ込んでいく男。彼女は振られたナイフをしゃがんで避け、足に扇を振りかざす。
「吹き飛べ!風風船!」
魔力を込めた扇に風が集まり、透明な玉を作り出す。右手で足を掴んで引き寄せ、左手でその玉を足にぶつけるとその箇所で炸裂し、男を空中に弾き飛ばした。
「ギャァァァァァァ!?」
「どうかしら?結構痛かったんじゃなくて?」
「クソ……痛え。何だよ、何だよお前は!俺達の邪魔をしやがって!」
地面に墜落した男は足を抱えてうずくまる。何か喚いているが、女性には関係無い。その様子を冷ややかに見ながら、手元の扇を撫でていた。
「もう動けないでしょう。そこでじっとしてなさい。早く街の中に行かないと……!」
そして女性は街へと走り出す。そのはずだった。
「……えっ?」
急に身体中に激痛が走り、女性は胸を押さえた。
「ゴボッ!……な、何で!?」
口から大量に吐血する女性。痛みをこらえていると、うずくまっていたはずの男が何事も無かったかのように立ち上がった。
「やっと効いてきたか。俺の隠し玉が!」
「隠し玉……まさか、アーティファクト!?」
男は再びナイフをちらつかせ、得意気に話を続けていく。
「ああ!この[猛毒の小刀]を使ったのさ!触れた相手に毒素を送り込んで、即座にダメージを与える!」
「どういう、事?私は扇できっちり攻撃を弾いて……。」
「最後の一撃、俺の体に直接触れただろう?武器だけじゃない、持ってる俺の体にも効果は出るんだよ!」
「……くっ!気づかなかった!そんな手を使うなんて……!」
女性は男を睨みつけるが、先程までの勢いは無い。その目を見ながら男は大笑いしていた。
「そう、その顔だよ!上手く行っているつもりが、実際は詰みに向かっている!それを察した時の表情!堪んないねえ!」
「……とんでもないクズね。」
「その通りよ!ま、どの道お前はこれで終わりだがな!」
そして男はナイフを片手に、女性にトドメを刺すべく走り出した。
「じゃあなクソガキ!俺の仕事の邪魔をした罰だ!」
そしてナイフが振り下ろされ、女性はその場に倒れるのだった。




