戦慄、悪意を超える狂気!
「お、おいおい何だこりゃ!?城壁に穴が空いてんじゃないか!?」
セインは突然の出来事に驚愕していた。食事を途中で切り上げ、音のした場所を確認すると、城壁に大きな穴がぽっかりと空いている。
「敵襲か!?にしたって、ここは相当頑丈な壁なのに!相手も本気って事だな……!」
セインが背中の剣を手に取り、敵襲に備える。長期戦を予想し、アーティファクトである[聖なる十字剣]は温存していた。すると同じタイミングで、大勢の騎士達が森の中から現れた。
「壁が壊れたぞー!街に入れー!」
「中の奴は好きにしていいとの事だ!楽しみじゃないか!」
「いいねいいねー!さっさと始末してやろうぜ!」
それぞれの目的を話しながら近づいて来る騎士達。それを見たセインは露骨に嫌な顔をしていた。
「何だあの騎士達は……ただのクズ野郎じゃないか!あんな奴らに、ここを進ませる訳にはいかない!」
すぐにセインは穴から外に出て、騎士達の前に立ち塞がった。
「おい!そこのクズ野郎共!この俺が相手だ!ここから去れ!ここには一歩たりとも踏み入れさせない!」
「何だあのガキ?雑魚がイキってんじゃねぇ!」
騎士が一人、セインに向けて斬りかかる。それを回避し、すかさず斬撃を叩き込んだ。
「当たるかよ、そんな攻撃!ハアッ!」
「ゲェーッ!」
斬られた騎士は吹き飛ばされ、木にぶつかって動かなくなった。気絶してしまったようである。
「な、何だあのガキ!?まさか冒険者か!?」
「だったらここで死んでもらおう!俺達の邪魔をしたんだからな!」
「黙れ侵略者!俺を倒そうなんて百年早いんだよ!」
次は二人の騎士が突進してきた。セインはまず、振り下ろされた剣を弾き、首元に蹴りを入れる。そして相手が怯んだ所に一閃、一人を吹き飛ばした。
「次はお前だ!吹き飛びやがれ!」
「ヒッ、何だァァァ!?」
「お前は素手で充分なんだよ!」
セインは剣を上空に放り投げ、もう一人の側に走る。腹部にパンチを入れた後、相手の腕を掴んで地面に叩きつけた。
「ギャッ!?」
「おりゃァァァ!あとの奴らにはこれをくれてやる!」
上空に投げた剣をキャッチし、すぐさま構えを取る。
「行くぞ!飛切!」
横に薙ぎ払った剣から複数の斬撃が飛び出した。それは空中を突き進み、騎士達に命中する。
「へぶっ!?」
「ぬっ!?」
「ほぎゃ!?」
斬撃が当たった騎士達はその場にうずくまり、動けなくなっている。しかし全員無力化出来た訳では無い。セインは残った騎士達に向けて大声を張り上げる。
「貴様ら!今すぐ退くならこれ以上は手を出さない!痛い思いをしたくないなら、早く帰ることだな!」
セインは勝ち誇るように声を上げた。これで相手が逃げるのを期待していたからである。だが……。
「お前達は下がっていろ。俺がやってやるからさ!」
森の奥から一人の男が現れる。彼は己のナイフを抜き、セインに向き合った。
「一対一か。……いいさ、相手になってやる!」
「何を勘違いしてるんだ、ガキ?俺達を舐めるなよ?」
すると……男は倒れた仲間の下に駆け寄り……その体にナイフを刺し込んだ。
「ギャァァァァァァ!?」
「……は?」
痛さに暴れる騎士に向けて、尚ナイフを突き刺す男。やがて刺された方の騎士はその場で動かなくなった。
「な、何をしてるんだ……お前は……?」
「そこを通して貰おう!出ないと、この役立たず共が次々死ぬ事になるぞ!」
「し、正気じゃない……。何だこいつは……!」
「俺達は目的の為なら手段を選ばない!使えない奴など必要無い!捨て駒だよ!」
「信じられない……仲間じゃないのか?」
恐怖で顔が引きつるセイン。それを見た男は好機と言わんばかりに他の騎士に指示を出した。
「よし!敵は怯んだぞ!一斉に乗り込め!後は好きにしていいぞ!」
「「「おーーー!」」」
「なっ!?しまった!」
すぐにセインは迎撃するが、動きが止まった隙を突かれ、多数の騎士の侵入を許してしまう。
「クソっ!行かせるかーー!」
セインは斬撃で攻撃するが、狙いが定まらず上手く当たらない。焦りの中、彼は必死に斬撃を繰り返していた。
「ヤバすぎる!あんな奴らに侵入されたら、皆殺されてしまう!待て、待てよ!」
「雑魚が!随分調子に乗ってくれたな!」
「ッ!?」
味方殺しの男がセインに突撃し、地面に倒れた彼の頭を踏みつける。
「俺達はヒューマニアの戦士だ!逆らえば皆殺しだ!」
「ぐっ、なんて力だ……離せよ、このっ!」
「お前はそこで見ているといい!ケモリアの奴らが死んでいくのをな!……いや、それより酷い目に会うかもしれないな!ハハッ!」
「このクソ野郎……!」
「この特等席、いい眺めだろ?もっと楽しんだらどうだ?何も出来ずにな!」
ナイフを片手に勝ち誇る男。セインはそんな男に手も足も出ない。
「誰か……誰か助けてくれ!スノウ!ナッツ!リン!オルガー!頼む、誰か来てくれーーー!」
「無駄無駄!既に俺達の部下がケモリアの外を包囲している。こっちに来る余裕なんて無いぜ!だからお前はここで俺と見物するのさ!ケモリアの行く末を!」
「それは面白そうね。私にも見せて下さらない?」
「は?」
男が言葉に気を取られたその一瞬、風が巻き起こり男を弾き飛ばした。だが男は空中で受け身を取り、何事も無かったように着地する。
「誰だ?俺とこいつの鑑賞会を邪魔するのは?」
「私よ私。随分楽しそうじゃない?」
男の目線には一人の女性が立っていた。メイド服を着た、緑髪の女性である。
「あ、アンタは……?」
「頑張ったわね。ここは私に任せて、中をお願いしていいかしら?」
「で、でも。」
「早く行きなさい!迷ってる暇は無いわよ!」
「あ、ああ!俺は行くよ!ありがとうな!」
セインは女性に礼を言うと、すぐに街の中に走って行った。この場に残った女性は一人、男を睨みつけている。
「せっかくの鑑賞会が……!こうなったらお前が死ぬしかないよなぁ!?お前がショーを見せてくれよ!」
「いいわよ?貴方の八つ裂きショーなんて面白そうじゃない?」
「……舐めるなァァァァァァ!」
男が高速で駆け出し、女性を斬りつける。彼女はそれを扇で受け止めた。
「さあ、始めましょうか。私達の戦いを!」




