迫る戦い、それぞれの思惑
「おい!お前達!早く準備をしろ!ここで失敗すればお前達の命も無いぞ!」
「「「ハッ!」」」
ここはケモリアから離れた崖の頂上。騎士達がケモリアを襲撃すべく準備を進めていた。
「しかしジェイ様、我々だけで攻め落とす事など出来るのでしょうか?以前貴方が行った時は駄目だったのでしょう?」
「問題無い!今回は御子様から頂いたアーティファクトがあるからな!」
「は、はあ。」
ジェイと呼ばれた騎士は、自分に屈辱を与えた冒険者達への復讐の炎を燃やしていた。もちろんそこには、自分の命の為にも失敗出来ない焦りもある。
「俺には後が無いんだ……。だが今度は絶対に成功させてやる!楽しみにしておけクソ冒険者共!貴様らまとめて消し炭にしてくれるわ!」
「よっす。邪魔するぜ?」
「な、何だ貴様は!?」
騎士達が準備を進めている中、突如一人の男が現れた。手元にはナイフを携えて、それを回転させながらジェイへと近づいてくる。
「そんな怖い顔すんなって。俺はアンタを手伝いに来たんだからさ?」
「な、何だと?」
「上からの命令だ。アンタがしくじらないよう応援に来たんだよ。ありがたく受け取っときな?」
「み、御子様から?」
困惑するジェイ。それを見て笑いながら男が肩を叩く。
「ま、そういうこった!頑張って行こうぜ!」
「あ、ああ。よろしくな。」
そう言うと男はにこやかな顔で軽く頭を下げた後、何処かに行ってしまった。
「……まあ、助けに来てくれたのはありがたい!これで我が陣も万全になるだろう!お前達、準備を急げ!」
「「「ハッ!!!」」」
◇◇◇
「よし!トラップ作成完了だ!ここで休憩にしよう!」
「いや、助かりますぞセイン殿!作業が捗ります!」
「いや、元々ケモリアの人達を助ける為に来たんだ!これくらい任せてくれよ!」
セインはレオンと共に、街の中で罠作りをしていた。今用意したのは植物のツルを使った索敵装置。土台にツルを絡ませ目的地にセットし、敵の魔力を感知すると光と音で知らせてくれる優れ物である。
「よっし!飯飯!食べ物が無きゃ疲れは取れないからな!市場で何か買ってくるぜ!」
「お疲れ様です!設置は私がやるので、しばらく休んでいて下され!」
セインは外に駆け出し、レオンはそれを眺めていた。防衛準備はほぼ完了。後はこれを設置して備えれば万全である。
「では、行きますかな!私も頑張らねば!」
レオンは作った装置をカゴに詰め、街の外に歩いて行く。そして門を抜ける前に、門番の下へ向かった。
「リーダー!どうしたんです!」
「ハハッ、協会の皆さんが頑張ってるんだ。私も張り切ってるんだよ!今から罠を設置してくるから、見張りは任せたぞ!」
「ええ!任せて下さい!」
そしてレオンは街を抜け、森の中に入っていった。
◇◇◇
「……騒がしくなってきたわね。」
ローブを被った女性がケモリアの森の中に潜み、状況を確認している。その女性は冒険者協会から増援でやって来た、メイド服の女性である。
「相当離れた場所に拠点を置くのね。なら、ケモリアに部隊が展開された直後に攻めましょう。本陣を落とせば散り散りになるから、そこをまとめて捕まえればオッケーね。」
彼女が見ていたのは森の中にある拠点。そこでは沢山の騎士達が武器を携え、進軍の準備を行っている。
「森の中に拠点を構える、悪くは無いけど私にはお見通しよ。戦いが始まったら真っ先に制圧。そしてケモリアの街に合流!……あの数だとかなり手こずりそうだけど、何とかなるでしょう。」
女性はここに来る前に、マネージャーから受けた注意を思い返していた。
「ちょっと待って?増援に行くのよね?早めに合流したほうが良くないかしら?」
「と思うフミャよね。ちょっと私も考えたフミャ。」
「理由を聞かせてくれない?」
フーシャに理由を尋ねる女性。すると彼女は胸を張ってその理由を答えるのだった。
「えっへん!いいフミャよ!私はあの子達に、増援が来るまで手出し無用と言ったフミャ。つまり、きみが来たら突撃する可能性があるフミャ。ちょっと遅らせた方が良いフミャ。」
「確かに、ありえるわね。……で、本当の理由は?」
「もし強い敵がいる場合、きみレベルの冒険者だと確実に脅威として捕捉されるフミャ。そして本腰を入れてれば、確実にそのレベルの相手が居るフミャ。ギリギリまで隠れて、不意打ちで一気に決めるフミャ。」
「成る程ね。じゃあその方向で準備するわ。」
「頑張るフミャー!応援してるフミャよー!」
「……ん!動きがあるわね。警戒しておきましょう!」
女性の目の前、騎士達がケモリアに向けて動き出す。それを追尾する形で、彼女も動き出した。
戦いの時は目前に迫っていた。




