あの子を探して
「もう3ヶ月……。スノウさん、どうして帰ってこないのよ……。」
メイド服に着替え、ギルドの中でため息をつく緑髪の女性、モルモー。自分もクエストを受けながら、スノウの行方を探していた。
「前回Dランクの依頼を受けたから、当分お金は大丈夫ね。しばらく集中して探さなきゃ!」
モルモーがリュックを背負いギルドを出ようとしたとき、中のカウンターから男の話し声が聞こえてきた。
「しっかし、あの魔族の嬢ちゃん、やっぱ帰ってこれなかったか!」
「そりゃそうだろ!あのダンジョンから出れた奴は一人も居ないんだからな!とっくに魔物のエサになってるさ、きっと!」
(魔族の嬢ちゃん……まさか!?)
モルモーはカウンターに引き返し、冒険者に話しかけた。
「貴方達、ちょっと話を聞かせてくれないかしら?その魔族について。」
「おっ、モルモー。そっか、そういえばお前はアイツと同じ地域の出身だったよな。良いぜ、教えてやるよ!」
「アイツはクエストを受けて、ダンジョンに向かったんだ。それが心配で俺達はこっそり着いていったんだ。なあグレン!」
「ああ、そしたら最深部にアイツが居たんだが、たまたまダンジョンの扉が閉まっちまって、閉じ込められたみたいなんだ。俺とライトは慌てて逃げてきたが……まあ、ダメだろうな。」
酒を飲んでいるのか上機嫌な二人。だがモルモーは二人の話を聞いているうちに顔が青くなってきた。
「教えなさい!あの子はどこのダンジョンに入ったの!?今すぐ迎えに行かなきゃ!」
「無理無理、アイツが入ったのは死人の洞窟だぜ?お前まで死んじまうぞ?」
「それなら尚更急がないと!……ちょっと待って。貴方達、スノウさんを止めなかったの!?死人の洞窟なんて、あの子の実力じゃ無理だって分かってたでしょ!?」
死人の洞窟とは、スノウがクエストで調査に向かった洞窟である。3ヶ月経った今では、行方不明者が続出している事が分かり、危険度が大幅に引き上げられていた。
「仕方ないだろ?どんどん奥に行っちまったんだから。偶然魔物が少ない所を通って、たまたま最深部に着き、その部屋の扉が閉まるなんて思わないさ。」
「たまたま?……まさかクエストを貼ったのは貴方達なの?」
モルモーは二人に詰め寄るが、二人はまるで気にしていないようだった。
「知らないな。ま、実力に不相応なクエストを受けたアイツが悪い!以上!さあ帰った帰った!」
「ふざけるな!あの子が死んだらどうするのよ!?」
「そういえばお前も魔族だったな?アイツが来てからずっと一緒だったし、気にしてたんだろ?良かったら連れてってやろうか?」
「……もういい!貴方達みたいな奴と一緒に仕事なんて出来ない!私はここを抜けさせてもらうわ!」
「どうぞどうぞ。邪魔な魔族が勝手にいなくなるなら有り難い話だ。早く出ていくんだな!」
それからモルモーはギルドを飛び出してから歩き続け、街の外れにあるダンジョンに辿り着いた。
「ここが死人の洞窟……。待っててねスノウさん。すぐに助けに行くから!」
「ちょっと待つフミャ!」
「……えっ?」
モルモーがダンジョンに足を踏み入れようとした時、一人の女性に止められた。その女性は水玉模様の服と、猫を象った帽子を被っていた。
「きみきみ、そこは危ないダンジョンフミャ!入ったら死んじゃうから、進んじゃ駄目フミャよ!」
「止めないでよ!私はあの子を迎えに行かなきゃいけないのよ!だいたい、貴方は何者なの!?」
「やっほ!私フーシャ!危ない所に人を入れない偉い子フミャ!」
自己紹介しながら胸を張る女性に、モルモーは腹を立てつつ、無理やりダンジョンに入ろうとする。
「退いて!貴方に構ってる暇なんてない!」
「フミャ?その子は君のお友達フミャか?」
「そうよ。……いや、違うわ。あの子が来た時から一緒にいた、姉妹のようにも思ってる。大切な人なのよ!」
それを聞いた女性……フーシャは何故かとても嬉しそうな顔をしていた。
「それなら尚更入っちゃ駄目フミャね。君が死んじゃったらその子が悲しむフミャよ?」
「でも、それじゃあの子が……。」
「もしかして、蒼い髪の女の子フミャか?その子なら大丈夫フミャ。フミャの友達が助けてあげたフミャ。」
(えっ、この人、スノウさんの事知ってるの!?)
フーシャの発言に驚愕したモルモー。その顔を見たフーシャはどこか誇らしげな顔をしていた。
「本当!?私が探してたのはその子なのよ!教えて!今あの子は何処に居るの!?」
「それは内緒フミャ。でも一つ言えるとすれば……あの子は今特訓中フミャ。君はどうするフミャ?」
「……私?」
「再会した時、きっと彼女は見違えているフミャ。彼女と再会して足手まといにならないよう、君も強くなる必要があると思うフミャ。」
「でも……。」
悩むモルモーを見て、フーシャはポケットから道具を取り出した。
「ナイスバデーな知らないお姉さんに、いきなりこんな事言われても決めれないフミャよね。では君にこれを見せてあげるフミャ!」
「何、そのアイテム?」
「君の見たいものが映ってるフミャ。人は確証があると努力できる生き物フミャよ?」
フーシャが道具のスイッチを入れると、映像が映し出される。そこには……モルモーが一番会いたい人が映っていた。




