襲撃?早とちりの聖剣使い
「ケモリアの人達に悪さをするゴブリン共め!ここで俺が剣のサビにしてやる!出て来いっ!」
森の中から現れたのは、セインと名乗る少年。その両手に大きな剣を握り、集落の入口から堂々と入って来た。
「に、人間!?やっぱりヒューマニアの刺客が……!」
「だ、大丈夫だよ!落ち着いて!」
リンはガタガタと震えだす。彼女の肩をナッツがさすり、落ち着くよう促していた。
「……私が行きます。二人はここに居て下さい!」
「スノウ、大丈夫なの!?」
「平気です!私に任せて下さい!」
するとスノウは一気に走り出し、集落の入口にまで移動した。その様子を見たセインと名乗る少年は、何故か剣の構えを解くのだった。
「君、大丈夫かい!?逃げてきたなら早くケモリアの街へ!ここは危ないから、早く早く!」
「……えっ?いえ、私はここから逃げてきた訳では……。」
「怪我は無さそうだな!俺はここで戦いをするから、早く離れた方が良い!」
セインはスノウを見ても全く警戒せず、逃げるように促す。てっきり刺客だと思っていたスノウは拍子抜けしてしまった。
「だから、話を聞いて……。」
「……ん!あそこに居るのはゴブリンだな!俺が倒してやる!」
すると突然セインが駆け出す。その先にはナッツとリンが立っていた。
(いきなり!?やっぱり敵なんだ!)
スノウも慌てて後を追い、セインを追跡している。
「そこのゴブリン!覚悟ー!」
「ヒャッ!?」
「な、リン!危ない!」
リンは慌てて転んでしまった。そこにナッツが覆い被さり、彼女を守ろうとする。
「消えろ!邪悪なゴブリンめ!」
「ハアッッ!」
「なっ!?」
リンに斬りつけたセイン。しかしその剣はスノウによって防がれていた。スノウの手には、以前手に入れたアーティファクト、雷鳴剣が握られている。
「き、君!ソイツは悪いゴブリンなんだぞ!どうして庇うんだ!?」
「か、彼はゴブリンじゃありませんし、それにその女の子はむしろ被害者なんです!」
何度か斬り合い、お互いが同時に飛び退いた。距離を保ち、それぞれを睨みつけながら会話を続けている。
「嘘をつくな!俺は協会の依頼を受けてここに来たんだ!今もケモリアの街は襲われてるんだ!早くやっつけないと大変な事になるぞ!」
「あの!その依頼ならもう終わりました!ケモリアの街とゴブリンの集落は和解したんです!」
「な、そんなの嘘だァァァ!」
セインは再び剣を振り下ろす。スノウも雷鳴剣を使い、再び斬り合いに発展する。
「あくまでゴブリンの味方をするのか!それならここで君も斬る!ハァァァ!!」
セインは剣に魔力を送り込み、勢い良く上に突き出した。
「行くぞ!我が愛剣、エックスカリバー!」
「エックスカリバー!?」
セインの掛け声と共に、彼の愛剣……エックスカリバーが輝き出す。剣の刀身と鍔が巨大化し、まるで十字架のように変形を始めた。
「これが俺のアーティファクト、[聖なる十字剣]だ!悪を断つ剣、受けてみるがいい!」
「お、大きい!あんなので斬られたら大怪我じゃ済まない!」
尚もぶつかり合う両者。しかしパワーの差か、スノウが押され始め、攻撃を逸らすのが精一杯の状況に変わる。はじめは普通に斬り合っていたが、セインのアーティファクトが力を出してから、防戦一方になっていた。
「そこっ!隙だらけだ!」
「しまった!足もとを!?」
スノウの目は剣に集中していたが、セインの急な行動の変化には気づけなかった。彼は剣を足元に打ちつけ、地面の破片でスノウを攻撃する。破片は彼女の足を掠め、そこから血が流れ出した。
「痛っ、まさかそんな手を使うとは……!」
「卑怯って言ってもらっても構わない!ここで勝たなきゃケモリアの人達が危ないんだ!」
態勢を崩したスノウにもう一度剣を振り下ろす。今度は直接彼女を狙った攻撃。スノウも雷鳴剣でガードするが、勢いを殺し切れずに地面に激突する。
「ガッ……!早く、押し返さないと……!」
「このまま押し切る!おりゃァァ!」
力を込めたセインの一撃で、スノウの体は地面にめり込む。受け止める事は出来たが、地面に埋まった為身動きが取れなくなってしまった。
「しばらくは動けないだろう!今のうちにゴブリンキングを討ち取る!じゃあな!」
「ま、待って!」
スノウの話を聞かず、セインはリンの下に走る。そこにナッツが前に出て、行き先を塞いだ。
「こ、ここからは僕が相手だ!お前みたいな悪い奴は、僕がやっつけてやる!」
「覚悟しろゴブリン!……って、君は獣人!?ケモリアの人か?」
「そうだ!僕達とゴブリン達は和解をしようとしてるんだ!お前みたいな奴が居たら、滅茶苦茶になっちゃうよ!」
予想外の事態に固まるセイン。ゴブリン討伐の依頼を出した街の獣人が自分を止める、この事態に彼は混乱していた。
「ま、待ってくれ。俺はゴブリンキング討伐の依頼で……。」
「だから!スノウも言ってたでしょ!僕達は和解したんだ!今は敵じゃないんだよ!」
「そ、そうなのか……?それなら、今は討伐対象じゃ無いって事か……?」
セインは少し時間を置き、状況を整理した。そして……。先程の戦いで地面に埋まったスノウの所まで走って戻ってきた。
「そ、そこの人!済まなかった!早とちりしてしまったんだ!申し訳無かった!」
「ようやく分かってもらえましたか……いえ、私では無く、リンさんに言って下さい。急に襲われてビックリしてるんですから。それと、ここから出たいん」
「わ、分かった!行ってくる!」
セインは再びリンとナッツの下に走って行った。
「……ちょっと待って?私埋まったまま!?待って、待って下さいよー!」




