ランク昇格!ケモリア防衛へ!
「グー。グー。」
「すー。すー。」
「頭痛い……。飲み過ぎたか……。」
パーティーの次の日。レオン達三人はそれぞれ酔い潰れ、床に寝転がっていた。レオンとリンはすやすや眠っている中、オルガは頭を抱えて苦しんでいた。
「オルガさん!大変です大変です!早く起きて下さい!」
「悪い。今日は酔ってて動けないんだ。」
「早くクエスト達成の報告をしなきゃ!起きてよー!」
スノウとナッツがオルガを叩き起こす。それから報告の準備をしていると、あっという間に午後になってしまった。
◇◇◇
「これでよし!リンさん!痛くないですか?」
「はい、大丈夫です。でもこれでいいんでしょうか?」
スノウはリンを椅子に座らせ、手首を緩く縛っていた。クエストのターゲットだったので、形だけでも拘束しているように見せる必要があるのだ。
「一応体裁は整えないとな。じゃ、始めるか。スノウ、撮影を頼む。」
「はい!それではモニタ君セット!」
今回の依頼達成の報告の為、モニタ君を起動し冒険者協会に連絡を取る。もちろん相手は……。
「きみ達!久しぶりフミャ!元気フミャか?」
マネージャーのフーシャである。頭にネコの帽子を被り、食事をしている最中なのか、顔には野菜のくずがついていた。
「フーシャさん!依頼達成しました!確認をお願いします!」
「承知フミャ!何か証拠を見せて下さいフミャ!」
「了解です!オルガさん、お願いします!」
「ああ。ほら、こっちに来てくれ!」
フーシャの映像に現れたのは青髪の少女である。彼女は目を輝かせた。
「フミャ?その子は救出した子フミャね!頑張ったフミャね!ところでゴブリンキングはどこフミャ?」
「はい!ここです!私、ゴブリンキングのリンと言います!」
「えっ。」
フーシャの目の前の少女がゴブリンキングと聞き、明らかに驚いていた。それを察したのか、レオンもモニタ君の前に立ち、映像に映り込んだ。
「いや!間違い無くゴブリンキングです!私が保証しますぞ!」
「おお!その声は!レオンフミャ!お久しぶりフミャー。」
「久しぶりですなマネージャー!今回、彼女達のお陰で無事、ゴブリンキングを討伐出来ましたぞ!」
「えっ。討伐?その子がゴブリンキングフミャよね?」
「実はこれには訳がありまして……。聞いてもらえますか?」
「フミャ。かかってくるフミャ!どんな意見もキチンと聞いてあげるフミャ!」
自信満々に胸を張るフーシャ。スノウ達は彼女に向けて、今回起きた事について説明するのだった。
◇◇◇
「つまり、その子は操られて街を襲っていた。それで、今回の事件にはヒューマニアが関わっていた。って事であってるフミャ?」
「その通りです。」
さっきの自信満々とは反対に、フーシャは何か考え事をしているようだった。
「なるほどフミャ。……それではまず、今回の依頼達成をもって、きみ達をDランクに昇格と致しますフミャ!」
「やったー!ランクが上がったぞー!」
「やりましたね!これからも頑張りましょう!」
「ああ!まあ程々にな。無理しないのが一番だ。」
三人はそれぞれ喜んでいるが、フーシャは浮かない顔で頭を抱えていた。
「だが、奴らの行動が全く読めない以上、当分警戒は必須だろう。」
「ですね。だからフーシャさん、しばらく私達はケモリアに滞在しようとおも」
「駄目フミャ。」
「えっ……フーシャさん?」
「絶対駄目フミャ。今すぐ帰ってくるフミャ。」
さっきと違い、その言葉には怒気が込められていた。
「何故ですか!?また何か起こるかもしれないでしょう!ここは警戒しないと!」
「それはこっちでやるフミャ。きみ達は帰ってくるフミャ。」
「でも……。」
「いいフミャか?きみ達は無事に依頼を達成したフミャ。それでいいフミャ。これ以上口を挟むのは良くないフミャ。」
「だが、俺達は今現地に居るんだ。こっちの方が対応し易いだろう?」
「きみ達の予想が正しければ、今後ヒューマニアは本腰入れてケモリアを落としにくるフミャ。そしたら大変な事フミャ。はっきり言って、きみ達では足手まといになるだけフミャ。」
「なっ!そんな事!」
「とにかく駄目フミャ。早く協会に帰って来るフミャよ。」
◇◇◇
「ど、どうしよう?ここは帰るべきなのかな?」
「どうだろうな。少なくとも依頼は達成したんだ。ここで帰っても問題は無い、が……。」
フーシャの話を聞き終わり、ナッツは不安そうにしていた。オルガも悩んでいるようだった。しばらく沈黙が続き、重苦しい空気が流れる。……それを破ったのはスノウだった。
「いえ!私はここに残ります!」
「ええっ!?本気フミャか!?危ないフミャよ!」
「それでも、困っている人を放っておくなんて出来ません!それに、ここはナッツさんの故郷なんです!そんな悪い人達なんかに負けたら、皆どうなるか分かりませんし、人手はたくさんあったほうが良いでしょう!」
「で、でも……。」
「……そうだよね!決めた!僕もここに残る!皆と一緒に戦うよ!」
「フミャ!?」
「……だったら俺も残らないとだな。二人だけでは不安だし。」
「ほ、本当に残る気フミャか!?……ハァ。」
フーシャも説得しようとしたが、三人は絶対にここに残るつもりである。その様子に折れたのか、フーシャは溜め息をつきながら、三人の方を向いた。
「どうしても残る、って言うフミャね……。それなら条件があるフミャ!何が何でも生き残って、それでケモリアも守って、協会に帰って来るフミャ!約束出来るフミャ!?」
「「「もちろん!」」」
三人が同時に答えると、フーシャは手元の資料に目を通しながら話し始めた。
「では、きみ達はレオンと協力して、防衛態勢を整えるフミャ!こちらからは高ランクの冒険者を増援に派遣するから、到着するまでは手出し無用!こちらから仕掛ける事は絶対に避けるフミャ!」
「了解です!」
「任せておけ!」
「僕も頑張るよ!」
「という訳フミャ!レオン、三人の事、よろしくお願いしますフミャ!」
「お任せあれ!必ず無事に帰れるよう、全力で戦いますぞ!」
「それじゃ、こっちは冒険者を派遣する手続きをするから、何かあったら報告してフミャ!」
◇◇◇
スノウ達の連絡が終わり、モニタ君の通信を切ったフーシャ。彼女はケモリアに派遣する冒険者の選定作業にすぐ取り掛かった。
「誰を送るべきか。本腰を入れてくれば、王都の精鋭が出て来るはず。並の冒険者では歯が立たないわね。誰を呼ぼうかしら……。」
手元の書類を見て悪戦苦闘していると、部屋をノックする音が聞こえた。
「マネージャー、いるかしら?」
「あっ……今取り込み中フミャー!ご用件は後でお願いしますフミャー!」
「私よ私。入るわね。」
ドアを開けて入って来たのは、メイド服を着た、緑髪の女性である。
「何かあったの?怖い顔して?」
「今ケモリアで起きてる事について悩んでるフミャ。誰に増援に行ってもらうか、悩むフミャー。」
「……それじゃ、やっぱり。」
「フミャ。あの子、残る気まんまんだったフミャよ。やっぱり良い子フミャね。」
「そっか。……ねぇ、その増援、私が行こうか?」
「フミャ!?」
女性の突然の申し出にビックリするフーシャ。一方の女性はやる気に満ち溢れていた。
「今出れる冒険者って、私くらいじゃないかしら?確かに危険だけど、今の私ならきっと大丈夫よ。それに……あの子が頑張ってるなら、私も頑張らないとね!」
「フミャ……。それならお願いしていいフミャ?私もやりたい事あるし……。」
「任せてよ!準備が出来たらすぐに向かうわね!」
「お願いフミャ!全員無事に戻って来てフミャよ!」
「了解よ!」
女性は部屋を出てすぐに走り出した。もちろんケモリアに急ぐ為だが、どうやらそれ以外にも、急ぐ理由があるようだった。
「やっと会える……!今行くから、待っててよ!スノウさん!」




