和解の宴、夜に馳せる思い
「さあ皆の者!今日は宴といきましょう!2つの勢力のこれからの発展を祈りまして……乾杯!」
「「「乾杯ー!」」」
ケモリアの街とゴブリンの集落。2つの陣営が和解した翌日。皆は朝からパーティを開いて、互いの親睦を深める事にした。
「皆様お待たせいたしました!こちらケモリア特産の果物を使ったサンドイッチになりまーす!」
「こっちはワインだよ!ドンドン飲んでね!はい、どうぞー!」
スノウとナッツはそれぞれメイド服とぶかぶかの執事の服を着た仮装で、宴の参加者に料理を運んでいた。その様子を、オルガが微笑みながら見守っている。
「あの!すみません!」
「ん……君は……。」
オルガの側に来たのはリンだった。少し顔を赤くしながら、側でワインを飲み始めた。
「美味いのか?俺は酒はどうも苦手で……。」
「はい!とってもおいしいです!」
「今回は災難だったな。でももう大丈夫だろう。首輪はとれたし、ケモリアと和解もできた。これでしばらく落ち着けるだろう。」
「はい。それで……今回はすみませんでした。操られて攻撃してしまうなんて……。」
申し訳無さそうにしているリン。オルガが元気づける方法を探していると、彼女のワインが目に入った。
「あれはしょうがないさ。気にしてないよ。……そうだな。俺も一緒に飲むか!付き合ってくれるか?」
「えっ、……はい!」
「せっかくの宴だ!ガンガン飲むぞ!」
オルガはそう言うとワイングラスを持ち、勢いよくワインを飲み干した。
「おっ、やってますな!それでは私も一緒に飲みましょうぞ!」
「れ、レオンさん!」
「ケモリアとゴブリン殿の親睦を深める為、乾杯ですぞ!さあ!」
「はい!よろしくお願いします!」
そして3人は競い合うようにワインを飲み続け、どんどん酔いが進んで行くのだった。
◇◇◇
時間が進んで夜になったが、皆は飲んで食べてのお祭り騒ぎの真っ最中。そんな中スノウは一人外に出て、椅子に腰を掛けていた。ぼーっと空を眺めていると、サンドイッチを持ったナッツがやって来た。
「…………。」
「どうしたの、スノウ?」
「ナッツさん!……ちょっと考え事をしてたんです。」
「考え事?」
「はい、友達の事を考えてたんです。」
「スノウの友達?どんな人なの?教えて教えて!」
そう言うと、ナッツは近くの椅子を持ってきて、スノウの隣に座り、じっと彼女を見つめてくる。スノウは自分の着ているメイド服を指でつまみながら話し始めた。
「私が前に居たギルドの受付をしてる方なんです。クエストの手続き、道具の手配、何も知らない私に1から教えてくれて……ううん、それは誰にでもやってることだよね。」
「ん?」
「見れば分かると思いますが、私は魔族なんですよ。だから何処に行っても上手く行かなくて……。」
「ふむふむ。」
「だから私には、友達っていなかったんです。あの人は、そんな私の初めての友達。一緒にお店に行ったり、悩みを聞いてもらったり、そんな普通の事が一緒に出来る相手。まるでお姉ちゃんみたいに、ずっと一緒にいた人なんです。」
「いい人なんだね。その人。会ってみたいなー!」
「はい。今、どうしてるのかな。もう離ればなれになって結構経つし……会いに行きたいな。」
「それなら会いに行けばいいんじゃない?そこって遠いの?」
「うん、すごく遠いんです。……だから私は早く強くなって一流の冒険者になる。自信を持ってあの人に会いに行きたいんです。後お金も貯めて、一緒に色んな物を買ったりして……。」
「計画性あるなー。僕はすぐご飯に使っちゃうよー。」
「……フフッ。そっか、やっぱり使っちゃいますよね。」
ナッツの感想を聞いて、スノウは思わず吹き出してしまった。
「あー!笑ったなー!僕にとってはご飯は重要な事なんだよ!僕ももっと大きくなって、超一流の冒険者になるんだ!」
「はい!それなら、もっと頑張りましょう!目指せ一流の冒険者、です!」
「おー!それで、今日はもう遅くなっちゃったけど、今回のクエスト報告っていつするの?」
「えっ。」
「えっ。」
「「…………。」」
暫しの沈黙の後。
「「忘れてたーーー!」」
2人の絶叫が外に響き渡るのだった。




