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魔弦の使徒 目指せ一流、魔族少女の冒険者ライフ!  作者: ゆん。
第三章 獣の街、ケモリアへ

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恐るべき計画

「冒険者協会を……潰す!?」


「そうだ!俺達ヒューマニアの民にとっては、冒険者協会は邪魔なんだよ!」


 突然出てきた「協会を潰す」という言葉……その場にいる面々の顔が凍り付いた。


「だけど、その道のりにはこのケモリアの街があるだろ?だからここを潰して、冒険者協会への道筋を造る。それが俺達、派遣された騎士の役割なのだ!」


「貴様……!」


「ヒィィィ!」


「おじさん、落ち着いてよ!もっと話を聞かないと!」


「くっ……。続きを聞かせてもらうぞ。何故そのような事を……?」


 レオンが斧を振り上げるが、ナッツがそれを制止する。レオンは体を震わせながら、話の続きを促した。すると騎士は、まるで演説でもするかのように誇らしげに語り始めた……。









◇◇◇


「お前達冒険者協会の奴らには迷惑してるんだ!俺達ヒューマニアは、やがては世界を支配する存在になる!その為に日夜活動して、アーティファクトを確保しているのだ!」



「だがな!冒険者協会はその邪魔をしやがる!俺達と同じようにアーティファクトを確保しようとしている!更にクエストを使ってヒューマニアにまで干渉、妨害をしてくるんだ!こんな事があってたまるか!世界を支配するのは俺達の方だ!」








「それはお前達が僕達の街や他所を襲って、略奪や破壊をしてるからじゃないか!冒険者協会に依頼を持っていくのは当たり前だよ!ヒューマニアなんて信用できるか!」


 ナッツは抗議の声を上げるが、騎士は構わず話を続けていく。



「だからな、協会を潰す為、この街を落とす作戦を考えたのだ!まずは地域を調べると、ゴブリンの集落がある事が分かった。そこのリーダーを捕らえて従属の首輪を着ける、後はそいつを操ってケモリアを潰せばいい!怪物退治には怪物がお似合いだろ!」




「じゅ、従属の首輪……?俺達、そんな事聞いてないぞ!」


「そういえば、お頭が首輪を着けだした時と、ケモリアへの攻撃を始めたのは……同じ時期だ!それじゃお頭、本当は……!」


「うう……皆、ごめんなさい。私の、せいで!」


 今度はゴブリン達から声が上がる。リンは顔を伏せ、申し訳無さそうに下を向いている。その目には涙が浮かんでいた。スノウは何かを察し、再びリンに質問した。


「壊されたのは外の城壁だけでした。貴方達が本気で攻めたなら、壁だけでなく中まで被害があったはずです。もしかして!」


「はい……。私達は戦いなんてしたくない。でも命令を聞かなければ殺される……。何とか考えて、ケモリアの人達が怪我をしない範囲で攻撃していました。皆にはその事は内緒にして、討伐依頼を取り下げる為、牽制の為の攻撃だと話したんです。」





「そうだ!何時までたってもそこの小娘はケモリアを落とさない!首輪を使って指示を出しても抵抗しやがるんだ!これだから使えない駒は困る!おまけに討伐依頼でそこのガキ共まで来やがって滅茶苦茶にしやがった!どうしてくれる!」




「「「………………。」」」


 余りにも勝手な言い分に、その場に居た者達の怒りがドンドン強くなっていく。特にレオンは、一度収めた斧を再び振り上げ、騎士に迫った。だが今度は止める者は誰もいなかった。



「へへっ……俺は守られてる!ヒューマニアに所属してる限り、俺は安全だ!」


「貴様ァァァァァァ!」


「へぶっ!?」


 レオンは斧を騎士に振り下ろす。騎士の体に直撃するが、鎧に守られているお陰か、吹き飛ばされるだけで済んでいた。


「貴様の様な奴は、この手で真っ二つにしてくれるわ!」


「リーダー落ち着けって!殺すのはマズい!」


「そうよ!こんな奴の為に手を汚す事なんてないわ!」


 周りの住人達はレオンに組み付き、彼が暴れ出さないよう必死に押さえていた。



「……概ね事情は聞けたな?こいつは一度牢屋に入れた方が良い。ここに居ると、誰が手を出すか分からない……!」


 オルガが提案するが、その拳は強く握られ、震えていた。今にも殴りつけようとしているのを、何とか堪えているようだった。


「ああ!オラ、来い!しばらく牢屋に入ってろ!」


「アハハハ!俺は守られてるんだ!お前達はどっちみちもう終わりだ!」


「何を戯言を!さっさと来い!」


 狂ったように喚きながら、騎士はケモリアの戦士達に引っ張られ、牢屋に連れて行かれるのだった。





 ◇◇◇



「落ち着いたか?」


「いや、見苦しい所をお見せしましたな……。申し訳無い。」


「怒るのは当然だ。何もしなければ皆が手を出していただろうな。」


 オルガがレオンを落ち着かせ、椅子に座らせていた。レオンは何処か浮かない顔で周りの人々を見つめていた。



「あ、あの!」


 その沈黙を破ったのは、同じく椅子に座っているリンだった。彼女は手を拘束されていながら、地面に膝を付き、皆の顔を見た。


「ケモリアの皆様、ごめんなさい!今回の事件、私のせいです!私があの騎士達に捕まったから……。悪いのは私なんです!私はどうなっても構いません!どうか仲間のゴブリン達は助けて下さい!」


「い、いや!実際に攻撃したのは俺達だ!頼むよ!俺達が何でもするから、お頭は助けてくれよ!」


 そう言ってそれぞれ頭を下げるとゴブリン達。それをケモリアの住人達は複雑な表情で見守っていた。


「ど、どうする?ゴブリン達も被害者って事だよな?」


「こういう事情なら、仕方無いんじゃないかしら。私達も脅されたら、同じ事をしてしまうかもしれないし……。」


「うむ……。」


 周りの住人の意見を受け、レオンは黙り込む。そしてしばらく後、彼は口を開くのだった。


「諸君がヒューマニアの騎士に利用されていたのは分かった。だが、我らに攻撃した事も事実。だから……諸君には壊した街の設備を修理してもらう。それでいいかな?」



「そ、それでは!」


「今回は災難でしたな。すぐに仲良くなる……とはいかないでしょうが、困った事があれば言って下され。我らは同じ森に住む仲間ですからな!」


 レオンはそう言って、リンの前に手を差し出した。それを見ている住人達も、同じように手をゴブリン達に向けていた。


「み、皆様……。ありがとうございます!我々一同責任を持って、設備を直させて頂きます!」


 リンのその言葉と共に、彼女とゴブリン達は深く頭を下げる。そして、差し出された手を握り、握手を交わすのだった。


「これからは一緒に頑張ろうな!同じ森の仲間として!」


「ああ!よろしく頼む!協力させてくれ!」






「一件落着ですかね。これで一安心です!」


「ヒューマニアの奴らの動きも気になるが……取り敢えずは依頼達成だな。」


 こうして、ケモリアの街とゴブリン達の襲撃事件は無事に解決した。後はこれを報告するだけ。スノウ達3人は、この場を去ろうとするのだが……。




「三人とも!ちょっと来てくだされ!今から皆で宴の準備をしますぞ!皆様にも参加してもらいたいので、どうぞこちらに!」


 レオンの声が聞こえた為、三人は足を止めた。


「……だそうだが、どうする?」


「はい!それはもちろん……。」


「決まってるよね!」





「「「皆と一緒に宴だー!!!」」」


 三人は再びレオンの下に歩き出した。2つの種族が手を取り合った記念の日。三人も宴に参加するべく、準備を始めるのだった。

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