いざ勝負、ゴブリンキング!
「油断するなよ!待ってる間に仕掛けてくるかも知れない!」
「分かってるよ!何か感じたらすぐに伝えるからね!」
オルガとナッツは門の前でリンを待っている。二人が警戒を強めていると、ガサガサと森の中から音が聞こえてきた。
「オルガ!気をつけて、誰か来るよ!」
「分かった、俺が見に行こう!」
オルガが森に近づくと、そこから現れたのはリンだった。
「リン!それじゃあ、早速ゴブリン達のもとに案内してくれ!」
「…………。」
「……ん?連れて行ってくれるんじゃ無かったのか?」
「…………。」
リンは無言のままオルガに近づいてくる。
「どうした?奴らに何か脅されたのか?大丈夫だ、俺達が必ず助けてやるからな!」
「…………。」
リンはオルガの目の前に来て、彼に体を押しつけた。オルガは顔を赤くして、彼女を引き離そうとする。
「おい、ふらついてるぞ!?やはり何かあったのか!?」
「…………。」
「それなら一度街に入ろう!そこなら奴らの目も届かないから安全だ!」
「……コロス。」
「……何!?」
ここでようやくオルガは彼女の異変に気がついた。しかし彼女は体から離れない。
「か、体が動かない!?この怪力……それじゃあ、本当にこの子がゴブリンのリーダー……ゴブリンキングか!?」
「オマエモ、ケモリアノヤツラモ、ミナゴロシダ!」
「っ!?」
次の瞬間、リンはオルガを片手で掴み上げ、ケモリアの城壁に投げつけた。彼は壁に激突し、地面にうずくまる。
「ガッ……!何てパワーだ……!」
「オルガ!大丈夫!?」
「下がってろ!あの子が討伐対象のゴブリンキングに間違いない!」
「アアアアアアアアアアアア!!」
雄叫びを上げて突進してくるリン。ナッツを退避させつつオルガが門の前に立ちはだかり、彼女を押さえつける。
「クソっ……凄いパワーだ!どこまで保つか……!」
「アアアアアアアアア!」
二人は組み合う中でお互いの力をぶつけ合い、一歩も譲らない。ナッツがその様子に圧倒されていると、別の見張り台で門番が震えているのを見つけた。
「あああ、どうすんだこれ……!このままじゃ冒険者さんやられちまうぞ……!何か出来る事ないか……?」
「……そうだ!今僕にも出来る事……!門番さん!弓矢を貸してくれない?」
「ゆ、弓か?ナッツ、お前何する気だ?」
「僕がオルガを助けるんだ!これ借りてくよ!」
ナッツは見張り台に登り、立て掛けてある弓矢を取る。
「この位置なら外さないぞ!待っててオルガ、すぐに助けるから!」
「くっ……ここまで強いとは思ってなかった。これがゴブリンキングの力か……!」
「ガァァァァァァァァ!!」
オルガとリンが組み合って少し経った頃。まだ抑えることは出来ているが、オルガの足元には地面が削れた痕が真っすぐ続いていた。
「明らかに押されてるな。このままだと壁に激突だ!」
「ガァァァァァァァァ!」
「落ち着け……スノウ達が来るまでここで止めなきゃいけないんだ!何か手は……。」
「ウガァァァァァァ!」
「なっ、しまった!」
考え込んだ一瞬の隙をつかれて、オルガの腹部に蹴りが飛んできた。回避しようとしたが、腕を掴まれた状態では逃げられず、腹部に直撃する。
「……ぐっ!」
凄まじいパワーでの蹴りを受けたが、オルガは吹き飛ばされなかった。リンが両腕を掴み、自分の方に引っ張っていたからである。
「ガァァァァァァァァ!」
「……ぐぁぁぁ!」
何度も腹部を攻撃され、うめき声をあげるオルガ。口から血を流しながら、それでも必死に堪えていた。
「チャンスを待つんだ、必ず隙が出来るはずだ……!」
「ハァ、ハァ、ハァ……。ガァァァァァ!」
「くっ!」
何度も攻撃を続けたリンも、疲れてきたのか動きが鈍くなる。ここでトドメを刺そうと、オルガを空中に投げ、ジャンプをしながら拳を叩き込もうとする。
「ガァァァァァァァァ!」
「……今だ!ここが待っていたチャンスだ!」
オルガも自身の拳を構え、リンに打ち込んだ。二人の拳がぶつかり、鈍い音が響き渡った。
「ガァァァァァ?」
「打ち合いでは勝てないか……!だが、これならどうだ!?シールド展開!」
「ガァァ!?」
オルガが魔力を込めると、グローブから四角い魔法の板が現れる。それはリンの拳を弾き飛ばし、体勢を崩す事に成功した。
「ガァァァァァァァァ!?」
「何!?まだ動けるのか!?」
それでも尚手を伸ばしてくるリン。オルガは腕を掴まれそうになるが、丁度その時、一本の矢が放たれ、彼女の体勢を完全に崩した。オルガが矢の出所を見ると、見張り台の上に立つナッツの姿があった。
「オルガ、今だよ!」
「ナッツ君!助かった!さぁ、これでどうだァァァァァァ!!」
「アアアアアアアアアアアア!」
オルガは空中で体勢を崩したリンを掴み、地面に叩きつける。その衝撃で地面にはヒビが入り、周りの木々も大きく揺れていた。
「ギリギリだったがこれで終わったか……?早く拘束しないとな……!」
オルガはリンを捕まえるべく近くに歩み寄る。彼女は地面に倒れたまま動く気配はない。
「悪いな。しばらく大人しくしてもらうぞ。」
彼女の両手を縄で繋ぎ、近くの木に括り付ける。そして見張り台の上から覗いているナッツに声をかけるのだった。
「ナッツ君!何とか終わったぞ!もう大丈夫だから降りて来い!」
「う、うん……。」
ナッツが見張り台から降りて来て、オルガの下に駆け寄った。そんな彼をオルガは優しく撫でるのだった。
「ちょっと、くすぐったいよー!」
「今回は本当に助かった。ナッツ君、ありがとうな!」
「でもあの子、話し合いに来たって言ってたよね?どうして襲ってきたんだろう?」
「何か理由があるのか、それとも作戦だったのか。まるで分からないな。とにかくお疲れ様!」
「オルガはゆっくり休んでてよ!僕はレオンおじさんに報告してくるね!」
二人はお互いを労い、門の側に戻っていく。そんな二人に向かって……。




