いままでとこれから
ダンジョンから脱出して数日。スノウは突然の状況に困惑していた。ダンジョンの小部屋で気を失った後、何故助かったのかが分からなかったからである。
「……ここは何処?私、ケルベロスに襲われたはずじゃ……。」
「あら、起きたのね。」
「誰!?」
「さあ誰でしょう?それより元気そうで良かったわ。はい、ご飯よ。」
見知らぬ少女から渡されたのはケーキとお茶である。警戒するスノウに少女は語りかけた。
「貴方、あのダンジョンで死にかけてたのよ?たまたま私が見つけたから良かったけど、何であんな所に?」
「……クエストを受けて来たのよ。簡単な調査依頼だって書いてあった。」
「それは多分罠ね。貴方、誰かに嵌められたでしょう?」
「……。」
黙り込むスノウ。少女はさらに話しかけた。
「あそこは死人の洞窟って呼ばれてるのよ。一度入ると出られない。みんな死ぬからその名前がついたのよ。」
「……えっ!?何それ、私知らない!そんなの知ってたら、クエストなんて受けてない!」
「貴方、誰かに恨まれる覚えってない?」
少女の問いかけに、スノウの顔が一気に暗くなる。少しの沈黙の後、彼女は口を開いた。
「……やっぱり、魔族だから?」
「……続けて。」
「私が魔族だからよ……。昔から皆に言われてた!お前は誰にも望まれてない、俺達人の世界で暮らすなって!」
スノウは少女に語り出した。自分がどこに行っても、魔族だからという理由で迫害を受ける。ようやく見つけた居場所でも、それは変わらなかった。
「私はただ自由に生きたかった!だから冒険者になったのよ!依頼を受けて、お金を貰って、ご飯を食べたり、買い物したり。そんな自由が欲しかったの!あそこは他の場所と違って皆親切で、友達も出来て……。なのに……。」
「実際はその皆にも恨まれてた……正確には気に入らないと思った奴らが居たのね。魔族だからなんて、酷いことをするわね……。」
「……ねぇ、教えてよ。」
「何をかしら?」
「教えてよ!私はどうやって生きれば良いの!?私は誰にも望まれてない!私は生きては駄目なの!?ねぇ、ねぇ!!」
「落ち着きなさい!そんな事無いわよ、絶対に!」
「うぅ……。」
少女はスノウをなだめ、深呼吸してから返事をした。
「事情を良く知らない私が言うのも何だけど、ソイツらは見る目が無かったのよ。種族の偏見だけで決めて本質を見ようとしない。だから、貴方がそんな奴らの為に苦しむ必要は無いの。貴方の思うように生きれば良い。」
「それが出来ればやってるわよ!でも、どうすればいいのか分からないのよ……。」
頭を抱えるスノウを見て、少女はポンと手を叩く。そして思いついた名案を口に出した。
「なら力をつければ良いのよ。誰にも邪魔をされないくらいに、ずっと強く!」
「今よりも、強く……?」
「そう!邪魔する奴はやっつければ良い!それに……貴方には友達が居るんでしょう?その子を守れるようになる為にも、強くなるのよ!」
少女の言葉を聞いたスノウはしばらく考え込んでいたが、やがて一つの結論を出した。
「それなら、お願いします!どうすれば強くなれるのかを、教えて下さい!」
それを聞いた少女は、笑顔になって答えた。
「良いわよ!基本は私が教えてあげる。でも、そこからは自分で何とかするのよ?学んだことを活かしてこその成長だから、ね?」
「やってみせるわ!私は強くなる!それで、自分の思うままに生きてやる!」
話がまとまり、二人は笑顔になる。そしてお茶を飲みながら少女が名前を名乗った。
「私はヘカ……カティって言うの。貴方の名前は?」
「私はスノウって言います。これからよろしくお願いします、カティ!」
「こちらこそよろしくね!スノウ!」
二人は自己紹介をした後、カティが持ってきたケーキを追加で食べながら、今後の予定を話し合い始めた。
「取りあえず貴方には、魔力の使い方について教えようと思うわ。得意な属性ってある?」
「得意な属性……。私は氷の属性です。」
そう言ってスノウは腰に差したナイフを取り出し、魔力を込めた。するとナイフはたちまち凍りつき、鋭さを増した刃に変化した。
「(なるほど。あの宝箱が開くわけね。)他に使える属性は?」
「一応雷の属性も使えますが、こちらはあまり得意じゃないんです。」
「充分よ。氷の方を重点的に鍛えつつ、雷も一通り教えてあげるから。」
「カティはどんな属性が得意なんですか?」
「全部よ。」
「全部?」
「ええ。気にしないで。自分の得意を伸ばせばいいんだから。」
「……そうします。」
カティの申告に驚愕したスノウ。そして次の日から、修行が始まるのだった。




