対面、ゴブリンキング!
「レオンさん!ゴブリンの部隊がやってきます!すぐに来て下さい!」
「来ましたか……!分かりました!手の空いている戦士を連れて行きます!門の方はどうですかな!?」
「今オルガさんとナッツさんが見張ってます!急いで下さい!」
スノウは街の役場に駆け込み、斧を磨いているレオンに向けて大声を張り上げた。それを聞いたレオンはすぐに斧を背中に差して立ち上がる。
「ゴブリン共、この斧で追い払って見せようぞ!悪さ出来ぬよう、懲らしめてくれる!」
「私は先に行きます!できるだけ早く来て下さい!」
「了解しましたぞ!」
そして役場からスノウが出て来た時、門の方から大きな声が響いてきた。
「ケモリアの皆様!私はゴブリン達のリーダー、リンです!冒険者さんにお話があって参りましたー!門を開けて下さいー!」
「もう仕掛けてきた!?……それなら、優先すべきは街の人の安全!ちょっと時間はかかるけど……頑張って下さい二人とも!」
スノウは街の住民を役場に避難させるべく、走っていくのだった。
◇◇◇
突然門の前で名乗りを上げた少女を見て、オルガとナッツは困惑していた。
「な、何だろう?あの子、ゴブリンのリーダーって言ってるよ?」
「俺も混乱してる。襲ってきた奴らとはまるで別の種族のようだぞ?本当にゴブリンなのか?」
「もしかして、捕虜にした人を使って、様子を探ってるとか!?」
「そこまで悪い奴らじゃないと思ったが……。油断をするなよ!俺が行ってくる!」
オルガは門を離れ、リンと名乗った少女の元に向かった。優先すべきは状況を知る事。周りの木々を見渡しながら、ゆっくりと近づいていく。
「(敵は居ないか……。本当にこの子がリーダーなら護衛がいると思ったが、やはり捕虜か……!)」
「あ、あの!」
「な、何だ!?」
少女に声を掛けられ立ち止まるオルガ。
「もしかして、ゴブリンの皆が間違えて攻撃した冒険者さんですか?」
「ん……?ああ、そうだが?君がリンか?」
「はい!良かったー!その事について、謝りたい事があるんです!一緒に集落に行きましょう!こっちですよ!」
「……は?いや、ちょっと……。」
オルガの手をグイグイと引っ張るリン。状況を飲み込めず、一瞬フリーズしたが、すぐに彼女に質問を投げかける。
「いや、待ってくれ!君はどうして奴らと一緒にいるんだ?友達か家族が捕まってるのか?」
「えっ?そんなの私がリーダーだからです!私がゴブリンの皆を仕切ってるんですよ!」
「そう言う様に言われてるのか……。なら大丈夫だ。隙をついて奴らを捕まえるから、安心してくれ。まずはこのまま奴らの場所に案内してくれ!」
微妙に話が噛み合わない中、会話は続いていく。
「はい!こっちです!ところで、今居る冒険者さんは貴方だけですか?」
「(一網打尽にする気か!)……ああ、俺だけだが。」
「あれ?三人って聞いてたんですけど。違ったのかな……?」
オルガを森の中に引っ張りこもうとするリン。しかしそのタイミングで、彼女の首輪が光りだした。
「……あっ。ごめんなさい!ちょっと待ってて下さい!すぐに戻りますから!」
「(あの首輪……捕虜を監視する為の物か!?それなら刺激しない方が良いかも知れない。)分かった、俺はここで待ってるから。」
ペコリと頭を下げ、森の奥に去っていくリン。オルガは彼女の背中を心配そうに見つめていた。
「チャンスを待つんだ。必ず助けてやるからな!」
◇◇◇
リンが森の中に入ると、そこには騎士の鎧を着た男が立っていた。手にはリモコンの様な機械を握っている。
「おい、何してるんだ?さっさと攻撃しろよ!?ケモリアを落とさないなら、今すぐお前の首と胴体が離れる事になるぞ!?」
「着いてきたんですね……私には出来ない。」
「はあ!?」
「私には出来ません!私達は戦いを望んでない!貴方の言いなりになんかなるもんか!」
「……それ、本気で言ってるのか?」
「もう私達に関わらないで!貴方みたいな人間は大嫌いよ!……それに、ここでは私を殺せない!」
「……何だと!?」
リンは自信満々に男に話しかける。一方の男は予想外の状況に戸惑っていた。
「もし私が戻らなければ、あそこの冒険者さんが気づくはず。それに……首のない死体を見たら、ケモリアの人にも黒幕がいるのがすぐに分かるわ!」
「……ぐっ。」
「あまり遅いと怪しまれちゃう!私はもう戻るから、二度と関わらないでよ!」
リンはすぐにこの場を離れようとするが、数歩歩いたところで動きが止まってしまった。
「な、何!?」
「……調子に乗るなよ小娘が!だったら無理矢理にでも奴らを皆殺しにさせてやるよ!」
男はそう言って、手元のリモコンのボタンを押した。その途端、首輪が更に光り輝き、リンが苦しそうに頭を抱え出した。
「い、痛い……!何、これ、頭が……!アアアアアア!」
「お前を操って無理矢理動かしてるのさ!本当に馬鹿な奴だ!これがある限り、お前は逃げられないんだよ!」
「い、嫌、私は、戦いなんて」
「そら行け!全員始末してこい!そうすればケモリアは俺達ヒューマニアの国の物だ!アハハハハハ!」
数分後、リンはフラフラとした足取りでオルガの元に戻っていく。まるで人形のように、虚ろな目をしながら近づいていくのだった……。




