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魔弦の使徒 目指せ一流、魔族少女の冒険者ライフ!  作者: ゆん。
第三章 獣の街、ケモリアへ

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ゴブリンの狙い

 スノウは捕まえたゴブリンに質問していた。万が一に備え、その手にはナイフが握られている。


「お、俺達がお前達を襲った理由は……。」


「理由は?」


「馬車に乗れるって事は金持ちって事だろ?だから、金目の物が無いか探すためにも、まず乗ってる奴らを仕留めなきゃならなかったんだ。」


「嘘ですね。」


「ギェッ!?」


「さっき貴方の仲間が言ってましたよ?聞いてないぞって。本当は他に理由がありますよね。」


 ゴブリンの首筋にナイフを近づけると、ゴブリンは震えながら、首を縦に振った。


「分かったよ!話す、話すから!」


「お願いします。」


「俺達がお前達を襲った理由は……依頼者を探し出すためだよ。」


「えっ?」


 ゴブリンは3人を指差し、尚も話し続ける。





「俺達のお頭は何かの情報で、自分を倒すために誰かが依頼を出そうとしてる、ってのを知ったみたいでな。その依頼が協会に届く前に、その依頼者を狙って俺達が出て来たんだ。」


「依頼者……そんな討伐依頼が出たのか?」


 オルガが話す中、スノウはナッツを見つめ、口に手を当て「シーッ」とジェスチャーをしていた。


「お前達がその刺客だと思って襲いかかったんだ。……違ったみたいだがな。だが、皆は無事に逃げられたんだ。お頭がきっと俺を助けに戻ってくるはずだ!」


「と言ってますが、どうしますか?」


「……縄を解いてやるか。じっとしてろ。」



(えっ!?切っちゃうの?ゴブリンキングの場所を聞かなきゃ!)


(それをしたら私達がクエストを受けたのがバレてしまいます!ここは穏便に済ませるべきです!)




 オルガはスノウからナイフを受け取り、ゴブリンの縄を切る。ゴブリンは突然の事にキョトンとしていたが、すぐに3人から距離を取った。


「ど、どういう事だ!?俺を逃がそうってのか!?」


「その通りだ。お前が無事ならお頭とやらも報復に来ないだろう?」


「それは……。」


「俺達も厄介事には関わりたくないんでね。これで関係なくなるだろ?」


 ゴブリンは改めて3人を見て……背を伸ばし、頭を下げた。


「すまなかった。敵だと思って無我夢中で襲ってしまったんだ。申し訳ない……。」


「分かったよ。ところでお前達のお頭、そんな依頼が出るほど酷い奴なのか?」


「悪い、これ以上関係ない奴には構ってられないんだ。早く依頼者を探さないと!じゃあな!」


 ゴブリンは慌てて森の中に走っていく。その後ろ姿は、段々と木々に隠れて見えなくなった。




「さて!ゴブリンさん達も居なくなったし、早くケモリアに向かいましょう!騎手さん、お願いします!」


「あいよ!遅れを取り戻すから、しっかりと掴まっててくれ!」


「ごめん、僕何にも出来なかったよ……。」


「気にするなよ。急だったから仕方ないさ。今度は期待してるぞ!」


「う、うん!」


 3人は再び馬車に乗り込み、揺られながら道を進む。ケモリアへの道はまだ遠い。3人はのんびりしながら到着を待っていた。



(見た感じ、そこまで悪い奴らではなさそうだった。それに何か焦ってたな。今回のクエストも、厄介かもしれないな……。)


 オルガは一人そんな事を考え、馬車に揺られていた。










 ◇◇◇




「み、皆!今帰ったぞ!」


「お帰りなさい!どうだった?依頼者は見つかった?」


「いや、それがな……。」


 ここはゴブリンの集落。ここには多くのゴブリンが住んでいる。皆が各々くつろいでいる中、ゴブリンの集団が慌てて帰ってきた。


「大変な事になったかもしれない。お頭に相談したいんだ。」


「マジかよ!早くこっちに来い!早速話を聞かせてくれ!」


 集団の内の一人がお頭に面会を求めると、別のゴブリンがお頭の居城に彼を連れて行く。そこはゴブリンのリーダーに相応しい、大きな、威圧感のある建物であった。





「お頭!ちょっと時間をくれ!至急話したい事があるんだ!」


「何事ですか!こちらに来てください!」


 奥に通されたゴブリンは、お頭の寝床の前でひざまずく。すると現れたのは、青髪の小さな女の子だった。肌の色も見た目も、ほとんど人間と変わらない少女がそこに立っていた。……違う所と言えば、首に首輪型のアクセサリーがついている事くらいである。



「俺達、遂に冒険者達を見つけたぞ!」


「本当ですか!?それでは、首尾よく始末出来たのですね!」


「それがしくじっちまったんだ。しかも一人が捕まっちまったんだ。」


「何ですって……!?」


 お頭は顔面が真っ青になってしまった。自分の命を狙う相手が、仲間を人質に取ったからである。


「そ、それで、他の皆は?」


「何とか逃げて来たが、皆怪我をしちまった。このままだと、奴らが来た時対抗できない!」


「そ、そんな……。」


「ちょっと待ったぁ!帰ってきたぞ!」


 報告を受けたお頭が戸惑っていると、その時声が響いてきた。その方向を向くと、そこには一人のゴブリンがいた。


「お前!無事だったのか!良かったな!」


「いや、無事には無事だが……。」






 帰ってきたゴブリンが事の顛末を説明する。それを聞いていた二人は、真っ青を通り越して顔面蒼白になっていた。


「……つ、つまり、関係ない冒険者を襲ってしまったと?」


「あ、ああ……。向こうは敵意は無かったみたいで、すぐに解放してくれたんだが……マズイよな?」


「マズイです……!すぐに探してこちらにお連れして下さい!早急に対応しないと、その人達からも後々討伐依頼が出るかも……。」


「そ、それで、奴らはどこに行ったんだ?」


「あの方角だとケモリアの方だ。おそらく観光か行商の護衛だったんじゃないか?」



「す、すぐに皆を向かわせて下さい!私も行きますから!」


「分かった!皆、出撃だー!」


 ゴブリン達は外に出て人数を集めている間、お頭は急いで遠出の準備を始める。


「い、急がないと。私は生きていたい!死にたくないよ……!」


 皆が準備をする中、お頭は一人、狙われる恐怖に身を震わせていた……。

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