外に走れ、誰も欠けるな!
モニタ君から響いてきた声、それは教官のガルスの声だった。
「今他の子達が一斉に転移してきてる!何かあったのか!?」
「すみません!今とんでもなく危ない状態です!どうすればいいですか!?」
「その場を確認したい!モニタ君でもう一度対象を映してくれ!」
「は、はい!」
スノウはモニタ君を持ち、現状を中継する。その映像を見て、ガルスは驚愕していた。
「ギガマンティス……!Cランクでようやく立ち向かえる魔物じゃないか!何故こんな所に!」
「ちょっと、もう限界よ!ここから離れて!……キャッ!」
「いかん、危ない!」
レイがギガマンティスに弾き飛ばされ、皆の所に飛んでくる。だが、ジンが壁に叩きつけられる前に受け止め、そっと地面に降ろすことで、ダメージを受けることは無かった。
「マズイな……!君達!今から私がそちらに向かう!急いで転移してくるんだ!」
「それが駄目なんです!リゼさんの転移水晶が無くなってしまったんです!」
「何!?それでは、皆で逃げることは無理か……!私も急ぐ!君達で何とか時間を稼いでくれ!」
ここは地上。ガルスが5人と連絡を取っている間、クリスは他の冒険者から話を聞いていた。
「皆無事に出て来れたのね、よかった……!」
「でも、まだ中にアイツらが居るんだよ!何とか助けてやってくれよ!」
「そうよ!あの子がいなかったら、皆死んでたわ!お願い、助けてあげて!」
声を上げたのは、レイの発破で逃げて来た冒険者達である。転移水晶を渡してくれたリゼを心配する声も多かった。
「分かってます!しかしこんな事になるとは……。ガルスさん!どうしますか?」
「無論、私が助けに行く!クリスは他の子を頼むぞ!」
「了解!気をつけてよ!」
「ウム!」
そう言ってガルスはダンジョンの中に走り出した。研修で使うダンジョンのため、構造は把握している。映っていた場面から、場所の想像はついていた。
「あの位置は最深部!どうしても30分はかかる……!頼むぞ、持ち堪えてくれ……!」
「ギェェェェ!」
「持ち堪えろって、この魔物を相手にか!?無理だろう!」
「やるしかない!諦めたら全員終わりなんです!」
5人はギガマンティスと相対し、それぞれの得物を持って睨みつけていた。ギガマンティスの方は格下相手と気づいているのか、その顔はどこか笑っているようだった。
「……いいかの?ワシらがやることは倒す事じゃない。生き延びる事じゃ。そこを間違えてはいかんよ?」
「が……頑張ります……!」
「フン!あんな奴にやられるもんか!もう一度地面に叩きつけてやるわ!」
「誰も欠けるなよ!全員で生還するんだ!」
「……来ます!皆さん迎撃を!」
覚悟を決めたその時、ギガマンティスが5人に飛びかかってくる。5人はジャンプで躱すが、魔物の目は獲物を見据えていた。
「ワシを狙うか……!ならば来るがいい!」
ジンは持っていた杖をギガマンティスに向ける。その杖のカバーを取ると、中からは刀が現れた。
「Fランク冒険者、ジン・ストラウス!お相手いたそう!」
「ギェェェェ!」
鎌を振り回すギガマンティス。ジンはその鎌を刀で斬りつけながら、後ろに後退してゆく。
「そうじゃ、こっちじゃこっちじゃ!」
「ギェェェェ!」
やがてジンは壁際に追い詰められる。ギガマンティスはそこに鎌を振り下ろすが、ジンの姿は見えなかった。
「居合……鎌落とし!」
刀を抜いたジンは、敢えて鎌を攻撃する。その勢いに押され、一瞬、ギガマンティスの体が傾いた。
「喰らえ!オーガスマッシュ!」
「ギェェ!?」
オルガが魔力を込めた拳で、よろけたギガマンティスを殴打する。完全にバランスを崩したギガマンティスは、ジンを追い詰めていた壁に激突した。
「今だ!追撃してくれ!」
「了解!スノーカッター!」
スノウが斬撃で追い討ちをかける。だがギガマンティスは壁から離れようともがき、その勢いのまま突進してきた。
「マズイ!回避できない!」
「スノウさん!ホーリーウォール!」
鎌がスノウに届く前に、光の壁が現れ鎌を弾く。そこには杖を持ったリゼの姿があった。
「大丈夫です……!私が守ります!」
「ありがとうございます!助かりました!」
「これでどうだァァァ!」
「ギェェ!?」
オルガが戦闘で崩れた壁を持ち上げ、力一杯投げつける。ギガマンティスは投げられた壁には反応できず、そのまま押し潰されてしまった。
「これでしばらくは持つだろう。今のうちに通路を戻るぞ!その方が教官と早く合流できる!」
「了解です!皆撤退しますよ!」
「はい!」
「はーなーせー!一人で歩けるー!」
「フォッフォッフォッ、しっかり掴まるのじゃよ?」
5人は一斉に通路に駆け込む。その様子を悔しそうに見ていたギガマンティスは、絶叫をあげてその場にうずくまった。
「ギ、ギェェェェ!!」




