冒険者スノウ
「ハァ、ハァ……。どうなってんのこのダンジョン……。何でこんな魔物がたくさん居るのよ!」
ダンジョンの中を少女はひたすら走っていた。止まれば魔物に殺されるかもしれない。体力の限界はとっくに過ぎていたが、それでも走り続けていた。
「私はこんな所で死ねないのよ!負けるものか!必ず生きて帰るんだ!」
諦めずに走り続ける少女。しかし魔物との差は確実に迫っていた……。
◇◇◇
「おじさん!お願いします!それ売って下さいよー!」
「駄目だ!これは家宝なんだよ!売り物じゃ無いんだから売れないんだ!何度も言ってるだろうが!」
ここは街の一角にある商店街。ここにあるお店で、ローブに身を包んだ少女と店主が言い争いをしていた。
「そこを何とか!相場の2倍、いや3倍出しますから!」
「そんなに金持ってないだろ!それに仮に10倍でもお断りだ!」
少女は商店に飾ってある武器を指差しながら大声をあげていたが、売り物でないことが分かると少し落ち込むのだった。
「ぐぬぬ、駄目ですか……。分かりました。何かすみません。取り乱してしまって。」
「やっと分かってくれたか……。それなら良いんだよ。あんたはお得意さんだし、他の物なら安くしとくよ。」
「ありがとうございます。それでは薬草と記録用の白マップをお願いしますね。」
「あいよ!」
店主から必要な道具を買い、歩き出す少女。次の目的地は冒険者ギルドである。ギルトに入りローブを脱ぐと、そこには蒼い服を纏った少女が立っていた。蒼い髪、蒼い目、蒼い羽。その姿は普通の人間とは違う雰囲気を醸し出していた。
「おっ、来ましたね!待ってましたよスノウさん!」
「こんにちは、モルモーさん。お久しぶりです。」
ここは街の冒険者ギルド。この街の人や遠くの街からの依頼を受け付けている役所である。スノウと呼ばれた少女は、掲示板に貼り出されているクエストを覗き、モルモーと呼んだ女性に愚痴をこぼす。
「これは薬草採集、こっちは街の清掃……。なかなかいいのが見つからないなー。」
「それはスノウさんのランクが低いからですよ。ランクを上げればもっといいクエストに行けるようになりますよ!」
「そうですよねー。よし!このクエストを下さい!早速行ってきます!」
スノウが取ったのは薬草採集。報酬は少ないが安全に依頼を達成できる、初心者用のクエストである。ランクはAからFまで7つあり、Aに近いほど難易度や報酬が高くなる。ちなみにスノウはFランク。一番下である。
「はいどうぞ!達成期限は今日中ですよ!行ってらっしゃい!」
「了解です!行ってきますね!」
メイド服を着た受付の女性、モルモーとの会話を終え、外に走り出すスノウ。それを見ていた他の冒険者達は、冷ややかな視線を送っていた。
「魔族の癖に、よく人間の依頼を受けに来るよな。アイツ。」
「気に入らないわね。あんなのが居たら、私達の取り分が減っちゃうじゃない!」
「だったらどうするよ?何とか追い出すには……。」
「簡単な事だ。割のいいクエストがあれば良い。そのランクにギリギリ合っている、合法なクエストが。」
「……まさか。」
「まあ、遂行中に[たまたま]魔物に襲われても、冒険者では自己責任だからな。」
「モルモーさーん!クエスト達成です!確認お願いします!」
「はーい!こちらへどうぞ!」
夕方、クエストを終えたスノウがギルドのカウンターにやって来た。それをモルモーが確認し、報酬を手渡した。
「お疲れ様でした!今回の報酬の3000ゴールドになります!」
「ありがとうございます!今日もお疲れ様です!」
報酬を受け取り帰るところで、スノウは掲示板をもう一度確認する。
「明日は何を受けようかなー。……えっ、何このクエスト!?凄い!こんなに貰えるの!?」
「良いのがありましたか?」
「これですこれ!明日早速受けますよ!」
スノウが突き出したのは、街の周辺にあるダンジョンの調査依頼だった。
「Eランク依頼!最近見つかった未踏のダンジョン!魔物の分布を調べるだけで100000ゴールドですよ!やるしかないですよね!」
「……ちょっと待って下さい。そんなクエストありましたか?私は知りませんが……。」
「しっかり準備しないと!それではまた明日です!」
「あ、あのー!」
スノウが足早にギルドを出ていくのを、モルモーは見送る事しか出来なかった。




