討伐対象は……
「あれ、開かない。壊れてるのかな?」
ドアノブを何度かガチャガチャと動かすが、扉が開く気配は無い。小屋の窓や壁も調べてみるがびくともしなかった。
「おかしい。何か変な感じだ。……まさか!!」
スノウは小屋の中にあったツルハシを掴み、窓に向かって振り下ろす。しかし窓を壊すことは出来ず、ツルハシは弾かれてしまった。
「間違いない!この小屋自体に何か仕掛けがあるんだ!小屋の中を調べてみないと!」
スノウは机の下、タンスの裏、小屋の中にある家具を片っ端から調べ始める。閉じ込められた事がほぼ確定している以上、時間の猶予は無かった。
「無い!隠し通路とか、脱出用の抜け穴とか、何も無い!もしかして、ここの小屋って……ん?」
スノウが焦っていると、外から声が聞こえてきた。声のする方向に一番近い壁に耳を澄ませ、外の様子を窺う事にした。
「いや、しかし上手くいくもんだな。クエストを依頼するとは上手く考えたものだ。」
「……そうだろう。馬鹿な冒険者共はこれに引っかかる。ランクが低ければ簡単だと油断するからな。まさか依頼主が黒幕だとは誰も気付くまい。」
(この声は、村長さん!?それに知らない人の声、どういう事よ!?)
「しかしこれで良いのか?クエストのランクが低いと、冒険者のレベルも低いが?」
「それでいい。強い冒険者なら違和感に気付くかもしれない。それに、俺達だけで手に負えない危険がある。確実に稼ぐにはこれが良いんだよ。」
「……つまり、冒険者を騙して閉じ込めて、持ち物を奪うって事!?何とかして早く出ないと!」
慌てて調査を再開するスノウだが、慌て過ぎてタンスにぶつかってしまう。その勢いでタンスが倒れ、側にあった袋に倒れ込んだ。
「ん!?何の音だ!」
「異変に気付かれたか……!殺るぞ、家に火を放て!」
「ああ!」
村長ともう一人の男は、火の付いた矢を小屋に撃ち込む。その火は小屋を少しづつ燃やし、徐々に煙を上げ始めた。
「火が出て来た!?早く脱出しないと!スノーショット!」
雪の弾丸を窓にぶつけるが、全く壊れない。スノウは更に強い技を使おうとするが、ふと足元に落ちていたモノに気がついた。
「何だろこれ?一体……ヒッ!?」
そこに落ちていたのは骨である。先程の話から推測して、他の冒険者の骨であることは想像がついた。
「やっぱり、他の方もここで……!早く出ないと!スノーカッター!」
雪の斬撃を撃ち出し、辺り一面を攻撃するが、やはり歯が立たない。何か良い方法が無いか考えていると、小屋の床下から声が聞こえてきた。
「おい!誰か居るのか!?頼むよ!ここから出してくれ!」
「誰か居るんですか!?罠じゃ無いですよね!?」
「そんな訳無いだろ!何か焦げ臭いニオイがするんだ!このままだと燃えてしまうぞ!」
「……分かりました!やってみます!」
今は脱出が最優先。そう判断したスノウはもう一度雪の斬撃を放つ。今度は床を狙い、声がした一点を集中攻撃すると、その箇所にヒビが入る。そこをツルハシで掘り、穴を開けることに成功した。
「貴方は、人間じゃない!もしかして依頼にあったオーク!?」
「何の事か分からんが早く出してくれ!縛られて動けないんだ!」
「はい!今引き揚げます!」
そこに居たのは大柄な男。スノウがナイフを使い、捕まっている彼のロープを切る。手を掴んで上に引き揚げると、そこに居たのは鬼の姿をした魔物だった。筋骨隆々の黒い鬼の魔物はすぐに立ち上がる。
「オークじゃない!?貴方は一体何者ですか?何故ここに?」
「話すのは後だ!今はこの小屋を壊すぞ!」
鬼は手に魔力を集め、柱を殴りつける。すると轟音と共に小屋が軋み、揺れ始めた。
「何してんですか!?小屋が崩れたら生き埋めですよ!?」
「蒸し焼きになるより良いさ!柱を狙え、建物を崩せば外に出られるだろう!?」
「そうか!了解です!」
柱を攻撃する二人。しばらく続けると、柱にヒビが入り、小屋もより大きく揺れだした。
「いいぞ!後は任せてくれ!オオオオ!!」
鬼が放った一撃により、遂に柱が砕け散る。そして支えの無くなった小屋は一気に崩れ始めた。
「俺の下に入れ!そこなら何とかなる!」
「はい!」
鬼の下に滑り込むスノウ。彼女を庇う様に鬼が覆い被さると、小屋が崩れ、たちまち廃墟になってしまった。
「小屋が崩れた!?まだ火が広がってないぞ!」
「しくじったか……。行くぞ村長、奴らを始末する!」
「あ、ああ!」
崩れた小屋めがけて走り出す二人。すると小屋からスノウと鬼が這い出てきた。
「騙したんですね……!覚悟しろ!貴方達二人共、捕まえてやる!」
「よくも俺を閉じ込めてくれたな!タダで済むと思うなよ!」
そして二人は一斉に駆け出し、戦いの火蓋が切って落とされた。




