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第27話
しばらくして。
彼が亡くなったという話を聞いた。
彼と唯一の取材をしたという縁もあって、私は彼の葬儀に参列することにした。
家は数年を経てもなお、取材当時と変わることなくあり、あれから何か触るということもしなかったようだ。
つまり、当然であるが、あのトイレのドアも変わらず、おなじところにあったということである。
「本日は、故人を偲び、この部屋を開放しております。何かしら思い出の品もございますでしょうから、後ほど形見分けをいたしたいと考えております」
遺族の人だ、代表して奥さんが集まっていた人らに声をかけていた。




