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僕らの時間

作者: ケン犬


図書室で本を読む。それは当たり前だけど()()にとって大切な時間・・・


僕の名前は飯田アズマ。小説が大好きな高校1年生。好きな小説は恋愛ものからファンタジー、SFと様々だ。

特に最近気に入っている作品が『雨と電車』だ。梅雨の季節になり、そういった本を購入してみようと本屋に行って目が合ったのがこの作品。恋愛ものの小説なんだけど主人公が高校1年生ということもあり、感情移入してしまっている。

「おいアズマ。何を読んでんだ?」

仁志(ニシ)くん。これは最近買った本で『雨と電車』って本なんだ。とってもいい小説だよ」

「へぇー。読み終わったら貸してくれよな」

声をかけてきたのは大野仁志くん。中学から仲良くしている友達だ。小説を貸し借りしてお互いに感想を言い合ったりしている。

「ってかアズマ。俺は部活だけどお前帰らなくていいのか?」

「え?あぁ!!もうこんな時間。じゃあね仁志くん。また明日」

僕は大急ぎで荷物をまとめて教室を出た。今日は郵便物が届くから早く帰らないといけなかったのに忘れてた。

下駄箱まで来ると外は土砂降りの雨。まったくもってツいていない。

「急げ急げ!」

傘をさして走って駅まで向かった。


”ドアが閉まりまーす。ご注意ください”

「ま、待って!!」プシュー・・・。

駅に到着したが目の前で電車のドアが閉まって行ってしまった。

「(この駅次の電車なかなか来ないんだよなー…。)」

僕が住んでいる地域はどちらかといえば田舎の方だ。電車が何本も走っているわけじゃない。

次の電車まで30分ほど待つこともざらにある。

「(仕方ない。小説を読んで時間をつぶすか)」

そう思い、カバンの中から小説を取り出した。近くにあったベンチの端に腰掛けて小説を読み始める。

すると反対側のベンチ端にきれいな女性が腰かけた。

同じ制服。ロングヘアーで眼鏡をかけた美人だった。小説よりもその女性に目が奪われた。

「(な、なに見惚れてるんだ僕は。)」

急に恥ずかしくなり小説へ目を移した。小説を読んでいるのに内容が頭に入ってこない。

すると女性はカバンから何かを探し始め、取り出した。

「(ぁ・・・『雨と電車』だ)」

そして小説を読み始めた。僕も自分の小説に目を移して読み始めた。

聞こえてくる音は雨の土砂降り音。そして僕らのページをめくる音だけが聞こえた。

とても心が穏やかになった気がした。電車が来るまでその時間が続いた。

“間もなく電車が参ります。危ないですので黄色い…”

アナウンスが聞こえ始めて小説を読むのをやめたが、彼女はまだ読んでいる。

これを逃すと次に来るのは1時間は越えてしまうだろう。そう思い、僕は勇気を出して彼女に声をかけた。

「そろそろ電車来るみたいですよ?」

変な風に声をかけたつもりはなかったけど緊張して胸がドキドキしている。

「え?・・・あぁ。ありがとう・・・」

話した声はとても物静かで、穏やかで、繊細なガラス細工を触っているみたいな気になった。

「いえいえ」

「・・・あなたも読んでるの?『雨と電車』」

「え?」本は片付けているから持っていることは知らないと思うけど…

「・・・作品と同じセリフだったから」

「あ、そういえば・・・。」

『雨と電車』でも主人公が女性に声をかけるシーンがある。それが始まりの出会いになるんだ。

「・・・本と同じような展開ね」

「べ、別にそんなんじゃないですよ!出会い欲しさにやっていないというか!!」

「ふふっ・・・面白いひと」

微笑む彼女に胸がドキドキしてしまった。

そして僕らは電車に乗った。


「・・・きれいな人だったな」

ベッドで横になりながら今日のことを思い出していた。

あのあとはお互い話すことなく、ただ電車に揺られながら帰宅した。

同じ駅ではなく、僕が先に電車から降りた。

電車に乗っている間も彼女は『雨と電車』を読み続けていた。

本を読んでいる彼女の姿が頭から離れない・・・。

同じ制服ということは・・・先輩だ。同級生であんなきれいな人会ったことないし。

「また・・・会えるかな・・・。」

なぜか小さくつぶやく僕がいた。でもそのつぶやきは雨の音でかき消された。


次の日、学校で仁志くんに聞いてみることにした。

「仁志くん。髪が長い眼鏡をかけた美人な先輩って知ってる?」

「急にどうした。まぁ知ってるというか有名だから知らない人はいないんじゃねーの?」

「え?有名なの?」

「多分お前が言ってる先輩は雪野ヒカリ先輩だ。美人で頭がいい。成績も校内で1番だって聞いたな。ただ無表情、無口。噂だと氷の姫様とまで言われてるらしい」

「氷の姫・・・」

仁志くんが言った人が彼女ならなんとなく納得できた。

すごく美人だけど物静かで、誰も近づけない雰囲気をまとっている。

でもあの時に微笑んだ先輩を僕は知っている。

「あれだけの美人だからな。けっこう告白されてるみたいだぞ」

「そ、そうだよね」

「ん~?アズマ。もしかして狙ってんのか~?」

僕の方を見てニヤニヤしだした仁志くん。

「そ、そうじゃないよ!!ただ、どんな先輩なのかなーって」

「そうかいそうかい。まぁいるとしたら図書室じゃねーかな。図書委員だし」

「わかった。ありがとう」

そうして雪野先輩のことを考えながら授業を終えた。


放課後、図書室に行くと雪野先輩はいた。静かに本を読んでいる。

話かける勇気がなく、近くの席に座り本を読み始めた。

読んでいる本はもちろん『雨と電車』だ。読んでいれば気づいてもらえると思ったからだ。

しかし本の内容が気になり始めて、先輩を忘れて集中して読んでしまった。

『ねぇ、後輩君。あなた、私のこと気になってるんでしょ。

 ち、違います。気になってなんか・・・

 そう言って先輩に顔を向けると

 私は・・・気になっているよ?

 そう微笑む先輩に僕の時間は奪われてしまった』

なんだか甘酸っぱい感じの恋愛ものだな・・・

そう思っているとすぐ近くで視線を感じた。振り返ると雪野先輩が僕の本をみていた。

「せ、先輩?!」

突然のことであわてる僕。しかし先輩は表情を変えずに話しかけてきた

「・・・ここまで読んだんだね」

「え?あ、はい。物語も中盤ってところですかね。」

「・・・そうね。下校時刻だから終わりにして」

「あ。もうこんな時間か。すみません」

時計は17時半を過ぎていた。僕が図書室から出ると、先輩も出て図書室の鍵を閉めた。

僕は帰宅するため下駄箱へ行く。外は相変わらず雨が降っている。

すると雪野先輩と再会。しかし先輩は傘を広げ、歩いて帰っていく。

そんな先輩のあとを追いかけるように僕も下校した。


雨が強く降る中、先輩は本を片手に読みながら歩いている。

僕は声をかけるわけでもなく、ただ静かに先輩の少し後ろで歩き駅へと向かっていた。

駅まであと少しのところにある横断歩道。信号は赤であったが先輩は歩き続ける。

すると横からクラクションが鳴る。僕は無我夢中で飛び出した。

急ブレーキ音。雨で濡れた道路の水が跳ねる。傘がふたつ宙に舞った・・・

「赤信号で渡ってんじゃねー。死ぬ気かガキ!」

車に乗っていた男は怒鳴りつけるとすぐにどこかへ行ってしまった。

僕は先輩と一緒に歩道で倒れていた。いや僕が先輩を突き飛ばし、その勢いで一緒に倒れたのだ。

「先輩、大丈夫ですか!!けがしてないですか!?」

雨でびしょびしょになりながらも先輩へ声をかける。

「・・・・・・」

先輩は少し驚いた表情をして僕を見ていたが何も話さない。

「歩き読書は危ないですから、やめてください。ホントに生きててよかった」

突然のことで僕自身がびっくりして。涙が込み上げてきた。足もがくがくと震えている。今になって飛び出した恐怖が思い出される。

「・・・・・・・き」

「え?」

土砂降りの中、先輩に何か言われた。とても聞きづらく変な返事しか出来なかった。

「好き。私と付き合って?」

「え?ええ!?」

急な告白に僕は戸惑いを隠せず叫んでしまった。雨の中、僕の声はよく響いていた。


あれから数日がたった。雪野先輩とはお付き合いさせてもらっている。

なぜ先輩が告白をしたのかというと『雨と電車』による影響だった。

本好きな学生同士の恋愛模様を描いた内容で、いままでの出来事が本の内容と同じ展開だったのだ。

これに先輩は運命を感じてしまったらしく。告白したとのこと。

「先輩。本当に僕でいいんですか?」

図書室で二人きりになったため雪野先輩へ聞いたみた。

「・・・あなたがいいの。だめ?」

「え、あ、いや、ありがとうございます・・・」

照れくさくなり僕はまた本へ目を移す。きっと耳まで真っ赤だろう。

「(本当は、ずっと前から好きだったんだよアズマ君。あなたが知らないだけでね。)」

少しだけ微笑む先輩。なにか変だっただろうか?

「先輩?」

「・・・何でもない」

そう言って先輩は本を読み始めた。

図書室には窓を叩く雨音が響いているが、うるさくない。

話したり、手をつないでなくても、この静かな時間が僕らの幸せだ。



何とか書きました第2弾。

もうね。日付変更まであと数分。

内容がいきなりぶっ飛んだので、これは人によっては嫌いだったのではないでしょうか?

次はもう少しうまく書きたい。

次回もお楽しみに!

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