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ライオンが吠えた日

 今日はライオンがうるさかった。

 昔のライオンはよく吠えた、最近のライオンは吠えず、姿が見えない。それが今日はどうしたのか、よく吠えた。

 何が原因かはわからない。たぶんライオンの気まぐれなんだろう。とは思うがおそらく何か理由はある、俺がわからないだけで。

 何かが起こっているのに理由がわからないことはたくさんある。サバンナの外もサバンナの中もそんなことだらけだ。こんなにわけがわからなければ生きるのが嫌になってしまうのではないかと思うが、残念ながら生きる以外の選択肢が許されていないので、生き続けるよりほかはない。

 嫌になってしまうこと、それくらいは許されたい。だが以前にも言った通り、許していないのはライオンでありともだちであり誰かであり俺であるのだ。

 そもそもが俺であるのだ、俺に■■を写した鏡。そんなものの動向を気にしたり怯えたりするのは非常に馬鹿らしいのだが、しかしライオンはやはり俺に影響は与えてくるので無視するわけにもいかない。

 見ないふりはしているが。

 見ないふりをしながら気にしなければいけない、ここがもう理不尽なのだ。見ないふりをしなければいけないのに、生きていくためには気にする必要がある。無理な話だ。だが、建前と本音の使い分け、という側面から考えれば成立しうるのかもしれない。わからない。俺以外のやつはそれができるのだろうか。

 他人と比べても仕方がない、けれどライオンは他人なので強要してくるのだ。比べることを。

 ここまで考えて、自分がそこそこ追い込まれていることに気付く。ここは広いサバンナなのに、俺がいるのはどこなんだ? 穴の中か? うさぎが死んだ穴の中で俺もまた死んでしまうのか?

 責任の所在を問うても仕方がないが、うさぎを殺したのは俺であり、ライオンである。従ってこの穴の中にいるとそのことを考える……もう忘れたと思っていたのだが、忘れると不都合が生じる。けれど忘れる。何が忘れさせているのかは知らない。ひょっとするとうさぎのことなんて本当は忘れた方がいいことなのかも。ライオンなら確実にそう言うだろう。俺にはよくわからない。

 話が逸れた。ここからどうやって逃げ出すかという話だった。え、そんな話はしていない? すまんな。俺は話が飛び飛びになる人間なんだ。なんせ対人ができないので。対ライオンもできないが。

 希望。それを抱いてしまっているのでだらだらと生き続けるはめになる。時々それを失って穴の底で丸くなるが、俺は希望を失いたくない生き物なのでなんとかして探そうとする。

 だがこのままだとライオンは俺を食べ、俺は死ぬ。

 うさぎのように。

 それがわかっただけでも収穫なのか、それともその事実はまやかしなのか。

 答えは今日もまた、夢の中だった。

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