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サバンナの夢

 うさぎが跳ねていた。

 俺はそれを見ていた。

 うさぎは遠くまで跳ねていき、そこで――

 ぱちん、と音が鳴った。

 俺は目を開ける。

 うさぎはいない。あれは夢だった。

 身体を起こす、一面の薄茶色、草、低木、サバンナ。

 ライオンがいた、こちらに向かって駆けている。

 俺は目を閉じる。

 果たして走ってくる音は――聞こえない。

 目を開ける。ライオンはいない。しかしやはり辺りはサバンナ。

 歩きたくはなかった。どうせここも夢だし。

 だが現実だったらどうする?

 どうするもこうするもない。俺は現代■■に住んでいるただの大学生。サバンナになんているはずがないし、そもそも俺は寝ていたんだ。ベッドが草になると思うか?

『なるかもしれないじゃないか』

 今言ったのは誰だ?

 わからない。

 辺りを見回しても誰もいないし。

 じゃあ譲歩して、ここが現実で、本当のサバンナにいたとして。

 ここから動くことに意味はあるのか?

 俺は木登りができない。隠れるところもない。危険地帯で無闇に歩いたって無駄だ。

 無駄なんだ。何もかも。

 それなら再び眠りについて、何かよくわからない犬っぽい動物か何かに食べられるのを待つとか、その方が。

 でも食べられるのは嫌だな。

 食べられるのはきっと痛いし。

 とにかく何としてでもこの夢から覚めないと。

 あれ?

 譲歩する、と言ったのに。

 いや、譲歩なんてできるはずがない。ここは夢だ。夢なんだ。夢からは覚めなければいけない。そうだろう、そうに違いない。

 覚めない夢なんて悪夢以外の何者でもないから。

 サバンナには何もいない。

 薄い雲が張った空の下、ただ風だけが吹いていた。

 それで終わり。

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