王子!それは……(狼王子目線です)
狼王子は、ある方に会いに行きそこでトラブルに巻き込まれます。
なぜか、狼王子が関わると緊迫してるのに……緊迫してるようには感じない……
王の間の扉の前についた。
「いきなり、暴力はいけませんよ、今大事なのは一刻も早く婚約者様を見つけることなんですから、ね?」
「わぅん」
しょんぼりと尻尾を垂れさせる狼王子。
「それでは、」
トントン、トン
「開け……」
トントン、トン
「わぉん……」
トントン、トン
「ごま……」
トントン、トン
ガチャリ
扉がひとりでに開く。
部屋の中は赤い玉座が二つ並び、玉座に続く道には真っ赤な絨毯が引かれている。
(王家の秘密の合図……相変わらず、変な合図だな……)
侍従がそう思っている側で、狼王子の尻尾がピンと立った。
「ガルルル!」
狼王子が威嚇をする。
「王子?」
侍従は、さっと周りを見渡す。
何か違和感を感じるがそれが何かがわからない。
そうこうしているうちに、尋ね人が姿を表した。
玉座の後ろから姿を表した。
「どうしたんだい?久しぶりの再会なのに、あんまりだよ、兄さん?」
侍従は、さっとひれ伏す。
「お久しぶりでございます。この度は緊急事態の為突然のご訪問お許しください」
「いいよ、それより、兄さん来てくれるなんて嬉しいな」
ゾクリ
侍従はなぜか、背筋が凍る感覚に襲われた。
いや、身体を自由に動かすことができない。
異変に気づいたが、なす術がない。
「ガルルルル!」
狼王子が威嚇を強める。
「クスッ。さすが兄さん、効かない上になんでもお見通しだなんて嬉しいな」
スタッスタッスタッ
男がゆっくりとこちらに近づいてくる。
「そんなに怒らないでよ。でも、やっぱり兄さんの能力は危険だなー」
「ガルルルル」
「“弟“をどこにやったかだって?ここにいるでしょ?僕は、兄さんの弟だよ?」
「……」
「クスクス……わかったよ、冗談はここまでにしてあげる」
男は、腰にぶら下がった剣を抜いた。
「答えは、殺されてから教えてあげるよ」
狼王子に剣を向ける。
「ガルルルル」
ダッ!
男に狼王子が飛びかかる。
男は軽くかわし、狼王子に剣を突き立てようとするが軽く避けられる。
何度も何度もそれを繰り返す。
そして、
カキーン、カン、カン
男が体制を崩し、剣を落とした。
狼王子は、男に馬乗りになる。
バシバシバシバシ……
すごい勢いで往復ビンタを連発させる。
「ちょっ、やめ、案外、いたっ……」
バシーン
後ろ足で男の急所に止めを刺す。
「うっ、……」
男は気絶した。
「ワゥゥゥゥウン!」
勝ち誇ったように遠吠えをあげる。
それと同時に侍女も動けるようになり、狼王子に駆け寄る。
「申し訳ございません。油断しました。まさか、ご兄弟様がこのような状態だとは……」
「ワゥン!」
「はい、早急に調査いたします」
男に視線を向けると、男の全身が黒いもやに包まれていた。
「これは!」
「ガルルルル」
バァァァ
一瞬黒いもやが辺りをおおった。
「ガァル」
「王子!」
侍従が狼王子を守るように結界を瞬時につくる。
結界に靄が弾かれ少しずつ一ヶ所に集まる。
一瞬靄が晴れた。
横たわる男の側に、黒い靄が浮かんでいる。
黒い靄が、男の身体を包み込む。
全ての靄が男の身体に入り混むと、男のからだが起き上がった。
「クックッ、油断したよ。この身体はいただいていく。また会おう“兄さん?“」
「くぉん!」
「僕の相手をしていていいの?早くいかないと、可愛い子が危ないんじゃない?じゃあね?」
男の身体を靄が包み、靄が晴れる頃には男の姿はなかった。
ヒラリ
男がいたところに手紙が落ちてきた。
“ライオンのマーク“の手紙だ……
「クォーン!」
「えぇ。婚約者様の身が心配ですね、急ぎましょう!」
憎々しげに手紙を拾い上げ侍従はポケットへとしまった。