元恋敵の境遇が酷すぎて……
「お……て………きて」
声が聞こえる。
目蓋が重たい。
「お……て…ひっく……」
誰かが泣いている。
身体が重たい。
「……」
目を開ける。
「!!よかった!」
そこには、さっき助けた女性がいた。
縄で両手足縛られている。
服は、汚れてしまい髪もボロボロだ。
「ここは……」
ゆっくり身体を起こす。
周りを見回すと、牢獄のようなひんやりした場所だった。
床は石でできていて、入り口は柵格子に鎖で鍵がされていた。
それ以外はなにもない……冷たい部屋……
手を動かそうとするが、同じく私も両手足縄で縛られていて動かせられない。
「わかりません……すいません。私のせいです」
「……?」
「実は、王子との婚約者なんです。私は、修道女のアスナといいます。こんなことに巻き込んでしまってごめんなさい。久しぶりに親切にしてもらえて嬉しくって……ひっく」
アスナは、深々と頭を下げた。
「顔を上げて、なぜ、こんなことに……?」
顔を上げたと同時に腰までのある黒色の長い髪がサラサラと動く。
黒い瞳には、まだ涙がたまっている。
その姿は、守って上げたくなるほど可愛らしいはずだが、今は、ボロボロの姿に痛々しく感じてしまう。
目の下には、よくみると眠れていないのか隈があった。
(ここまでやられる前に手をうちなさいよ!王子)
その後ポツリポツリと今までのことを話し始めた。
それを要約すると、
王子が砂浜に打ち上げられていたのを助けて、王子が目覚めてアスナを婚約者にした。
この婚約には多くの反対者がいたが、王子の意思は固く婚約は揺るがなかった。
王子は、アスナを手を尽くして守ってくれていたが、“ある日“を境に人が変わってしまったこと。
アスナに対して、関心をなくしてしまったように冷たくなってしまったこと。
そのなかで、なぜか結婚を王子が強行突破したこと。
もちろん王子の冷たくなった様子を見て婚約をよく思ってなかった方々が怪しい動きをしだしていたこと。
(王子、こんな最低なやつだったなんて……)
「わかりました。ここは、どこかわかりますか?」
アスナは首をふった。
「そうですか……んー、あの手紙について教えてもらえませんか?」
「……そうですね、ライオンのマークは、ある犯罪組織のマークなんです」
(そういえば、紙にそんなマークあったような)
「なぜ、狙われたか心当たりがあるんですか?」
「……たぶん、王子の元婚約者候補の中にその組織と繋がりがある可能性があるとささやかれているかたがいて……」
(王子は、そこら辺調査もしなかったのか!)
手に思わず力が入る。
「なら、なおさら、アスナ様には、護衛や従者などをつけるべきなんじゃないんですか?」
声が怒りで震える。
「初めはいました……でも、急に彼が人が変わったように冷たくなってしまわれて………それ以来周りの方からの嫌がらせが多くなってしまい、護衛や従者の方もそのような人たちばかりで……」
(彼女にとっては、王子の後ろ立てがなかったら針のむしろのはずだ……想像したら、イライラしてきた……)
「婚約解消はしなかったのですか?」
「申し立ては、したのですが断られました…」
「なぜ!?」
「わからないです……」
「わかりました、まずは、助けを呼びましょう」
「えっ?」
「実は、考えがあるんです」
不適な笑みを人魚姫は浮かべた。