石橋を叩いているつもり!なんだけど……
情が深い人魚姫、慎重に行動していたはずが、
なぜか事件に巻き込まれてしまう……
女性の部屋は、とても広くきらびやかだった。
(さすが、ね。ん?)
部屋の中を見渡し使用人の姿を探す。
いくら目を凝らしても、使用人の姿は一人も見当たらない。
「……えっと、ここの使用人どこにいるんですか?ちょっと、気になって」
女性の表情が悲しげに曇る。
(地雷だったかな……この雰囲気はまずい……そうだ!話題を変えよう!)
「今は結婚式の貴賓の方々もいて人の手が足りていないみたいですね……そういえば、傷の手当てをしたいのですが、お薬はどこですか?」
少しだけ声が上ずる。
「えっと、……わかりません……使ったことないので……」
女性が申し訳なさそうに下を向いた。
「わかりました。探してみますね」
仕方がないので片っ端から引戸を開けて探す。
「あった!」
十字架の赤いマークを見つけほっとする。
中身を確認し女性のもとに持っていく。
「切ったところ一応手当てしますね」
「お願いします」
切った箇所を消毒し、絆創膏をはる。
「よし、できた!」
「ありがとうございます。すいません。お礼なにかできるものがあれば良かったんですが・・・・・・今は、あいにくなくって…………」
人魚姫をうるうるした瞳で見つめる。
「気にしないでください。困った時はお互い様ですので」
(そういえば、かなり時間がたった。早く部屋に戻らないと……“逃げた“って思われてたら面倒くさい……)
手当てに使った道具をもとあったところに戻す。
ピュー
開いていた窓から風が入ってきた。
ヒラリ
風と同時に、手紙のようなものも部屋に入ってきた。
「?」
手紙を手に取る。
表にライオンのような印が入っている。
(中身は見ちゃダメね)
「これ、空いてる窓から入ってきちゃって……」
女性に見せる。
すると、女性の顔がみるみる真っ青になっていく。
「こっ、これ、どこで……」
「えっと、窓からです?……」
女性のただならぬ様子にふと、手紙に視線がいく。
(この手紙なんなんだろう?)
ジーと手紙とにらめっこをする。
女性は、キョロキョロと辺りを見渡して、近くに置いてあったペンでメモ用紙に文字を書き出した。
プルプル震えながら、私に見えるようにメモ用紙を見せる。
書いた字は震えながら書いたせいで歪んでいた。
-部屋から急いででてください、その手紙は、脅迫文です-
目線を女性に向ける。
震えるのを一生懸命押さえつけ、口だけ動かし“早く“と伝えてきた。
緊迫した緊張感が身体をかけめぐる。
不自然じゃないように、意識しながら言葉を選んで発した。
「怪我の手当ても終わったので、私はこれで、失礼しますね」
向きを変え部屋からでていこうと、ドアノブに手をかける。
ガチャガチャ
扉が開かない。
「えっ、開かない?」
女性の方へ振り返る。
女性は、私の方を指差しもう片方の手で口をおさえていた。
コロン、シュー
指差した方を見ると煙玉のようなものが転がっていた。
一瞬で部屋の中が真っ白な靄に包まれる。
視界が次第にぼやけ、意識がもうろうとし始めた。
強い眠気に襲われる。
女性の方を見る。
バタン……
女性が床に倒れこむのが見えた。
(まさか、ここで終わるの?)
身体が地面へと倒れる感覚が鈍く脳に伝わる。
身体に思うように力が入らない……
ふと、あの(狼)王子の姿が頭に浮かんだ。
(約束守ろうとしたんだけど無理だったな・・・・・・ごめんね・・・・・・)
そのまま意識がなくなった。
次回は、女性の名前が明らかになります。
なぜ、人魚姫に気づかないのかは、仮面の力のお陰です!Σ( ̄□ ̄;)