情けは人の為ならずというけれど……
まだまだ(狼)王子との進展はなさそうです!Σ( ̄□ ̄;)
ガタン
今度こそ王城に馬車がついた。
ゴクリ
7日ぶりの王城に無意識に身体が緊張する。
(どうにか、王子に私の正体をばれないよう気を引き締めよう……)
「ワゥン!」
(狼)王子が馬車のなかで、吠えた。
すると、外にいる従者の一人が飛んできた。
「はっ。こちら頼まれていた品でございます。どうぞ!」
従者が(狼)王子に仮面舞踏会に使いそうなきらびやかな仮面を差し出した。
「ワゥ!」
「喜んでいただき光栄です。早速伴侶様にお渡しいたします」
従者は、私に丁寧に挨拶をし仮面を恭しく跪いて差し出した。
「えっと、受け取って……いいんですよね?でも、結婚式でつけるようなものでもないような気が・・・?」
「はい。そこら辺は、対応済みでございます!こちら、魔法のアイテムでして、(狼)王子様がどうやら伴侶様にはこれが必要とおっしゃっておられていましてご用意させていただきました」
横目で(狼)王子をみる。
「クォン!」
(なんか、自慢気な表情のような……気のせいかな?)
サッと従者に視線を戻す。
「魔法ってどんな効果が?」
「あっ、はい!私どもには、効果はありませんが、伴侶様の姿がアイテムを着けている間周りに本当の姿とは別の姿で認識されます!」
「副作用とかは?」
「ありません!」
そっと仮面を着けた。
吸い付くようにぴったりと顔にフィットしていく。
(狼)王子と向き合う。
「今の私に確かに必要かもね。ありがとう」
「ワゥン」
尻尾がフリフリと嬉しそうだ。
「こうなったら、逃げるのは一端諦める。エスコートよろしくね」
(狼)王子がフリフリとしっぽをふった。
城門の前には兵士や、国の重鎮達が勢揃いしている。
招待客を出迎えるためだろうか?
(狼)王子が通ると驚いた表情をしたが、それだけで入り口をそのまま通過できた。
城内に入ると、侍女がすぐやってきて丁寧に挨拶をした後、そのまま控え室へ案内された。
「式典の時間までこちらでおくつろぎください。何かありましたら、そちらの呼び鈴でお呼びくださいね。」
侍女が部屋からでていった後、(狼)王子も何やら準備があるらしく私は逃げない約束をし部屋の外にでた。
部屋は1人分しか用意されていないようで、正直準備している間は気まずかったからだ。(狼)王子は、渋々私が外にでるのを見送った。
ボーと外の休憩用の椅子に腰を下ろした。
カラン! カランカラン
何かが地面に落ちる音が聞こえた。
気になり音がした方へ向かうと、何やらもめている声が聞こえてきた。
そこには3人の令嬢?が誰かをを囲んでいた。
「なんで、こんな奴が、王子の心を!」
「そうよそうよ!」
「身の程を知るといいわ!」
口々に一方的に攻め立てる姿にあきれてしまう。
(目立つのは嫌だけど、ここをみないふりするのは……うん、何か違うかな、仕方ない)
彼女達から少し離れ死角になる場所に身を隠す。
すぅー
「おうじさまー!この度はおめでとーございます!」
彼女達に聞こえるほど大声で言う。
もちろん王子は、ここにはいない。
「はっ!」
「えっ?なんで王子が……」
「ちょっ!告げ口したら後でもっとひどい目に合わせるんだからね!」
タッタッタッタッ
彼女達の足音が遠ざかっていく。
(それにしても、なんで、この子の侍女とか見当たらないのかな?)
部屋に戻ろうと向きを変える。
「うっ、ひっく」
か細い鳴き声に後ろ髪を引かれる。
(騒ぎにはあんまり首突っ込みたくないけど……)
泣き声のする方へ歩き出す。
うずくまりすすり泣いている女性に声をかけた。
「もう、あの方達はどこかに行きましたよ。大丈夫ですか?」
「うっ、ひっく、ありがとうございます。」
「何か音がしたのですが、怪我はしてないですか?」
「はい……少し指が切れただけです。でも、ペンダントが落とされて、ヒビが入ってしまいました……」
女性は、ハートの五百円玉くらいの大きさのロケットペンダントを見せてくれた。
ロケットペンダントの表面にひびがはいってしまっていた。
「……すぐには、修理できそうもないですね……」
女性が立ちやすいように手を貸す。
「ありがとうございます」
苦笑しながら、私の手をとる。
そこで始めて女性の容姿ちゃんとみた。
(!!)
はかなげな黒い瞳に、腰まであるつややかな黒髪。守ってあげたくなるような可愛らしい容姿……うん、間違いない……
「いえ、それじゃあ、私はこれで」
部屋に戻ろうと向きを変えた瞬間腕を捕まえられた。
その手は少し震えて弱々しく振りほどくには心が痛み、私にはできなかった。
「あっ、あの、できればお部屋まで、着いてきてくれませんか……さっきのことがあり少し心細くて……」
うるうるした瞳で見つめられる。
周りを見回すがやはり侍女はいない。
(確かに、あんなことがあって置いていくのは……仮面の効果もあるし大丈夫だよね?)
「……わかりました。一応、行く途中に侍女さんとかとすれ違ったら今までのことを話して、貴方のそばにいてくれるようお願いしますね」
女性は、ほっとした表情をした。
「ありがとうございます、お願いします。」
(それにしても、なにかひっかかるような……)
女性の部屋につくまで結局城の使用人に会うことはなかった。
次回予告
事件に人魚姫巻き込まれてしまいます……