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『 (ちんこ) ・ (キック) ・ (ごはん) 』



 教室の黒板には、ある意味……。

 異世界に相応しい混沌(カオス)な一文が踊っていた。


 クラスは騒然となる。



「すげえ……! すげえよ生徒会長っ!」



「さすがはこのクラスでも一番の『ニッポン通』だけあるぜ!」



「股間を蹴られながらメシを食うだなんて、さすがは『ニッポン人』……! オー! クレイジー!」



「やっぱりニッポンという国は計り知れないわ! いつだって私たちの予想の上を行くもの!」



 まるで外人四コマのように熱狂するクラスメイトたち。


 面白いからこのままでもいいかな、なんて一瞬でも考えた俺がバカだった。



「異論がないようであれば、明日発表する給食メニューはこれで決定ですわ! 向こう一ヶ月、全校の男子は女子に股間を蹴られ、女子は男子の股間を蹴りながら、ごはんを食すのですわっ!!」



「ちょ……ちょっと待ったぁ!!」



 締めにかかった生徒会長の一言に、俺は反射的に立ち上がっていた。


 熱狂は冷や水をあびせられたかのように、静まりかえる。

 そして俺の身体は針のむしろに包まれているかのような、刺すような視線が突き立つ。


 皆が、俺を見ていた。

 空気の読めないヤツを見るかのような目で。



「あ~ら、今日転校してきたばかりの『ニッポン帰り』のジャブくん……。長年に渡るあたくしたちの研究の成果に、なにか不満でもあるんですの?」



 教壇の高みから、フフンと見下ろす生徒会長。

 彼女に向かって、俺は声を振り絞った。



「あ……あるっ!」



 給食というよりも拷問のようなメニューを、正式採用させるわけにはいかない。


 しかも1日だけならともかく、1ヶ月間も……!

 30日間、毎日毎日……決められた時間に股間を蹴り上げられるヤツだなんて、お笑い芸人にだっていやしねぇ……!


 そんなの、毎日が命日みたいなもんじゃねぇか……!

 なんとしても誤りを正して、この悪夢のような暴挙を阻止せねば……!



「身体を痛めつけながら食事をするなんて、ありえないだろう! ニッポン人は何事も、一意専心……! 『ながら食べ』など言語道断だ!」



 俺の反論に、クラスがにわかにざわつく。



「なるほど、言われてみれば確かに……!」



「よく考えてみたら、『オギョーギ』が悪いわね……!」



「そうだ! 股間を蹴り上げるのなら、みんな立って食事をしなくちゃならない……! それは大変『オギョーギ』が悪いんじゃないか!?」



「それはダメだ! ニッポン人は、『オギョーギ』が良いんだ! いつだってそうさ!」



「ってことは生徒会長の発表が、間違ってるってことか!?」



 コイツら、やけに流されやすいな……。

 でも生徒会長だけは、挑戦的な笑みを崩さなかった。



「フフン、さすがは『ニッポン帰り』。ニッポンのことを少しは知っているようですわね。でもそのくらいのことは、このあたくしも気付いておりましたわ。でもTKGが『ちんこキックごはん』であることが揺るぎない証拠が、ふたつもありますのよ。殿方のマタンキのようにね」



 俺が必死に下ネタから離そうとしているのに、いちいち引き戻しやがって……。

 もしかしてコイツ、下ネタを口にしてないと死ぬ病気なのか?



「その証拠とは何だ?」



「まずは、ニッポン人の『ワビサビ・オーラ』を体現している言葉のひとつに、『一蹴一菜(イッシューイッサイ)』というものがあるのをご存じでして?」



 それを言うなら『一汁一菜』な。



「『一蹴』とはすなわち、キックのこと。ニッポン人は一品だけの質素な食事を、ちんこキックで豊かに彩っていたということですわ」



 もう一品増えたみたいに言うんじゃない。



「そしてふたつめの証拠……。それは、ちんこキックごはんが『ブシドー・スピリッツ』に溢れているメニューだということ」



 やな武士道だな。



「『セップク』という言葉をご存じでして? 失態を犯したサムライが、腹を切ることによって自らを罰することですわ。このニッポンを象徴する、偉大なる文化である『セップク』……。それが表しているように、ニッポン人というのは自浄意識が非常に高い民族なのですわ」



 『切腹』の意味は、まあだいたい合ってる。

 でもそこまで日本のことが分かっているのなら、なんで『卵かけ』が『ちんこキック』になるんだよ……!?



「死ぬほど自分を罰する事ができるのが、ニッポン人……! なれば『食事』という命を頂く行為に対して、かわりに己の命の源である『ちんこ』を捧げようとするのは、何ら不自然な行為ではありませんわ!」



 『女体盛り』の時に俺がしたように、ビシイッ! と指さしてくる生徒会長。


 解釈はメチャクチャだが、展開された理論には相変わらず変な説得力があるな……。


 だが、俺は少しも慌てなかった。

 なぜならば生徒会長の主張には、決定的におかしな所がある……!


 いや、おかしな所だらけではあるのだが……。

 いくら脳筋でもわかる、ハッキリした矛盾が、ひとつだけあるんだ……!


 さぁて、今からソイツを指摘して、また這いつくばらせてやるとしようか……!

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