03
急勾配のバストの打ち降ろしティーグランド、くびれたウエストにひしめくバンカー、そして柔軟なヒップを活かした、なだらかなウェアウェイ……。
オーガスタも真っ青の名門コースと化した生徒会長は、高らかに笑っていた。
「オホホホホホホ! ニッポンのことについては、このあたくしのほうがずっと明るいということが、これでおわかりになりまして!? さぁ、『にょたいもり』に耽るのです……! そしてこのあたくしの右腕になると誓うのです……! 生徒会の一員として、『清く正しいニッポン』をこの世界に広めるのです……!」
俺はようやく、この女の奇行の意味を理解する。
この学校に、『日本帰りの日本通』として転校してきた俺を、今日という初日に呼び出し……。
そして奇妙奇天烈なコスプレで、日本への造詣を見せつけたのは……。
この俺を『知識』と『色仕掛け』という、二段構えの攻撃で屈服させ、取り込んで……。
生徒会の権限強化をするためだったのか……!
この異世界において、初めて行われたという『世界線転移魔法』の実験。
それで日本に行き、帰ってきた人間ということになっている俺は、注目の的のはず……。
そして日本への知識が何よりも尊重されるこの世界においては、何よりもの大番狂わせ。
それを排除するのではなく、意のままに操ろうとしているんだ……!
しかしこの女は、ひとつだけ大きな見当違いをしている。
この俺が、女神によって遣わされたのは……。
この世界にはびこる、『誤った日本観』を正すため……!
こんなうれし……いや、狂ったゴルフゲームが横行するのを、防ぐためなんだ……!
俺は誘惑に屈……いや、決意を固めると、己の眉間をひとさし指で軽く押した。
「……なんですの? その掛けてもいないメガネを直すような仕草は?」
「『エアメガネ』を直したんですよ。これをすると、俺のなかで眠っている力のうち、20%が解き放たれる……!」
「……エアメガネ?」
「ズグワァァァァァァァァァァァァッ……!!」
「……なんですの、その効果音みたいなのは?」
「俺のなかにある、『灰色の脳細胞』が目覚めた音です……!」
「は?」
キョトンとしてる生徒会長に向かって、俺はビシッと指を突きつける。
「そんなものは、『にょたいもり』などではないっ!」
すると、神の怒りに触れたかのように、ゴルフコースが隆起した。
「なんですってぇ!? 何を根拠にそんなことを!? これは我が生徒会が総力を尽くして調べ上げた、ニッポンの文化のひとつなのですわ! その偉大なる文化を体現する者をバカにするということは、ひいてはニッポンを馬鹿にすることにも等しい……! それはれっきとした校則違反……いいえ、法律違反なのですわっ!」
「馬鹿にしているのは生徒会長、あなたの方です! いまからこの俺が、本物の『にょたいもり』ってヤツを、見せてあげますよ……!」
「ほ……本物の、『にょたいもり』……!?」
俺は驚く彼女を尻目に、通学カバンから弁当箱を取り出す。
おねショタ四コマ漫画に出てきそうな爆乳寮母さんが、寮を出る前に手渡してくれた、昔ながらのアルミの弁当箱だ。
パカッと開けると中は、ぎっしり詰まった白米と、2個の梅干し……。
いわゆる『日の丸弁当』というやつだった。
厳密には、これは『日の丸弁当』などではなかったのだが……今の俺は気づかなかった。
ともかくその弁当箱を握りしめ、生徒会長ににじり寄る。
俺の態度が急変したので、彼女は不安に思ったようだ。
「い……いったい、何をなさるおつもりですの……!?」
表情は曇り、声も震えている。
さきほどまでの威勢と威厳はどこへやら、もはや立場ある者ではなく、ただの緑色の女となっていた。
俺は彼女を見下ろしながら、弁当箱を高らかに頭上に振り上げる。
すると、叱られた子供のようにビクンと身体を縮こませ、キュッと目を閉じる、緑のたぬき。
不覚にも、ちょっと可愛いと思ってしまった。
そのぽんぽこりんの胸めがけて、
……ぽよんっ……!
とひっくり返した弁当箱を置いた。
そして反撃ののろしのように、高らかに叫んだ。
「これが……『女体盛り』じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
次回、反撃開始!




