02
生徒会室の隅にある、パーティションで区切られた一角。
そこに引っ込んでいった生徒会長は、小一時間ほど衣擦れの音をさせたあと、始業のチャイムが鳴る頃になってようやく姿を現した。
開口一番、彼女が言い放ったのは、
「さぁ、ごらんあそばせ……! これが偉大なるニッポンの誇る、HENTAI文化のひとつ……『にょたいもり』ですわっ!」
裸身にジオラマのような草原と森林を植え付けた、その姿は……。
言われなくても変態丸出しであった。
彼女はドヤ顔で、俺の前に仁王立ちになる。
「ふふ、ニッポン帰りのアナタでも、『にょたいもり』は初めてでしょう……!?」
ボディペイントに毛が生えた程度の格好だというのに、臆する様子はない。
ほんのり頬が赤いのは、羞恥よりも興奮を感じているためのようだ。
俺は恥ずかしながら、女性の裸というのも生で拝見したことはない。
それは限りなくソレに近いアレのはずであり……。
そして俺の記憶のアルバムの、1ページ目に飾られるほどの記念すべきモノだと思うのだが……。
なぜだろうか、俺は不思議と冷静と情熱の間にいた。
そして頭の中では、両手の指で数え切れないほどのツッコミポイントを見出していたのだが……。
「耳のカバーみたいなのだけは、外さないんですね」
とりあえず、素朴なところから口にしてみた。
……この世界には、ファンタジーRPGっぽい『種族』たちがいる。
『ヒーム』『エロフ』『ドヴァーフ』『コビット』……。
そのなかで俺は、人類に一番近い『ヒーム』という種族ということになっている。
彼女は『エロフ』。
横に飛び出した長い耳と、男の遊園地みたいな身体が特徴だと彼女自身が教えてくれた。
そしてこの世界のエル……じゃなかったエロフはなぜか、耳にみんな下着みたいな覆いをして、露出しないように隠している。
これも彼女からの情報なのだが、
「この『イヤーパンティ』は、他の下着とお揃いにしないといけないという法律があるのですわ」
だそうだ。
ツッコミポイントが増えるから、この発言については深くは言及しない。
「耳のカバーみたいなのだけは、外さないんですね」
「えっ?」と聞き間違えのようなリアクションをされたので、俺はもう一度尋ねてみた。
『イヤーパンティ』とやらをずらして、俺の言葉に聞き入る彼女。
急に、ささっと耳に手を当て、雷を怖がる子供のように身体を縮こませたかと思うと、
「こ、これだけは、お許しくださいませ……!」
泣きそうな上目使いを向けてきたので、思わずドキリとしてしまった。
「い……いや、別に外さなくていいですよ。っていうか今の会長の、X-M○Nの敵みたいな格好のほうがよっぽど恥ずかしいでしょうに」
「ニッポンの文化を体現できるのであれば、むしろ喜びのほうが勝りますわ。……ハッ!? まさかこの気持ちこそが、古文書にも載っていた、『うれしはずかし』……!?」
なんだか面白そうだったので、もう少し泳がせてみることにしよう。
「かもしれませんね。で、その『にょたいもり』は、どういう意味があるんですか?」
俺は知らなかったフリをしたのだが、それが余程うれしかったのか、緑の生徒会長はフフンと鼻を鳴らす。
「教えてさしあげましょう。偉大なるニッポンの人々は、『切り取る』ことを好んでいたのですわ。『はいく』というショートメッセージで四季を切り取り、『ぼんさい』というミニプラントで、自然を切り取る……。『にょたいもり』はそのデラックス・バージョンなのですわ」
その話を聞いて、ようやく理解できた。
『にょたいもり』を、『女体森』だと思っているのか……。
それはもちろん間違いだが、説明には妙な説得力があった。
「ではレクチャーはこれくらいにして、そろそろまいりましょうか。さぁ、あそびあそばせ……!」
彼女はそう言うと、おもむろに長机の上に横になった。
今度はなんだろう? と思って、よく見てみると……。
机の上には、前傾姿勢でゴルフクラブを構えている、木彫りの人形がちょこんと置かれている。
そして彼女の胸は、よくよく見てみるとゴルフのティーグランドのようになっていて、臍のあたりにはバンカーがあった。
そのまま視線を、下腹部のほうに落としていくと……。
三角地帯には、『19』という旗が立っていた。
……えーっと、これは要は、ミニチュアのゴルフゲーム……?
近いものを挙げるなら、『パーフェクトゴ○フ』だろうか。
俺の説明でイメージしにくければ、『パーフェクトゴ○フ』でググってみてほしい。
「さぁ、これこそが『にょたいもり』の醍醐味……! このあたくしの、男と女の19番ホールに……みごとチップ・インできて!?」
この世界に来て、俺はまだ1時間くらいしか過ごしていない。
しかし早々から信じられないほどの、ド下ネタの連続であった。
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