14
パカッと木の蓋を取った瞬間、
……ふわあ……!
とお釜から湯気がたちのぼり、芳香となってあたりの空気を柔らかくしていく。。
パンの焼きたての匂いもいいが、日本人ならやっぱり米だよな……! と思わされる瞬間である。
湯気はかなり熱いはずなのだが、クラスメイトたちはこぞって覗き込んでいる。
顔が汗でびしょびしょになっていたので、俺は慌てて追い払った。
「ストーブに集まる猫かお前ら! ちょっと離れろ! でないと汗がご飯に入っちまうだろうが!」
「でもそれで、ちょうどよいお味にになるのではありませんの?」
「味平かっ!」
「それにしても、いい香りですわね……!」
大きな胸を前後に動かして、スーハーと深呼吸を繰り返す生徒会長。
「これは、米に含まれているタンパク質とデンプンが分解されてできた、アミノ酸と糖があわさった匂いだ。この匂いの良さが分かるなら、日本人の素質じゅうぶんだ。この匂いが苦手なヤツもいるからな。米を食わない文化のヤツらには特に」
「おい、見てみろよ! 表面がつやつや輝いてるぜ……!」
「キレイ……! まるで真珠みたい……!」
「俺たちが普段食ってる虫とは、ぜんぜん違う……! まさかこれが、本当に米だっていうのか……!?」
「炊く前はぜんぜん違ってたけど、炊いた後は古文書に載っていたのにかなり近いわね!」
キラキラと目を輝かせ、腹をグーグー鳴らしている異世界人たち。
とうとう我慢できなくなったのか、釜に直接手を突っ込もうとしていたので、俺はまた追い払う。
「待て待て待て! 山賊かお前ら! 日本人なら日本人らしく、ちゃんと茶碗と箸で食べるんだ! 俺がよそってやるから、そこに一列に並べ! でなきゃ二度と作ってやらねぇからな!」
脅してやると、クラスメイトは渋々ながらも従った。
農耕をしている間はずっとブーブー文句を言っていたが、今回ばかりはやけに大人しい。
ようやく俺のすごさがわかったようだな。
『皮肉屋のウィキ○ディア』の面目躍如といったところか。
相手は戦闘民族だから力では敵わないが、知識量であれば圧倒的に俺のほうが上だ。
しかもコイツらが憧れている、『ニッポン』のことならば、なおさら……!
よぉし、この調子で俺のすごさを思い知らせてやり、この惑星のヤツらをみんな懐柔してやるとするか……!
俺はたしかなる手応えを感じながら、給食当番と化した。
本当は『卵かけご飯』のはずだったのだが、予定を変更して『ただのご飯』にする。
まずは米の味をしっかりと味わってもらいたかったからだ。
俺と生徒会長を中心として、輪になって地べたに座るクラスメイトたち。
フライングをして食べはじめる者はおらず、みんな意外と行儀がいい。
生徒会長が、みなに向かって言う。
「だいぶ遅くなりましたけれど……ジャブくんの言う『ご飯』を、みんなで頂くのですわ! では、お食事の前の『オイノリ』を……せぇーの!」
「……いただきまぁーーーすっ!!!!」
一斉に唱和したあと、ごはんに箸を突きたてる。
大半が子供みたいに握りしめているので、いずれ箸の使い方も教えてやる必要がありそうだ。
それはともかく、ほくほくつやつやの、まだほんのり湯気が立っているご飯を、口に運んだ瞬間……。
……ぱくり。
異変が起こった。
……ズッ……!
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!
輪になっていたクラスメイトたちが、座ったまま一斉に飛び上がり、緊急脱出装置で射出されるように四方八方に散っていく。
……ドシャッ!
そして少し離れた校庭や畑の上に叩きつけられ、ゴロゴロと転がる。
ま○ぐり返しのようなあられもない格好で静止したかと思うと、
「おっ……おいしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
あちこちで、歓喜の雄叫びが爆発した。




