騙し騙され
「名前つけてもいいですか!?」
赤毛の子は目をキラキラさせながら息を荒げ、そう言ってきた。相変わらずエメラルドグリーンの目は綺麗だった。
そこでキモオタは不思議に思った。
(なぜ、名前程度でここまではしゃぐのだろう)
名前をつけるだけでここまで興奮するのはどこかおかしい。だが不思議に思っただけで、キモオタは気にしない事にした。
「ああ、良いさ。」
そう言うと赤毛の子は微笑み、名前をどうするのか迷っているのか、顎に手をおき、頭を左右に傾けた。
その顔は、動物に名前をつける子供のようで。気づくと、キモオタのあちこちに冷や汗が流れていた。
(やばい)
その様子を見た赤毛は、ニヤっと笑顔を見せた。悪魔の笑顔、と言うのはこの笑顔を言うのではないか、そう錯覚してしまうほどにキモオタの、危機感が全力で警報を発していた。
逃げなきゃ、そう思っても背筋が凍るほどの威圧を受けて、キモオタの足は動かなかった。関節が震えて、声も震える。
「あぁ…ぁぁああ……」
そう言いながら、生まれたての子鹿のような足取りで立ち上がり、村の出口と思われる場所までの道のりを歩き始めた。
頰に冷たい風がスゥっと抜けていった。
すでにフラフラな足腰に鞭を打ちまた反対に逃げた
また風が抜けていった
また反対に逃げた
風が抜け…
逃げ…
最後に赤毛は眉を下げて
「ちょっとやり過ぎたな…」
苦笑いを混ぜてそう言った