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シフォンな彼女と冴えない僕  作者: からむますたー
7/7

第6話 彼女と初めての待ち合わせ?

土曜日、午前九時四十五分。

僕は駅前のバス停で真理さんを待っていた。


(ちょっと早く来すぎちゃったかな。)


約束の時間まではまだ十五分もある。妥当な時間だろう。今日はお洒落をしてきた、つもりだ。


『これだから、理論野郎は…』


僕は水曜日に泰典に服の相談をしていたところ、こんなことを言われてしまった。


『明日の放課後、十七時から買いに行くか。お金は二万円くらい用意しておいて。』


と言われて、木曜日に買い揃えた服と靴。泰典の服のセンスはとてもよかった。それは泰典自身、お付き合いしている人が人だからだと思うのだが。そのことについて言うと


『表舞台に立つ彼女に見合う立ち振る舞いと身だしなみはしとかないと、彼女を困らせてしまうからな。』


泰典と彼女さんの話は公には秘密にされている。聞くところによると芸能関係の人らしい。だから、あんまり話は聞けないんだけど。楽しくやれているそうだ。


(あのときはどうなるかと思ったけど、うまくいってることに越したことはないよな。僕も泰典のように

できたらいいんだけどな。)


と思いながら、約束の時間を待つ。


―—午前九時五十五分。

スマートフォンで行く先の動物園の情報を見ていると


「お待たせ~」


と声が聞こえた。僕は声のした方を向くと真理さんがいた。


「いえいえ、こちらが早く来ていただけですので。」


(あ、やってしまった。)


と思ったときにはすでに遅い。


「それじゃ待たせちゃったのね。ごめんね。」

「すみません…」


気まずい雰囲気になってしまった。どうしたものかと思ってると、不意に横から


「少年、まだまだだのう。」


とオーナーの声が聞こえた。


「えっ、オーナー来てたんですか!?」


僕は素っ頓狂な声をあげた。


「おや、来ちゃ悪いのかい?二人だけで行くとは言ってなかっただろう。」

「ソ、ソウデスネ。」


僕は片言で返事をするしかなかった。


「今日は久々におばさまからの誘いなのよ。すごく楽しみ。」


横では真理さんがとても明るい笑顔をしていた。土曜日はオーナーがカフェを営業しているので、なかなか休みを合わせることがないのだろう。それを考えると、二人きりでデートを思っていた自分が少し恥ずかしく感じた。


「一日くらい休んでもバチは当たらないじゃろうて。今日は楽しもうの。」

「はい、おばさま。楽しみましょう!」


二人は楽しそうに会話をしていた。僕がこんなところに居てていいものかと思っていたら、その思いを感じ取られてしまったのか


「稔くんも楽しもうね!」


と真理さんに言われた。僕はとっさに


「はい!」


と大きく返事をしたら、真理さんにクスクスと笑われてしまった。


「そういうところは正直なんだねぇ。」


とボソッとオーナーに呟かれたのは気にしないでおこう。


「そうそう、ちょっとこの荷物をお願いしてもいいかな?」


真理さんから大きめのバスケットを手渡された。


「これは何が入っているんですか?」

「これはサンドイッチ。お昼にみんなで食べましょう。」

「ありがとうございます!」


僕は全力でお辞儀をした。


「頑張って、朝から二人で作ったんだよ。」

「私も作りました。」


と農作物に貼ってあるような生産者の写真のようなポーズをして、オーナーがピーズをしていた。手渡されたバスケットは男の僕でもそこそこ重く感じるほどで、ここまで運ぶまで大変だったんじゃないかと思った。


「重そうだけど大丈夫?」

「いえ、このくらい平気です!」

「今日は稔くんが来てくれるって言ってたから、量を多めにしたんだ。」

「男の子はよく食べるからのは知ってるからね。」


オーナーがニヤッと笑った。なるほど、オーナーがアシストしてくれていたのか。


「ありがとうございます。お昼ご飯、楽しみにしてます。」


僕は精一杯の笑顔で応えた。


「そろそろ時間だから、バス停に向かいましょう。」


と真理さんが言いながら先導をきって、バス停に向かい始めた。僕らもそれに続いて歩きだした。動物園までは駅前のバス停から約三十分のところにある。


「おばさまと動物園なんて、いつ以来かなぁ。」

「そうだねぇ、一年以上行っていないわね。」

「私、とっても楽しみ。ペンギンたちもいるかなぁ。」

「変わりなくいると思うわよ。」

「よかった、楽しみ!」


(あぁ、真理さんはペンギンが好きなのか。)


僕はペンギンというワードから、AM8:00さんの作品を思い出していた。空を駆けるようにペンギンたちが動くアニメーション。ペンギンは空を飛べないけれど、海を自由に泳ぐことができる。たとえ空を飛べなくとも、飛べる場所はある。そんなメッセージが込められたアニメーションのように思えた。


(僕は飛べる場所を見つけられたのだろうか。)


そんな考えをしている間にバスが目的地に着くようだ。


「まもなく、動物園前。動物園前。」


アナウンスの後、僕はバスケットの取っ手を握り、到着に備えた。


「稔くん、そろそろだね!」

「そうですね!」


初めてのデートなんだ、難しいことは考えずに楽しんでいこう。

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