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シフォンな彼女と冴えない僕  作者: からむますたー
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第4話 ゼミと後輩と過去のコト

月曜日。

今日は僕が所属している川田研究室のゼミがある。この先生は特殊で、テーマは個人で好きなものを選択できる。ただし、政治もしくは経済というワードを外してはいけないという縛りがある。一応、僕の卒論のテーマは「経済学でみる日本のクリエイターの動向とその展望」である。今はコンテンツとクリエイターの歴史をまとめているところで、今日のゼミは自分の担当回である。事前に用意したレジュメを配り、プレゼンをする。いつも通りの流れだ。最後の川田先生の講評のとき。


「冴島君、やけにコンテンツとして絵を推しているけど、何か理由があるのかな?」

「それは、自分が好きなクリエイターが絵を描いているからです。」

「ふむ、なるほど…。どんなクリエイターが好きなんだい?」

「ちょっとマイナーなんですけど、AM8:00という名前のクリエイターです。」


と言って、僕はAM8:00さんの描いた絵を川田先生に見せた。


「現代の子って、こんな感じの絵を描くんだねぇ…。私が思っていたのは、西洋画とかそんなイメージだから。時代は変わったんだねぇ、はっはっはっ。」


そう言って、本日のゼミは終了した。


(ふぅ、なんとか今日のゼミは乗り切ったか…)


川田先生は怒鳴るようなことはしないものの、発表内容がしっかりできていないと質問を全くしない。川田先生曰く。


「発表内容がしっかりしたものを持ってこないと、質問する価値がないからねぇ…」


ということだそうだ。今日みたいに質問してくる、ということは発表がまともなものだったということだ。ゼミ室の椅子に座って一息ついていると


「みの先輩、お疲れ様です!」


ゼミの後輩の高山澪が麦茶を持って話しかけてきた。


「ありがとう、高山。期末試験は何とかなったかい?」

「はい!先輩の指導のおかげで何とか単位はとれそうです!」

「よかった、よかった。今期で全部の単位が取得できれば、授業に余裕が出てくるもんな。」

「そうですね。遅れは取り戻せそうです!」

「本当に良かった。一年生の指導役としてサークルを引っ張っていると聞いて、安心したよ。」

「そんな引っ張るなんて、恐れ多いですが…。ありがとうございます。そういえば、先輩は夏休みの間、部室に来ないんですか?」

「うーん…。時期が時期だし、楽しみが半減しちゃうからな…。夏休みは極力行かないようにしてる。」

「ふふふ、そうですよね!今年は去年の先輩たちを超えられるような企画を用意していますよ!」

「おっ、それは期待しておこう。高山は司会、というところかな?」

「先輩には教えませーん。」

「はいはい。何か困ったことがあれば、俺とかヤスや瞬、マサに頼りなよ。」

「はいっ!分かりましたー。一度くらい、遊びに来てくださいね。」


そう言って、高山はカバンを持ってゼミ室を出ていった。


(そうか、あれから二年になるのか…。あの時はよくあんな無茶なことをしたもんだな。)


———二年前。

僕は泰典、瞬、真典の三人で放送サークルに所属していた。そのとき、一年生で入ってきたのが高山澪だった。身長低めの可愛らしい外見で、トークが非常に上手く、うちのサークルのエース的存在であった。半年経った夏休みのある日、高山への嫉妬からか一つ上の女の先輩からのいじめが始まった。そして、一つ上の男の先輩は高山に対してちょっとしたセクハラのようなことをしていた。その理由は高山のある身体的な特徴に起因するものなのだが…。それは胸が大きいということである。服の上からでも目立つほどの大きさであるため、それを目当てで過度な接触やネタにしたりしていた。高山がサークルにも、そして大学にも来なくなったのを心配した僕は、高山の知り合いに状況を聴き、泰典、瞬、真典の三人と協力して、事態の全容を調べ上げた。そして、引退していた四年生の先輩と共に、いじめに加担していた女子の先輩、セクハラをしていた男子の先輩を締め上げた。その後、学生支援課に通報、先輩たちは停学処分およびサークルの強制退会となった。事態が落ち着いてから半年後に高山は復学し、サークルにも顔を出すようになった。事態の解決に僕が動いていたことを知った高山は、ちょくちょく話をするようになった。そして、学校に来れないでいた期間の必修科目を僕が教えていた。その後、たまたま彼女の好きな専門が僕と同じだったため、その一年後に川田ゼミに入った。


(あの一件があって、泰典、瞬、真典とよく遊ぶようになったもんな。)


僕が高山の件を三人に伝えたところ、瞬とマサが激怒し


「俺たちがあの先輩をとっちめてやる!」


とか言い出して、泰典と僕でそれを止めるのが必死だった。泰典の助言に従い、事態についての情報収集と整理をしてたんだっけなぁ。瞬と真典が男の先輩から情報収集、泰典が女の先輩からの情報収集。そして、僕が全容をまとめて、元代表だった四年生の悠太先輩に伝える担当だった。副代表の美紗先輩まで呼んできて、三年生を締め上げてたのは今でも身震いがするほどである。普段は悠太先輩がボケてるのを美紗先輩がツッコミをいれるっていう漫才みたいな感じなんだけど、あのときの二人の顔は怖かったなぁ…。さすがの三年生も黙りこくっていたし…。


(まぁ、高山が無事に大学に帰ってきて、サークル活動もできるようになったからいいか。)


僕は高山からもらった冷たい麦茶を飲み干すと、スマートフォンを取り出し、SNSのアプリを起動した。

『ミノ:高山が元気そうにしていた。夏休みに部室に遊びに来ませんか、ってさ』

『やす:そうか。元気にしてたか。』

『Shun:おぉ、俺らのアイドルの澪ちゃん!元気そうでよかった!』

『Massa:M・I・O!M・I・O!』

『ミノ:瞬とマサはほんとに高山のことが好きだな(笑)』

『Shun&Massa:だって、可愛いじゃん!』

『やす:はぁ…。今度は君らが停学処分を受けるかい?』

『Shun&Massa:すいませんでした…』

『やす:あと三か月か…。今度は僕らが楽しむ番だね。』

『ミノ:そうだね!何をやるんだろうね。教えてくれなかったよ。』

『Shun:そりゃ、澪ちゃんは司会だろ。』

『Massa:間違いない!是非とも、買った一眼レフに澪ちゃ…ゲフン。後輩の雄姿をフィルムに収めないとな!』

『やす:マサ、本音が出てるよ(笑)』

『ミノ:ほんと懲りないやつだな…』

『Massa:すみません…』

『Shun:それはそうと、ちゃんと予定は空けておけよ!』

『やす&ミノ&Massa:もちろんだ!』


僕はスマートフォンをズボンにしまい、ゼミ室の鍵を閉めようとしたとき

(あっ、高山に聞けばよかったかな…女性が好きな場所。まぁ、いいや。)

そして、僕は鍵を閉めて、ゼミ室を後にしたのだった。

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