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シフォンな彼女と冴えない僕  作者: からむますたー
3/7

第2話 来訪者は突然に……

真理side

(はぁー。なんであんなことを言ったんだろう)


cafeNo.8を出てから、真理は考えていた。なぜかは分からないが、無性に彼をからかいたくなったのだ。過去の経験から男の人とは距離を置くようにしているのにも関わらず、彼には近づきたくなったのだ。彼は他の男の人と違って嫌な雰囲気を感じない。


「うーん、なんか弟っぽく思えたからかなぁ?」


コロコロと変わる表情は子供のように純粋で可愛らしかった。ケーキを食べているときは幸せそうな顔するし、ちょっとからかえば顔を赤くするし、そして、私のことになると真剣な顔になるっていうのは…ちょっと考えすぎかな。彼のように真っすぐな瞳をした男の人を見たのは、いつ以来だろう。


「あんな子たちに、私の絵を喜んでもらえたら本望なんだけどなぁ。」


家に帰るまでの間、真理は彼と自分の絵についてずっと考えていたのであった。


稔side

「ああいうところできちんとアピールしないとね、男が廃るんじゃないか」


真理さんが帰った後、僕はオーナーから説教を受けていた。


「そう……ですね……」


僕は顔をあげることができなかった。せっかく、オーナーが場を設けてくれたというのに、僕は真理さんに対して何もアピールができなかった。というよりも、僕にアピールできるものがなかったのだ。会話が上手いわけでもなく、服装も顔も整っているわけでもない。どこにでもいるような、ただの一般人なのである。


「まぁ、難しいわよねぇ…。真理ちゃんとの距離を縮めようと思ったら。そういえば、今までに真理ちゃんに言い寄ってきた男は何人もいるけど、みーんな断られているからねぇ。」

「そうなんですか!?」

「過去にたった一人だけ、付き合いした男がいたんだけど……。その男がかなりのクセ者でねぇ…。」

「真理さんと付き合った人がいるんですか?」

「そうよ、私はあの男を絶対に許さないけれどね!」


オーナーは怒気を込めてそう言った。オーナーをここまで怒らせるのだ。相当なことをしたのだろう…。相当なこととは一体何だろう…。もしかして…

その思考はいきなり開けられたドアの音によってかき消された。


「こんにちは、真理は来てますか?」


声の主は紺の上質なスーツを身に纏った、俳優のようなイケメンだった。


「あんたに教える義理はないよ」


オーナーは男を睨みつけ、声高に言った。


「毎度毎度、手厳しいですねぇ、ほんとに。」

「あんたに淹れる飲み物もケーキも出さないから帰んな」

「こうも嫌われているとは困りましたねぇ…。お客として来たつもりだったのですが。」

「客がお店を選ぶ権利があるなら、こっちだって客を選ぶ権利だってあるんだ。」

「真理はいないみたいなので、帰るとしますね。」


男は飄々とした態度で店内を見渡した後、店を出ていった。


「ふぅ……。すまないねぇ、あんな大声で怒鳴って…」


オーナーは大きく息を吐きながら言った。


「大丈夫ですよ。それより、どういう状況なんですか?」

「あぁ、あの男かい?あの男こそ、さっき話した真理ちゃんが過去に付き合っていた男だよ。」

「あの男の人が?」


僕は驚いた。僕とは真反対のパーフェクトな男じゃないか、と。物腰も柔らかそうな男の人がなぜ…?


「こればっかりは話す訳にはいかないからね…」


(一体、何があったのだろうか……)


僕はモヤモヤした気持ちに悩まされながら

「そうですか…。プライベートな話ですしね。」

と言うしかなかった。


気まずい空気が流れたまま、時間は過ぎていった。夕方になったので、僕はcafé No.8を出た。だいぶ日が傾いてきたとはいえ、まだまだ暑い。


(どうすれば、距離を縮めることができるのだろうか?)


こういうときは友達に相談するに限る。僕はズボンからスマートフォンを取り出し、SNSのアプリを起動した。


「えっと、『今夜、どこかで宅飲みしよう。相談したいことがある。』っと。」


送信してから、数十秒後。


『やす:いいよ。どこに集まる?』

『Shun:俺も行ける。こっちは研究室詰めだったから、部屋が汚い。』

『Maasa:バイト終わったら行けるよー』

「全員来れるのか、そうだなぁ…。『ミノ:じゃあ、ウチで』っと」

『やす:わかった』

『Shun:了解した』

『Massa:オッケー』

「『ミノ:みんな、何が食べたいとか、希望はある?』」

『やす:こういうときはピザ』

『Shun:それな』

『Massa:ピザか、バイト終わりのピザとか最高』

「『ミノ:今から、部屋の掃除をするわー。誰か飲み物買ってきてくれると助かる』」

『やす:じゃあ、家にあるお酒持っていく』

『Shun:こっちはワイン持っていくわ(笑)』

『Massa:ワインを稔に飲ましたら潰れるやん(笑)』

『Shun:それが楽しいんだろ(笑)』

『やす:それな!』

「こいつら…『ミノ:お前らなぁ(笑)』」

『Shun:それはさておき、他にお酒いるかな?』

『やす:あとはビールとかじゃないかな。』

『Massa:特に希望ないし、おまいらのセンスに任せる』

『やす:任せろ』

『Shun:おっけ』

「さてと、開始時間は…っと『ミノ:開始は七時でいいか?』」

『やす・Shun・Massa:おけ!』


僕はスマートフォンをズボンにしまい、家へ帰る道を歩き出した。

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