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どうも王都は不穏らしい

次で終わる予定

「最近お客さん増えましたねー…」


「そうだな、ごめんなフィリア、薬屋の仕事もあるのに…」


「ふふっ、構いませんよ、あなた、薬は宿屋のお客さんにも売れますし、お婆さんが店番をしていますから」


フィリアとの結婚を報告したとき、「あぁ、まだくっついてなかったの?で、式はいつだい?」と村長その他に流された。そんなにわかりやすかったかな…。


「そうは言ってもさ…」


「あれ?フィリア…?」


宿屋に入ってきた客が、フィリアの名前を呼ぶ、知り合いだろうか?


「え?リア?どうしてこんなところに?ハルトマン先生のところで働いてたんじゃないの?」


「アンタこそ…連絡の一つも寄こさないでどうしたのよ…、あぁ…良かった」


崩れ落ちた女性を抱きかかえ椅子に座らせる、フィリアからの視線が痛いが、通行の邪魔だし地面に座らせるのは気が重い。


「ありがとう…行方知れずだった友達に会えて安心して…」


「気持ちはわかるさ…」


「あぁ、リア、ちなみに私、結婚したわ、そちらが夫のライナスよ」


「なっ!?…本当!?」


「あぁ、一か月ほど前にな」


「気が早…いって程でもないのかしら…、まぁおめでとう…」


積もる話もあるだろうと、フィリアを休憩させる。その夜、リアとフィリアはこの混雑の現況を教えてくれた。


「大公家の離反…か」


貴族と王族の間に決定的な溝が刻まれたらしい、原因は、勇者。彼は王族の姫を正妻としている。その彼に王位を継がせようというのが今の王だ。それを許容していない勢力が貴族には多いとのこと。旗頭は、姫と結婚する予定であった大公殿のご子息だそうだ。そのせいで魔法使いギルドも再び分裂。今度は貴族と縁が深かったハルトマンというリアの師匠も追われたらしい。


「兎に角、王都から逃げる人が多いの、だからここの道も混雑して、この宿屋も混雑しているというわけ」


でもどうしてこっちに…?


「あぁ、大街道を抑える領主のほとんどが貴族派で、街道を抑えてしまったの、他にも、勇者に婚約者を寝取られた…騎士とか賢者が貴族側に参加しているらしい…そういえばあなたもそのクチじゃないの?ラミ村のライナスって…」


なんでも吟遊詩人の歌に、勇者が寝取ったものがあるらしい、不名誉であるためやめさせようとしているらしいが、惚れた腫れたの愛憎劇は身分問わず人気とのことで、規制もできていないようだ、迷惑この上ない。


「そうだけど…貴族派に参加する能力も技能も無いからな。」


「まぁ…そうよねぇ…私だってこんな面倒な事、参加したくないわ」


そう、面倒だ、面倒なのだ。もう縁は切れているのだから、知らぬ存ぜぬでいい。俺の妻はフィリアだし、この世で一番大切なものだってそうだ。イリアなんてもうどうだっていい。復讐しようという気さえわかなかった俺は弱いのだろう、でも仕方のないことだ。だって事実だもの。


―――――――――――――


「失礼、ライナス殿は御在宅か?」


「はい…俺がライナスですが…」


リアが泊ってから三日後、物々しい雰囲気の騎士が宿屋を訪ねてきた。なんだか鬼気迫る様子である。


「おぉ、あなたが、自分はゲルハルト・フォン・ラングと申す、あなたと同じ境遇…と言えばわかるだろうか?」


聞けば、勇者に婚約者を寝取られた口であるらしい。そして、俺に旗頭として陣営に参加してほしいと告げてくる。


「申し訳ありませんが、お断りします。俺は今の生活が大切なので」


「そうですか…、確かにそのようだ。私たちのように復讐の炎に身を焦がさない生き方もあるのでしょう。お幸せに」


あっさりと、彼は引き下がった。こちらが幸せである事を理解し、復讐などに手を貸さない方が良いと思ってくれたらしい。自分たちは生き方を曲げるつもりはないらしい。それでいいのだろう。少なくとも、こちらに逃げる人が増えている事実だけは変わらないのだから恐らくは…。


半年後、大公家による反乱が起こり、王都に戒厳令が敷かれたというニュースが舞い込んできたときには、事態はもう終わっていた。

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