第一章2
彼女は、戦場を走っていた。魔法が飛び交い、建物が壊れ、剣が交じり合い、血が流れる。そんな、いつ命を落とすかわからない場所で、まだ大人にもなっていない少女は、必死で、走り続けていた。
「ーーー」
小さな声でボソボソと、まるで一つの体で二人が喋っているかのような、会話のような、言葉を発して走って行く。
はっきりいって、この戦場で彼女は浮いていた。だが、身にまとっているのは、国を示す鎧。当然そこには、敵国の戦士が立ち塞がる。一振りすればひ弱な少女など押しつぶされてしまうような大きな斧を、力任せに打ちつける。いや、打ちつけようとした。したが、
「邪魔!。」
それより、どこから取り出したかわからない少女の細身の棒の方がはやかった。その細身の何処にそんな力があるのかというほどの圧倒的な破壊力を持つ棒で、敵の体を打ち付けた。くらった敵は大きく吹っ飛び、味方を巻き込みながら少女の視界から消える。
気づけば彼女の通った道には誰も立っているものは居なかった。倒されることを恐れた敵の戦士が彼女の向かう先に障害物を作らない。彼女の力は圧倒的だった。しかしその力は、積極的には振るわれてない。
一人の戦士が彼女の向かう先を見つめる。それは国の中心、王城だ。彼女からみれば敵の城。彼女は走る。何かを思って。