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第7話 楽しかった

優亜は、浩史に送ってもらい、家に入ったあと早速大好きな風呂に入ることにした。


風呂が沸いたあと、

服を脱ぐ。

姿見に裸体全身を写して、優亜はつぶやく。


「自分で、見ても、いい体だよ。

うん、よくここまで育った。

女性ホルモンえらいっ!

でも、

もう26歳なのに、男性経験ないのはもったいないなあ〜。

今日、あいつ、エッチなことをちょっと考えていたみたいだから、ちょっと

誘惑しちゃってもよかったかな?」


優亜はつぶやいたあと、ちょっと顔を赤らめ、鏡に向かってあっかんべーの仕草をして姿見から離れた。


浴室に入り、ざぶーんっと音を立てて浴槽に体を浸す。


「うーん、気持ちいいーっ。極楽極楽〜!

やっぱり、好みの入浴剤を入れると香りも楽しめるし、最高っ!

生き返るっ。」


(今日のデート楽しかったー!!

こんな楽しいデート初めて。

癖になりそうっ。

高校の同級生に私の正体を明かしちゃうなんて、考えもしなかったし、リスク高いことだったけど、

結局浩史と会って大正解だった。


浩史がもし私のことを気持ち悪いと

感じていたらどうしようと思ったけど

全然そんな感じなかった。


どちらかというと…

綺麗とか可愛いと

思ってくれてた…

と思う。

私の扱いは完全に女性としてのものだったし…

いいやつだなあ〜)


優亜が男性とデートするのは初めてではない。

大学時代は何人かの男子とデートをしたし、

いい雰囲気となった男子とは交際を始め、キスをしてしまったこともあった。

美人で可愛い優亜は、いろんな男性からアプローチされたし、

誰が見てもイケメンといった感じの美形男性とも付き合うことができた。


でも、いつも楽しくなかった。というか楽しめなかった。

相手がどんなに素敵な男性でも・・・である。


それは、性転換して女性になっている事実を相手に隠していたからだ。

後ろめたい気持ちが常にあった。


生まれた時の性別を教えられないということについて

どうしても罪悪感を感じてしまうのである。


相手は、私を普通の女性と思ってくれている。

それは、私の望んでいることなんだけど、騙している気がする。

と、いつも考えてしまう。

その結果、楽しめない。


当初は割り切って男子と付き合う気持ちはあったが

実際付き合ってみるとそうはいかなかった。

遊びで男性と付き合うという感覚を持てないのである。


デートして、交際が始まったあと、キスまで行っても、それ以上進むのが怖くて、

みんな別れてしまった。

相手の男性は、全く訳がわからないという顔をするし、いろいろ聴かれたのだが、

そこは女性特有の

ひたすら「ごめんなさい」と泣きながら、別れを告げるやり方で乗り切った。

理由を具体的に言わない女性だけしか使えない方法である。

自分でも、ずるい手法と自覚してるので嫌だったのだが、本当のことを言えないので仕方なかった。


優亜は、もしSEXをしたら、普通の女性と違うところを発見される可能性があると

いつも怯えていたのだ。

大学生の男子の性経験がどこまであるのかわからなかったが、いずれおかしいと思われると確信していた。


優亜の体は完全女性化しており、性器も外見は本物と変わりない。

しかも、ダイレーションという訓練により、性器を鍛えた結果、男性との性行為は可能となっていた。

でも、体液の分泌状況や各部分の感覚は普通の女性と違う。

もし、SEXをして、相手が女性との性行為に慣れている男性だったらわかってしまう危険性があった。


それが嫌だった。怖かった。


だったら、

自分の正体をオープンにして男性と付き合えばいいじゃないかと考える人もいるだろう。


MtFTS(性転換して女性になった元男性)の中は性転換したことを、公表して生活を送るべきだという人も多い。

その方がストレスを感じないし、嘘をつかないで済むという考え方だ。

そしてカミングアウトした上で性的マイノリティの世間における発言権や立場の向上 にかかる行動をするべきだと主張する活動家がいる。

(優亜はその人たちの考え方には反対はしない。でも同じようにはできないと思った。)



そして、女性に性転換した男性に興味を持ち、

付き合いと言ってくる人間がいる。

いわゆるニューハーフ好きの男性だ。

この手の男性は、どこまで男性の身体が女性に近づいたのか、どこがどう本物と違うのか興味津々で、珍しいものを見たいというタイプの人間である。


優亜はその手の男性が苦手というか大嫌いだった。

贅沢な望みだとは思いつつ、普通の女性として普通の男性に愛されたかった。


そこで普通の男性が性転換者を普通に愛してくれるかと考えると、そこは実に疑わしいという結論に至る。

やはり、普通の男性は普通の女性との恋愛と結婚を望む可能性が圧倒的に高い。


だから、優亜は自分の正体を公表したくなかった。

普通の女性として、地味に生きたかった。


結果、男性と付き合い始めて感じるストレスやSEXでのリスクは仕方ないものだった。


普通の女性と同じように恋愛をしたいという無理な希望をもつ優亜は

男性とはつきあうべきではないということを

大学4年間で学んでしまうことになってしまった。


当初は女性として、男性とつきあいたい。大好きになった男性とSEXをしたいと思っていたのだが、

その難しさを実感する4年間であった。


もちろん、本当に好きになった男性に自分の正体を明かし、交際を継続してもらうということは何回も考えた。

愛があれば、生まれつきの女性でなくても受け入れくれるのではないかと何回も思った。


ただ、相手がショックを受けて、別れを告げてくる可能性が大きいと思い直す。


それだけでなく、周囲の人間に言いふらしてしまうということも十分考えた。

やはり、愛があれば、カミングアウトしても大丈夫・・・なんて思えなかった。


そして、社会人になってからは、全く男性との交際は遮断してしまった。

社会人になって男性と交際するということは

学生時代と違いかなりリスキーだ。

市役所職員という公的な立場にあると

なおさらである。

職場恋愛なんてとんでもなかった。



でも、心の中ではくすぶっていた。

男性とデートしたい。

男性と交際したい。

心の奥では、その気持ちはあったのだ。SEXはできなくても・・・


そんな優亜にとって、浩史との初のデートは、ノンストレスで、楽しさ100点満点だったのである。


相手は自分の正体を知っているから、素の自分をさらけだすことができた。

体の秘密を知られているということは、本当に楽であった。

また、無理して女性らしくしないで済んだし、

大好きなオタク趣味や男性的な考え方や趣味についても、思い切り話すことができた。


(こんなに楽しく過ごせるなら、何回も浩史とデートしたいなあ。

浩史となら、合意の上で、SEXをしてもいいかな。

でも、そのあと、めんどくさくなるかもしれないから、やめといた方がいいかなあ。

でも1回くらいいいかなあ?

浩史に彼女ができないといいなあ。

それじゃ、浩史が気の毒だよね?

浩史は普通の健康な男性なんだから。

それもちょっとしたイケメン!

タイミングさえ合えば彼女なんてすぐできちゃうはず。

ちょっと引っ込み思案で優柔不断なだけなんだから。


とりあえず、しばらくは今の関係を続けたいなあ。

友達以上、恋人未満みたいな感じ。


おしゃれして、女の子同士でショッピングするのも楽しいけど、

ちょっとかっこいい男性と、デートするっていうのもすごく楽しい。


浩史に彼女できるまで、いっぱい誘っちゃおう!)


楽しい気分でいっぱいになる優亜だった。


(そういえば、浩史の妹さんに会うんだった。

どんな子だろう。確か、楓ちゃんだっけ?

私、年下の女の子で仲のいい子いないから、楽しみだなあ。

もし、浩史と似たタイプで社交的なら、仲良しになれるかも。

いい子だったら、一緒に買い物に行ったり、美味しいものを食べにいけるんだけどな。


私って食べ物に好き嫌いないけど、今の友達は好き嫌いが多い子が多くて、

困る。

楓ちゃんが好き嫌いのない子だといいな。

いろんな料理食べに行ける。


そういえば、浩史と知り合いってことで声をかけるんだから、

オタク趣味はバラさないといけないなあ。

引かれたらどうしよう。

まあ、しょうがないか。

ファッションやお料理といった女子力満載のお話もして、

私の印象がおかしくならないようにしないとね。)


楓とどのように仲良くしていくか?

それを考えるのも楽しそうと思う優亜である。

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