第3話 電話を終えて
TS女性のお話ですが、エッチな話はほぼ無いまじめなラブストーリーにしました。
ちょっとしたイケメンなのに、うまく恋愛ができない男性と
美人TSがどうやって素直な気持ちになっていくかを描いていくつもりです。
よかったら、読んでくださいね。
一方優亜は電話を切って、ため息をついていた。
「あーあ、ばれちゃった。
性転換手術前、高校の時より前に知り合った人には
秘密にしておこうって決めていたのに。
性転換していること、ばれるとめんどくさいなあ。
人に話さないでくれるといいなあ・・・
自分で蒔いた種だから誰にも文句言えないけど・・・
でも、趣味が同じなんだもん。
同じ作品を読んで、一緒に感動できるんだもん。
そんな友達めったにいないんだから、
声をかけずにいられないよねっ。
だって、本当に楽しかったんだから。
あー、また一緒に飲みたいなーっ。」
優亜は自分で自分を説得していた。
優亜は高校時代を回想する。
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高校3年であった。
教室で佐藤裕太と富谷浩史は時々情報交換をしていた。
というか、裕太がほぼ一方的に浩史に情報を提供していたといっていい。
裕太と浩史は親友というわけではない。教室の中のグループではまったく違うグループに所属していた。
浩史は、運動部のレギュラークラスが集まるリア充系のグループに所属していた。キレイ系の女子もその中にいて、クラスの中で最も目立つポジションだった。
男はみんなちょっとモテそうなキャラがそろっていた。
一方、裕太は文科系クラブに入っていて、おたく系の男子のグループに所属していた。
話す内容はもっぱらアニメやアイドル、漫画の話。
インディーズ系のバンドの話なども好物だった。
非モテ系キャラがそろっていたが、別にブサイクというわけではなく、行動とかファッションセンスが
かっこいいとは呼べなかった。
でも、裕太は小柄で華奢で、女子には可愛い小動物のように扱われ、ペット的な人気を得ていた。
そんなタイプが違う二人がたまに話すきっかけになったのは、
漫画好きの浩史が、何か面白い漫画はないかなと思い、漫画好きのグループに自ら声をかけたことによる。
浩史はグループ以外の人間にも気軽に声をかけるタイプだった。
「わりいっ。最近の漫画とかアニメでおすすめの面白いものって何かないか?
お前らだったら、詳しいんじゃないか?
教えてくれっ。漫画好きなんだけど、何か最近行き詰まっちゃってさ。」
いろいろ得意分野の作品を薦めてくるオタクグループの中で、裕太だけは変わったものを薦めた。
少女漫画である。
「僕、少女漫画が大好きなんだ。
だって、女の子は可愛いし、男の子は王子さまみたいだよ。」
目をキラキラさせて、お気に入りの作品を浩史に紹介した。
浩史は、
「ええっ?
少女漫画なんて読まねえよ!」
と思ったが
強引にコミックを渡されてしまい、
止むを得ず読むと、意外にはまる作品があった。
今や、少女漫画といえども、恋愛ストーリーだけでなく、
グルメ漫画やスポーツ漫画など、少年漫画並みのうんちくに彩られたものがあり、
それは浩史をひきつけた。
「意外に面白い作品があった!また教えてくれ!」
「そうだなあ。こんなのどうかな?」
そんな感じで裕太が答えたことが始まりだった。
その後、裕太は自分がいいと思った漫画やアニメを浩史に教える。
裕太はアニメについては、すべてのジャンルについてオッケーであり、話が弾む。
浩史も教わった漫画がツボにはまり、また裕太に教わるようになるというサイクルになった。
所属するグループは違っても、漫画やアニメという共通な趣味を通じて、二人はよく話すようになった。
そして、ある日、「佐藤、この作品読んだことあるか?今、一番熱いライトノベルの作品なんだけど。」
と浩史が裕太に声をかけた。
「ラノベ?ラノベって読んだことないけど。
それ面白いの?」
「すっげえ、面白いぞ。佐藤だったらわかってくれると思う。
絶対コミックになるし、アニメにもなる。間違いないっ!
学校ものだし、恋愛だけでなく、人間関係や青春の葛藤を上手く描いていて、ハマるぞ。」
「本当?もし本当なら読まなくっちゃな!
僕、信用するよっ。」
裕太はクラスの女子に、「女の子みたいでかわいいっ!」と冷やかされるキュートな笑顔で返事をした。
裕太は背が低く、顔も女性的で、よく女性に間違われることが多かった。
浩史はなんかちょっとドキッとしたような顔をした。
「おおっ、読んでくれ。俺、もう読んだから、この本貸すよ!」
「そりゃ助かる!読んで気に入ったら、僕も自分のを買う。
サンキュ!」
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優亜は回想を終えた。
「あれが、富谷と私が同じ小説作家を好きになったきっかけだったんだよなあ。
そのあとも、あの作家の話で盛り上がったっけ?
まさか、二人とも
26歳になってもあの作家の小説を好きだったとはね。
しかも、新作の発売日に本屋で会うなんて、神様のいたずらとしか思えない。
それにしても、富谷はいい奴だったなあ。
優しいし、気配りできるし。
ただ、優柔不断だし、オンナ心がわかんないから、彼女できなかったけど・・・
けっこうあいつのこと好きな女の子いたんだけど、あいつ気が付かないんだよね。
あと、面食いみたいだったなあ。噂で、学年でも評判の美人にアプローチして玉砕したって
話聞いたなあ。ふふっ、可哀想。
それにしても、富谷って今は彼女いないのかなあ?
高校の時もまあまあかっこよかったけど、
今は大人っぽくなって違うかっこよさが出てきてる。
ちょっと素敵だったなあ。
もし、私が普通の女の子だったら、恋しちゃったかも。
彼女いないんだったら絶対立候補したんだろうな。
でも、私は無理ね。普通の女の子じゃないんだもん。
一生、独身で過ごすんだ。恋愛もだめっ。周りの人を傷つけるかもしれないし。」
そういいながら、優亜はちょっと寂しい顔をした。
でも、すぐ顔つきが変わる。
「いいの。自分で決めた道なんだもん。
恋愛や結婚ができなくたっていいんだ。」
優亜は強い意志を自分で確認した。
「あしたは、いろいろ聞かれるかもしれないなあ。でも、ちゃんと自分の人生観やスタンスを
話そう。それで、友達として付き合ってもらえるなら、いいなあ。
同じ趣味の友達って貴重だもん。
女の子の友達とはちがう話ができるってやっぱ大事。
私、体も戸籍も女の子になったし、可愛いファッションや、メイクとか大好きだけど、
スポーツ観戦とか、音楽とか、漫画とかでは男性と行動したほうが楽しい場合がある。
男の子の友達がいるとやっぱ楽しいっ。友達になれるといいなあっ。
でも、富谷に彼女がいたら、それは無理・・・ね。」
一方、浩史の方も電話を切ったあと、考え込んでしまった。
(とんでもなく、可愛い女の子と知り合いになれて、ウキウキしてみれば、
やっぱり落とし穴があったか。
まさか、同級生の男子だったとはな。
でも、ちゃんと女性として就職して、仕事をしてるみたいだから、
性転換して女性の体になってるんだよな。
たぶん、戸籍も変えているのか?
でも、あの姿と声じゃ元男って考えもしないよな。
そういえば、楓の情報では彼氏が名古屋にいるっていうことだったな?
そいつは、優亜の正体を知っているのかなあ?
それとも知らないまま付き合っているのかな?
というか、そもそも、彼氏がいるって本当か?
うーん、いっぱい聴きたいことが出てきた。
とにかく、明日、いろいろ確認してみよう。
それでだ。
確認した後、俺はあいつとどういう付き合いをすればいいんだ?
難しいなあ。
元男ってわかっちゃうと、付き合いずらい。
でも、可愛いし、趣味が合うし、友達としてはいいよなあ〜。
同じ趣味って、同性の男でもなかなかいないからなあ〜っ。
昨日着ていた服、似合っていたな。髪もロングで好みのタイプだった。
メイクもばっちりキマっていたけど、ナチュラルで清楚なのがよかったなあ。
可愛いから、キスくらいしてもいいかな?
だめだだめだっ!遊びでそんなことしちゃだめだ。
あいつの人格を無視するようなことになる。
でも、彼氏がいるのなら、そんなに仲良くできないな。
あんなに綺麗で可愛いんだから、男は手放さないだろうな。
元男って言っても、そこらへんの女子より全然素敵だからなあ。
でも、彼氏がいなかったら・・・
どこまで仲良くしていいんだ。
距離感がむずかしいっ。
元男となると、恋人とか結婚とかは考えられない・・・と思う。
とにかく、明日会えば、わかるんだ。これ以上考えるのはよそう。)
浩史は昨日買った小説を読むことにした。
ニューハーフと呼ばれる人については、テレビやネットでチェックしますし、
実際に飲み屋さんで会ったりします。
けっこう大柄な人は多いし(男性の平均身長は170センチを超えているのですから、普通の男性がニューハーフになれば、大柄な女性になります。)、声が男性のままっていう人も多いのですが、
たまに、小柄で、声も完全女の子っていう可愛い方がいるんですよね。
しかも照れたり、恥ずかしがったりする顔を見たりすると、
こりゃ、男性はたまらないなあって思ってしまいます。
そういうニューハーフの方をみると、私の創作意欲は高まります。
「リアルにこんな子がいるんだ!可愛いっ。」
貴重な小説のモデルはこうやってみつけていきます。