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最終話 祝福

ついに最終回です。最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。

優亜もよろこんでいると思います。

そして、プロポーズから2週間後の土曜日、優亜と浩史は、名古屋の優亜の実家を訪れていた。


浩史の優亜を嫁に欲しいという申し出はもちろんすぐ受け入れられる。

優亜の両親は、涙を流しながら浩史に感謝した。

そして、浩史が実に好青年であったことにも驚き、

優亜が女性になった意味があったと大いに喜ぶ。


両親は、優亜の性転換を許したことについて、

正しい判断だったか時々悩んでいるようだったのだ。

その悩みはもう無用になったと心の底から喜んでいた。


堅い話が終わると、歓迎会に移る。


優亜と浩史、優亜の両親、優亜の兄夫婦、そして兄夫婦の幼い子供

(男の子と女の子一人づつ)がそろい、話が弾んだ。

ちなみにちびっこたちは5歳と3歳だが、優亜のことはただの叔母としての認識しかない。

幼いので、綺麗な女の人と思っているだけである。


優亜の父、雄治が嬉しそうに浩史に酒を注ぐ。


「浩史君、本当にありがとう。

僕は、こんな日が来るとは思わなかった。

優亜の人生はいばらの道だとずっと思ってたんだ。

役所に就職が決まっても、

いつ問題になるかと不安で仕方なかった。

1日だって、安心したことはなかったんだよ。」


母親の、奈々もしみじみと言う。


「優亜には普通の恋愛とか結婚とか無理だと思ってたの。

本人も一生一人で生きて行くんだなんて言うのが口癖だったし。


あとね。優亜は綺麗になっちゃったから、

変な男の人に付きまとわれる可能性もあるんじゃないかなあって心配もあったの。


そしたら、高校のイケメン同級生が旦那様になってくれるなんて、本当に素敵。


安心してお嫁に出せます。


それにしても

本当に、優亜でよかったの?」


「ちょっと、おかあさんっ!

ひどいよおっ。」


「ごめんね。優亜。

でも、浩史さん、すごく感じがいいから、モテるんじゃないかと思って。」


「いやいや、そんなにもてませんよ。

あんまり器用なほうじゃないので。


でも、優亜さんに結婚を申し込むにあたっては悩んだんですよ。

優亜さんが背負っているものをいっしょに支えて行くことができるか?


考えて考えて、また、考えて、

そして、考えて・・・・


その上で一緒に人生を歩いていきたいと思ったんです。

いろいろ考えはあるでしょうけど、


僕にとって、優亜は大好きな女性であり、

それ以外の何物でもないって

たどり着きました。


だから、今、僕は・・・幸せなんです。」


「うん・・・そうなのね。

私、今、優亜を生んで本当によかったと思ってる。

ありがとう。」



優亜の兄、康太もうれしそうだった。


「僕は、こんなに男前の弟ができて、すごくうれしいよっ。

優亜をよろしくっ。」


「どうせ、私は、男前の弟にはなれませんでしたからねっ。」

優亜が茶化すように発言するが、

康太はスルーして、話を続ける。


「たまには名古屋に遊びに来て、酒でも一緒に飲んでくれ。

俺が優亜と過ごした青春時代の話をいっぱいするから。」


「ああっ、お兄ちゃん、だめよっ。

女性化する上で、恥ずかしい話いっぱいあるんだから。」


そこで、康太の妻の友美が会話に入ってきた。


「そういえば、私、優ちゃんが裕太くんの時からの知り合いなの。

康太と幼馴染で、その関係で優ちゃんとずっと仲良し。


なんて可愛い子なの!ってずっと思ってた。


こんな美人の優ちゃんが幸せになれないなんて、

そんなわけないって思ってた。


あ、ありがとう。う、ううっ。」


友美はまた泣き出してしまった。

よっぽど優亜のことを心配していたようである。


「友美さん、ありがとうっ。」

優亜も涙ぐみながら友美を抱きしめる。


それを見ながら、両親も再び涙ぐんだ。


(ああ、来てよかった。優亜の家族って、うちの家族と同じであったかい。

性転換をしてしまった次男にせいいっぱいのサポートをしてきたんだろうな。

その人生をずっと心配してたんだ。


この人たちとなら、うまくやっていけそうだ。)



そのあとも、話は夜遅くまで続き、いろいろと盛り上がった。


浩史は、知らなかった優亜の女性化への道のりの話をいっぱい聞かせてもらう。


優亜の家族は、優亜と浩史の馴れ初めや、浩史が妹の楓を通じて知った市役所でのエピソードを教えてもらう。


話はつきなかった。

結局、今後、いくらでも続きを話すことができるということで、おひらきとなった。


最後、浩史は優亜の両親、兄夫婦と堅い握手を交わす。


「優亜をよろしく頼む。」


優亜の父親の声は真剣だった。

その声に絶対応えなければいけないと思う浩史だった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



そして、一週間後。



二人は、二人が青春時代を過ごした思い出の高校の校舎を訪れていた。


一応、学校の受付で事務員に浩史がOBであることを説明し、名前と住所を記入した上で、

中にいれてもらう。(優亜は姿形が変わっているので、OBとは言えず、浩史の婚約者としての

立場を説明した。)


校舎の中をぶらつきながら、優亜がつぶやいた。


「ふふふっ。私、ここにくると、男の子だったこと思い出しちゃう。


本当は男の子だったこと忘れたくて、なるべく思い出さないようにしてたけど、


なんか、結婚が決まって、最近は思い出すのが楽しくなっちゃった。」



「そうだなあ。君と出会った、大事な高校時代だ。


お互いに思い出を大切にしよう。


それにしても、卒業して、10年たってないから、そんなに変わってないなあ。」


二人ともなつかしい校舎内をキョロキョロしながら歩いていく。



二人が高校時代一緒に過ごした教室には5分ほどで到着した。


中に入った二人は、よく二人が漫画やアニメの情報交換をした教室の場所に行く。

窓側の端っこのポイントだった。


「ここだねっ。」


「うん、ここだ。」


「あれ(共通の趣味)があったから、私たち、繋がったんだ。」


「うん、そうだ。

当時は・・・

まさか、こういう形になって人生を一緒に過ごすことになるとは思わなかったよな。



でも、運命だった。」


    

「そう考えると、人との関わりって、後になってみないとわからないことがあるね。」



「うん、再会したときだって、君がすぐカミングアウトしちゃうし、恋愛はしない宣言しちゃうし

俺、諦めから始まった付き合いだったと思ってる。とりあえず、友達でいようって感じの。」



「そうだね。私も、とりあえず友達でいようと思った。」


「俺たちって、最初から諦めていたからうまくいったんじゃないかなあ?

余裕をもって、接することができたからこそ、お互いをよく見れたような気がする。」


「そうね。マイナスからのスタートで、最初に私がダメって言いながらの付き合いだったから、

うまくいったのかも。」


「優亜、俺、誓うよ。

諦めから始まった付き合いだけど、なんとかここまでたどり着いた。

もう離さない。君と一緒に歩いていく。


俺たちは普通のカップルより何倍も悩んでここまで来たんだ。

もう怖いものはない。」



「うん、私も誓う。


どんな困難があっても二人で乗り越えよう。」



出会った場所・・・思い出の教室の中で、二人はお互いを抱きしめあう。


教室に感謝をこめながら・・・








     

   




次の作品はもう始めています。「親友の変化についていけないっ!〜TS女子高生シリーズ4〜」です。今日からスタートしました。よろしければ読んでくださいね。本日2話まで発表しました。

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[良い点] 初めて感想を書きました。何気に目にした作品が気になり24部分一気に読ませて頂きました。高校の元同級生、妹の先輩、性別違和がきちんと表現されていたと思います。でもこの作品は4年前に書かれたも…
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