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第2話 まさかの同一人物か?

「お兄ちゃん!いつまで寝てるの?土曜日だからといって、これじゃダメダメだよっ!

起きて活動しようよっ!」


浩史が自分の部屋で、眠そうに目を開ける。

妹のかえでが起こしに来なければ、まだ寝続けていただろう。

昨夜は遅く帰ってきたので、なかなか目覚めなかったのだ。

休みの日でも早く起きるタイプの浩史なのだが、昨夜の酒量はいつもより多かった。


(楽しかったからなあっ♪

あの子、超可愛かった。)


「お兄ちゃん、何ニヤニヤしているの。

私が可愛すぎて、うれしいの?」


「何言ってるんだ?

ちょっとなっ。」


「何かいいことあったんだ、教えてっ!」


「えっ、いいことなんかないよ。よく眠れて気持ち良かったと思っただけだ。」


「ふーん、つまんない。」


浩史の妹の楓はお兄ちゃんっ子だ。

ブラコンと言ってもいい。

兄が大好きで、

浩史の私生活にけっこう関わってくる。

でも、兄にべったりというわけではない。

ちゃんと、彼氏がいる。大学生時代から付き合っている彼氏がいて、就職して3年くらいしたら、結婚しようということになってるようだ。親も容認している。


そんな兄大好きな楓には、やきもきしていることがある。

それは、兄に彼女がいないことだ。

学生時代、バドミントン部で活躍していたし、容姿も中の上で、背は175センチと平均以上。

性格は優しい。特に楓にはめちゃめちゃ優しかった。


楓の友達にも評判は良く、モテるタイプであることは事実であった。


でも彼女ができない。

なぜか、恋愛がうまくいかなかった。


理由は好みがけっこううるさいことだった。

細身で、可愛い系ファッションの女性が好きなのだが、どういうわけかそういう女性との出会いはなかった。


皮肉なことに楓がそのタイプで、楓としては嬉しかったが、楓の友達にはそういうタイプはいないのである。

だから、兄に紹介することができなかった。


また、兄はアニメや漫画が好きで、ちょっとオタクっぽいところがあった。

スポーツマンで、さまざまなスポーツをこなす男っぽいところもあるのだが、アニメや漫画の話に

なると夢中になるので、その姿を見て、引いてしまう女子も多かった。


「うーん、それでも、なんとかお兄ちゃんにいい彼女をみつけないと。」

楓は、密かに兄の恋愛相手というか、結婚相手を探すことに使命を感じていたのだった。



さて、浩史は目を覚ましたあと、顔を洗って、ダイニングに向かう。

そこでは、楓が朝食の準備をしていた。


「ちゃんと、食事は食べてね。用意したんだから。」


二人の両親はすでに出かけており、楓だけが家にいた。


「いつも悪いなあっ。東京で一人暮らしをしているときは朝食は食べなかったよ。」


「だめだよっ。朝は食べなきゃ。

早く、お嫁さんもらいなよっ。」


「よけいなお世話だ。

それに、嫁さんもらっても、今時は家事分担だから、

嫁さんが料理作るとは限らないぞ。」


「そっか。

そうかもねー。」


「あっ、脱線しちゃってごめん。

朝食、サンキュ。」


「うんっ。」


浩史が朝食をとっている間、楓は向かい側に座り、

コーヒーを飲みながら、ファッション雑誌を読んでいた。


兄とおしゃべりをしたかったのだ。


「コーヒーお代わり欲しかったら言ってね。」


「うん、ありがとう。

ところで、あのさっ、

楓が勤めている市役所って職員どのくらいいるんだ?」


「一応、地方の中心都市だから、けっこういるよ。2000人くらいいるんじゃないかな?

でも、分庁舎がけっこうあるから、私のいる建物は1000人くらいかも。何でそんなこと聴くの?」


「うーん、そんなにいるんじゃわかんないと思うけど、「優亜」って名前の女性職員知らないかな?

苗字はわからないんだけど。」


「ええーっ!優亜さんっ?佐藤優亜さん?

何でお兄ちゃん、優亜さんのこと知ってるの?」


「えっ、優亜さんって・・・

その人、市役所で有名なのか?

それとも、楓と同じ部署なのか?

俺は・・・

ちょっとだけ知っているくらいだ。

苗字も知らないんだからな。

まあ、知っている理由は

秘密だ。」


「ふうーん、怪しいっ。

合コンで知り合ったの?

でも、優亜さんなら合コンとか絶対いきそうもないし・・・」


「佐藤っていうのか?苗字は?」


「うん、私の知る限り、優亜さんっていえば、佐藤優亜さん。

市役所に入って3年目で、綺麗で、可愛くて、すごく有名。っていうか超有名。

市役所のアイドル的存在。

私、憧れていて、仲良くなりたいなあ〜っていつも思ってるんだ。


優亜さん、すっごく、男の人にモテるよっ。

でも、誰も相手にされてないのっ。

噂によると、地元の愛知県に彼氏がいるって話だけど、詳しいことはわかんない。」



「佐藤優亜? 佐藤優亜・・・はっ!」


ぶつぶつ言い出した、浩史は突然雷に打たれたようにあることを思いつく。


「ま、まさかっ!」


「どうしたの?お兄ちゃん!」


浩史は妹に叫んだ。


「わりいっ、ちょっと用事思い出した。部屋に戻るから、食べたものの片付け頼むっ!」


そう言って浩史は自分の部屋に向かって駆け出していた。


「ちょっと、お兄ちゃん!

何で、優亜さんを知ってるの?もーおっ!」


部屋に飛び込んだ浩史は、本棚を必死に探す。そして、見つける。


「あった!高校の時の卒業アルバム!」


自分のクラスを必死に探したあと、指である人物を探す。


「やっぱりっ!」


彼が指をさした写真には「佐藤裕太」と印刷されていた。

もちろん男性である。制服も男子の制服だ。

でも、とても可愛い顔だった。男子としては、やや長めの髪の毛であり、

名前の表示と制服という判断材料がなければ、女子と思うのが当然と言える容姿だった。


「確かに、俺、こいつとアニメや漫画の話をよくしていた。

小さくて、細くて、華奢で、女の子みたいな奴だった。

クラスの女子は可愛い可愛いって小動物みたいに扱ってたよな。

俺も二人っきりで話すと変な気分になったことあった。


それにしても、佐藤裕太と佐藤優亜。

まさかの同一人物か?

どういうことだっ?」


昨夜、優亜は、家庭裁判所に申請して名前を変えたと言っていた。

そして、それが、自分のことを知るためのヒントになると言っていた。


「もし、仮に性同一性障害ということなら、名前を変えることができるって、ニューハーフのインタビューで聴いたことがある。あいつ、ニューハーフなのか?性転換手術をして、女になっちゃったのか?あんなに美人で可愛いのに、元男性なのか?」


ぶつぶつ独り言を続ける浩史は


「でも、裕太と優亜って、出来過ぎるくらい似ている。男性名のイメージを残して、女性名を作ったとしか言いようがない。よし、確かめてみよう!朝と言っても、もう10時だ。電話してもいいだろっ。」


浩史はスマホで、登録したばかりの電話番号を呼び出す。

そして、タップした。

数回のコールで、昨日聴いた可愛らしい女性の声が聞こえてきた。


「はい、優亜です。


きのうはお疲れ様♡」


「あっ、おれっ、富谷だっ。

きのうはどーも。


あのさっ、君のことがわかった!・・・と思う。

だから、電話した。今、大丈夫か?」


「えっ、もうわかったの?

うそーっ!」


「妹に聞いたら、君の名字が佐藤ってことがわかって、それでピンときた。」


「ううっ・・・そっかー。

妹さん、市役所勤務って言ってたもんね。

なるほど・・・。

名字さえわかっちゃえば、連想・・・できるかあ・・・


絶対わからないと思ってたけど、

妹さんの存在を甘くみてた。」


「き、君は3年の時の同級生の佐藤?・・・なのか?


とても、・・・信じられないけど。


もし、間違ってたらごめんっ!

あまりにもすごい話だから口に出していいか

・・・ちょっとは悩んだんだけど。」



しばらく優亜は黙っていた。

その沈黙に浩史は、耐えるしかなかった。


「・・・・・・うーん・・・


あたり・・・。


しかたないかなあ・・・。


私うそつけないよお・・・。


・・・久しぶり、富谷っ!」


その瞬間、浩史の脳の中では、「佐藤」「富谷」と呼び合う高校時代の教室が蘇った。

同じ、小説を読んで盛り上がったその時の会話が昨日のように思い出された。


「やっぱり、そうなのか?


いったい何が・・・あったんだ?


いろいろ聴きたくなった!

これから会えるか?」



「そ、そうだよね。


うーん、今日は無理だけど、日曜ならいいよ。

私がこうなったこと知りたいんでしょ?


他人に聞かれたら困るから、ウチに来てくれる?

住所教えるから。」


「車で行くよ。一緒にドライブしないか?

女性の家にいきなり入るのはちょっと抵抗ある。

車の中なら、秘密のことを話せるだろっ?

迎えに行くよ。」


「なるほど、車の中ねっ。それなら、張り切って部屋を掃除しないで済む。

ただし、ドライブするなら、知っている人がいないところがいいな。」


「じゃっ、車飛ばして、東京まで行くかっ。俺、春まで東京にいたから、土地勘あるぞ。」


「うん、東京なら大丈夫かなっ。任せる。住所と迎えに来て欲しい時間は後でメールで送るね。」


「了解。」


電話を切った浩史は、

「何か、これってデートの誘いをしちゃったみたいだな。

いや、あいつの謎を解くには会って、聴かないと。」

と自分の行動に理屈をつけた。







午後にもう一話アップする予定です。

よろしくです。

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