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第13話 すみれの正体

千葉の超有名遊園地でのデートは、浩史にとって、楽しいものだった。


真面目で、おとなしそうというイメージがあったすみれは、デートの最中、いろいろな顔をみせた。


具体的には、ちょっとしたワガママを言ったり、すねたり、扱いに苦労する女性特有の表情を見せた。

食べ物の好き嫌いは激しく、その点にも驚いた。


でも、浩史にとって、それはリアルの女性が、ありのままを好きな相手に見せるシーンだとよく解釈した。


(デートってこういうものだよな。いちゃいちゃするだけじゃなくて、手のかかる彼女に振り回されながら、ちょっとしたケンカもしながら、1日過ごす。これがリアルな恋人気分にちがいない。)


すみれは男心が分かるみたいで、ところどころ、甘ったれてきたり、すごく嬉しそうな顔をしたりするので

嫌な雰囲気になりそうになっても、浩史は全てを許してしまうことができた。


まあ、浩史が手玉に取られていたのかも知れなかった。



一方、浩史がデートを満喫していた時間、妹の楓は、思い立ち、高校時代の友人に電話をしていた。


「朋花、あ、ひさしぶりーっ。

元気だった?


えっ?私の近況?

うん、彼氏とはうまくいってる。

3年くらいしたら結婚するつもりー。

そっちは、和也とはどう?

また、喧嘩したの?

年中行事ねーっ。

しばらく口きかないんだ。

また、向こうから謝ってくるはずなの?

油断しないようにね。


あ、そうそう、朋花って、一コ上の有坂すみれっていう人知ってる?

そう、バドミントン部にいた人。


えっ、何でって?


うちの兄貴がその人と部活のOB会で出会って、なんか意識しているみたいだからさ。


・・・・・・・・・・


ええっ、うそっ!そんな人なの!!


・・・・・・たいへん!


わかった。ありがとう。教えてくれて。」



楓は呆然としてしまった。


有坂すみれの正体は、浩史たちの世代が卒業したあとの世代しか知らないものだった。



さて、浩史とすみれの話にもどる。

時間は夕方である。

浩史は愛車で、すみれを自宅に送る途中であった。

ちいさな喧嘩みたいなことをしながら、恋人みたいに仲良くすごしたことについて

浩史は満足だった。

(この子と付き合おうかな?

まじめそうだし。好みのタイプではないけど、確かに可愛いし。

でも、きょうは告白は早いなあっ。

もう一度誘って、いい雰囲気になったら、交際申し込もうかなあ。)


「あのさ、また君のこと誘っていいかなあ。

迷惑でなければ。」


「ふふっ。富谷先輩って、真面目ですね。

すごく誠意があるって感じです。

そこが魅力かな。

いいですよ。誘ってくださいっ。

楽しみにしています。」


「じゃあ映画を観に行こうっ。

来週は土曜日どうかな?」


「2週連続ですね。うん、いいです。うれしいっ。」


恥じらいのある顔を垣間見て、浩史は、


(もう、交際申し込んでもいいんじゃないか?

完全OKという気がする。

でも、来週にするか。

なんか、きょうは早い気がする。)


そして、浩史はすみれが一人暮らしをしているというアパートの前に着く。


「きょうは楽しかった。じゃあ、また来週。」

浩史がすみれに言うと、

「もし、よければ、私の部屋に上がっていきません?

お茶くらいご馳走しますよ。

運転疲れたと思うから、休んだほうがいいですよっ。」


『えっ?(これは、どういうことだ。誘ってるのか?この流れだと、部屋ですることって、決まってるぞ。

いいのか?でも、据え膳食わずは男の恥という話もある。このまま誘いに乗るべきか?)

えーっと」


浩史がそうしようかな?とややあいまいに声を出そうとしたその時だった。


アパートの一室をみたすみれが


「あっ、だめっ。お母さんが来てる!」と驚くような声をだした。

部屋の電気がついていることに気づき、わかったようだった。


「えっ。」


「ごめんなさい。部屋にお母さんが遊びに来てる。

きょうは部屋に上がってもらうわけにいかないや。

またの機会ということにしてください。

すみません。」


「ああ、いいよ。じゃあ、また来週。」


すみれを下ろして、車を走らせる浩史。


「なんか、ドキドキして損した。スケベなこと考えちゃったから、気持ちが収まらないよ。

今、東京にいたら、キャバクラとか言っちゃうよなあ。

お母さんが来てるなんて言われたら、どうにもならないなあ。」


ハシゴを外されたような気分の浩史は、中途ハンパな気持ちで悶々とした。



話は、楓の方に戻る。時間はもう夜となっていた。


楓は、兄がデートしている有坂すみれの高校時代の噂について、教えてもらったことを

頭の中で整理していた。


楓が聞いた情報は以下のようなものだった。


有坂すみれは、高校2年の時から、男女関係で非常にだらしのない生徒で有名であった。

全生徒が知っていたわけではない。

楓の友人の朋花みたいに運動部に入っていた生徒を中心に情報は入っていた。

楓は全く知らなかった。


有坂すみれは、バドミントン部では男子生徒と問題はおこさなかった。

でも、部活の外ではとんでもなかった。

一見真面目そうであるのだが、いい男と認めると、次々と誘惑して、体の関係をもったという。

同時に数名の男子生徒とそういう関係になるので、男子同士で喧嘩になることもあったし、

恋人を盗られた女子生徒から平手打ちされるなど、トラブルの震源地となっていた。

同じ高校だけでなく、他校の生徒や、社会人男性、大学生ともそういう関係となり、

高校2年、3年で数えきれないほど男性とセックスしていたとのことだ。


そんな人間だから、一部の人間からは敬遠されていたのだが、

部活と授業態度はまじめであり、生徒から教師への密告などもなく、ごく普通に高校生活を送り、

卒業していったという。

彼女に振り回された、男子や女子にはかなり恨まれたようだったが、

本人は全く平気のようだった。

自分のしたいように生きるという変人だった。


まあ、他人の彼氏を奪うとか、複数の男性と同時期にセックスするというのは倫理的には問題あるが、

結婚している人間とはしていないわけで、裁判になるような話ではなかった。


ただし、純粋な気持ちをもつ高校生の心をズタズタにしたことは間違いなかった。


楓は「どうしようっ?お兄ちゃんに話をするべきかなあ?でも、高校時代の話だし、今でもそうかはわからないし。

いや、今はまともになってたとしても、過去にそういうことをしていたというのは許せない。

お兄ちゃんの彼女になってほしくない。

なんとか、付き合わないようにうまく話をすすめないと。」



そんな時に、浩史が帰ってきた。


「ただいまーっ。」


「あっ、おかえりなさいっ。

(もしかして、すみれさんともう一線越えちゃったかな?)」


「さすがに、長時間運転して疲れたよ。」


「どうだった?もしかして、キスとかしちゃった?」

楓は思わず直球で聴いてしまった。でも(セックスしちゃった?)って聞くよりはいいと思った。


「おいおい、まだ交際しているわけじゃないぞ。手もつないでないよ。

でも、いい雰囲気だった。来週も映画に一緒に行くんだ。

もし、ムードがもりあがったら、交際申し込むかも。そんなところだ。」


「そ、そう?(意外とまともな展開だ。これじゃ、突っ込めない。

もし、すみれって人が改心して、まともな恋愛をしようとしているなら、変なことは言えない。

ちょっと様子見かなあ。)」


さて、さて、すみれの方である。


すみれは、部屋の中で、ビールを飲みながら、タバコをすぱすぱふかしていた。


すみれの前には、いかつい人相の悪そうな男が座っている。

建設会社の作業服を着ているので、まともな職業にはついているようであったが、

腕っ節を自慢するような感じの男だった。


すみれが言う。


「あのさあっ。ウチに来る時は、事前にメールしてって言ってるじゃない。

買い物から帰ってきて、びっくりしたじゃない。」


「わりいっ。事前にメールするって、めんどくさくってな。

お前が一刻もほしくってさ。

それにしても、きょうはおしゃれしてるな。

いつもより綺麗だぞ。」


「きょうは東京に買い物行ったからね。

それなりメイクしたよ。」


「まさか男と行ってないよな。

おまえ、すぐ男をみつけるからな。

ここ2ヶ月くらいはおとなしかったけど。」


「今はおとなしいよっ。

ケンちゃんだけだよ。

エッチしてるのは。」


(そう、きょう会った富谷先輩とは手もつないでないし。

嘘ついてない。

でも、家に上がってもらってたら、やってたかもしれないな。)


「ふーん、ならいいけどよ。」


すみれはどうやら、高校時代のままのキャラクターのようだった。





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