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第12話 高校のバドミントン部

とある土曜日、

浩史は地元の町の駅前の横丁をちょっと走り気味に歩いていた。


きょうは、高校のバドミントン部の飲み会だ。

浩史は、ネットで調べ物をしていたら、家を出る時間が遅くなってしまい、遅刻してしまった。

もう、飲み会スタート時間から20分が経過している。

「どうせ男ばっかだから、遅れてもいいか。」

と苦笑しているが、歩く速度は緩めない。

高校時代苦楽をともにした仲間との飲み会はやはり楽しい。

待たせるわけにはいかないと考える。


この飲み会では、

一緒にインターハイを目指した、同学年の部活仲間数名が集まる。

不定期だが、3、4ヶ月に1回、誰かが音頭をとり、高校があった駅近くの居酒屋を予約して、

飲み会を行っている。


同年代の部活メンバーは

年齢的に全員就職している。

地元を離れ遠くで働いている者もいたが、

東京及び地元近辺で仕事している仲間は多く、企画をすれば、数名は集まるのだ。


バドミントン部だから女子もいるのだが、最近集まるのは男子のみ。

大学時代は女子も結構来たのが、20代半ばになると、男子ばっかだった。

きょうも、常連の男子メンバー5人くらいになるかなあと浩史は予測していた。


居酒屋に到着し、店員に案内され、定位置となっている個室に入る。


「わりいっ、30分近く遅れちゃった。ごめんっ!」


浩史は、謝ることばを重ねて、メンバーに謝罪した。


「いいよっ、この集まりは気を使うことないって。

もう飲んでるから、とにかく座れよ。」


常連の一人で、同期の部長だった淡島が気にするなという感じで声をかけてくれた。

彼のどっしりとした余裕ある態度は高校時代から変わらない。緊張感をもたせながらも、

決して相手を追い込まないリーダーシップを持っている男だった。


「よし、ここに座れ。」


淡島が指定したのは淡島の隣のスペースだった。

そして、その横には女性が座っていた。

真面目そうな、やや地味な女性だった。ただし、顔立ちは整っていて、浩史の好みではあった。

誰だかわからなかったかったが、

浩史は軽く会釈をして、空いているスペースに座る。

(久々だなあ。バトミントン部の飲み会に女子が来るなんて。

誰だろう?)

乾杯をしたあと、淡島が浩史の横の女性を紹介する。


「浩史、覚えてるか?この子。

俺たちが3年の時の1年の有坂だ。有坂すみれだ。

俺は、可愛い子が入ってきたなあと思ったんだ。当時。

でも、俺には彼女いたから、手をださなかったけどなあ。」


向かいの席に座っていた園田が付け加えた。

「有坂は、1年の時、浩史に憧れていたみたいだぞ。

おまえ、覚えてるか?」


浩史は記憶の彼方をさぐる。

そこで、やっと思い出した。


「ああっ、有坂さんね。思い出した。

確か2年の草加が可愛いって夢中になってたんだっけ。

でも、相手にされないって落ち込んでたな。」


「そうそう。その原因が、浩史、おまえなんだぞ。色男はつらいよなあっ。


実は、俺が、有坂を誘ったんだ。

この間、偶然、駅の近くで出会ってさ。


同期で飲み会があるんだって話をしたら、

面白そうって言うから誘っちゃったよ。」


そこで、斜め向かいに座っていた堂島が、付け加えた。

「で、おまえが来る前に、有坂が言うんだよ。

富谷先輩は来るんですか?

実は、高校1年の時憧れてたんですって。


どうだ、確かおまえ彼女いないだろっ?

有坂とかどうだ?」


「えっ?どうだって言われても。

なんとも言えないよ。

よく知らないし。」


そして、時間がすすみ、みんな酔っ払ってくる。


ほんのり、顔を赤くした有坂すみれは、


浩史に上目遣いで声をかけてくる。

「先輩、1年生の時好きだったんですよ。

気がつきませんでしたか?


先輩はちょっと派手めで、いかにも可愛いって子好きでしたよね。

確か3年生で一番人気のあった女子を狙っていたんですよね。」


「うわーっ。そんなこと知ってたのか!

恥ずかしいなあ。」


「私はどちらかというと地味なキャラだから、先輩気づかなかったんですよ。」


「そっかなー。」

(確かにそうだ。おれは、髪の毛が長くて、元気がよくて、

明るい感じのアイドルっぽい子が好きだった。

この有坂はたしかに可愛い感じだけど、髪の毛はボブカットくらいで

そんなに長くない。

それから、陽気なタイプとは言えないな。

だからだ・・・。


今でもこの子の髪型、地味だなあ。

まあ、可愛いことは可愛いけど。)


そして、楽しい飲み会も終わる。


浩史はまだ飲み足りなかったが、ほかのメンバーは翌日に用事が入っている人間が多く、

二次会はなしということになった。


「じゃあ、解散。

また、2ヶ月くらいたったら、飲もうや。」

キャブテンだった淡島の声で、それぞれちりじりに別れた。


「それじゃ、帰るかな。」

と独り言をいいながら、浩史は他のメンバーと違う方向に歩き出した。


その時だった。

浩史の着ていたシャツが引っ張られた。


「えっ?」


と振り返ると、そこには有坂すみれがニコニコ笑って立っていた。


「富谷先輩!高校時代に私の気持ちに気づかなかった罰です。

私ともう一軒飲みましょう。

ねっ、いいでしょう?」


「あ、いいけど・・・」


「やったー。行きましょう。」



そして、違う居酒屋で、二人は向き合う。

個室系の居酒屋である。

二人きりで、まったり飲み始めた。


「富谷先輩って、彼女いないって、本当ですか?」


「そう言われると情けないけど、本当だよ。」



「うわーっ、もったいない。


それじゃ、今度私とデートしてくださいっ!

千葉の超有名な遊園地に一緒に行ってくださいっ!」


(おっ、この子もフリーなのか?

好みのタイプじゃないけど、可愛いし、いいかな。

それにしても、意外に積極的だ。

酔った勢いかな。


よく見ると、スタイルいい。

もしフリーなら、ここは考えるところかも。

とりあえずデートはしてみてもいいな。

まじめな子って感じで、もしかしたら結婚相手にいいかも。)


そこまで考えた浩史は、


「いいよっ。スケジュールが合うなら。」


「やった!じゃあ、アドレスと電話番号交換しましょ。

来週行きましょうよ。」


「えっ、急だな!


うーんと、日曜日なら、なんとかなるかな。」


「じゃあ、日曜日で決まり。」


(なんか、優亜に悪い気もするが、彼女は恋人じゃないし、

本物の彼女ができたら、邪魔しないって言ってた。

問題ないよな。

まあ、とりあえず1回デートするだけだ。


でも、雰囲気よかったら、そのまま付き合っちゃうかもしれないな。)



そして、浩史は、すみれを一人暮らししているアパートまで、送り届け、

自宅に帰ってくる。


早速、優亜にメールした。


<今日、高校時代の部活仲間と飲んだ。

その時に、有坂すみれって2年後輩の女子が来ていて、

盛り上がって、二人で千葉の有名遊園地に行くことになった。

どうなるかわからないけど、一応報告しておく。>



メールをもらった優亜は、

職場関係のイベントで酒席があり、気を使って帰ってきたところだった。

(あーっ、眠い。このままメイクも落とさず、寝てしまいたい。)

と思っていたが、

メールの内容をみて、いっぺんに目が覚めた。


「あーあ、ついに浩史にも春到来かあ〜。

いつかは来ると思ったけど。

残念!


でも、ここ数ヶ月、恋人気分を味わえたからいいかなあ。

あんまり贅沢いっちゃだめだな。

よしっ。」


落ち込みつつもメールを返す。


<やったじゃない。有坂って子は知らないけど、ちょっとときめく話だよね。

いい子だったら、逃がしちゃだめだよ。

デート楽しんでね。応援する。

それから、私のスマホの登録名は裕太にしておいてね。

メールの内容は全部消しとくこと。

とりあえず、こちらからは連絡しないようにします。>



返事を見た浩史は


「応援してくれてるんだあ。

なんか悪い気もするけど。

とにかく、がんばってみるかな。

本物の女性だしな。」


なんとなく、心の奥にひっかかるもがあったが、声を出すことで、納得することができた浩史だった。




そして、デートを約束した朝がやってきた。

朝早く、準備している浩史をみて、妹の楓が声をかける。


「お兄ちゃん、どこに行くの。」


「ちょっと、デートだ。」


「ええっ、優亜さん?」


「違うよ。あの子は友達だ。

きょう会うのは、高校時代の2コ後輩の女の子だ。」


「誰?」


「有坂すみれって子。」


「ふうーん。私、知らないや。私の1年上だよね。

へえーっ。そうなの。

優亜さんに悪くないの?」



「だから、あの子は友達だって。

きょうのことも話してあるんだから。」


「えっ?そうなの?

なんか、納得できないけど。」


「きょう会う子は、まじめそうな子だぞ。

いい子だと思う。

まじめに結婚相手を探している俺のことを考えてくれよ。」


「ううっ。そうだね。でも・・・」


それ以上は話を続けられない楓だった。

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