第11話 ショッピング
季節はもう夏真っ盛りである。
優亜と楓はすっかり仲良しになっていた。
二人は、月曜に休みをとって、日月で一泊二日の東京買い物旅行に来ているところである。
北関東に住んでいる二人にとって、東京は十分日帰り圏内ではあるのだが、ゆっくり2日間かけて、ショッピングやグルメを楽しみたいという欲望を果たしたかった。
楓が20代女性限定の格安プランを東京の高級ホテルで見つけたのも、泊まる理由である。
高級ホテルの高層階に泊まるなんてチャンスは海外旅行にでも行かないとめったにない。
二人は興奮して予約してしまった。
「やっと東京に来れましたね。」
「ごめんね。知り合った当初はすぐ東京にショッピング行こうなんて言ってたけど、結局8月になっちゃたね。微妙にスケジュールが合わなかったね。
もう夏物はバーゲンも終わって、秋物が並ぶ時期になっちゃった。夏物も少しは売っているけど。」
「いいんですよ。今の時期はお店が空いているから。
とりあえず、優亜さんが大好きなお店を紹介してもらえるのが楽しみです。
教えて貰えば、次に一人でもこれますからね。」
「まずは、下着専門店に行く?やすくて、可愛いものいっぱい置いてあるところ知ってるんだ。」
「行きます。優亜さんと同じタイプの下着ほしいっ。」
「じゃあ、行こっ。」
二人は早速、都会のショッピングを始めた。
優亜主導で、いろんな店を回り始める。
まずは下着専門店を3箇所、そして、優亜が大好きなブランドの店を6箇所、バッグ店を2箇所、アクセサリー店を2箇所、ウイッグの店を2箇所と、どんどん歩いて回った。
楓は、優亜の趣味をほとんど受け入れた。
一回、優亜オススメのイートインできるケーキショップで休みをとったが、そのあとは休みなしで歩き回る。
もうショッピングに夢中である。
どの店でも目を輝かせ、優亜のアドバイス通りに買い物をした。
バーゲン時ではないし、秋物をそんなに必要としていなかったため、買いすぎるということはなく、
本当に気に入ったものを二人は購入した。
それでも、けっこう荷物は増え、二人は、4時ごろにホテルにチェックインした。
「優亜さん、大満足です。
優亜さんのファッションの秘密を知りました。
これで、私もいい女になるかも!」
「大げさよっ。でも、バーゲン終わったあとだと、空いていてお店めぐり楽だった。
本当に必要なものだけを選ぶことができたし。
この時期の買い物も悪くないかも。
バーゲンだと、安いっていうことで不必要なものも買っちゃうからね。
ところで、この部屋すごいね。景色はいいし、トイレとかバスルームとかすごい豪華!」
二人は、もうホテルの部屋の中であった。
高層階の一室に案内されたのだが、外資系の高級ホテルの一室は、広くて、おしゃれ。
特に広いバスルームには二人とも感動してしまった。
トイレがバスルームとは別についているのにも感激した。
「さて、お腹すいたね。
こんどはグルメタイムといきましょう。
お店は楓ちゃんにまかせる。」
「はいっ。調べてありますよ。
ネットとグルメ本で調査済みです。
おしゃれな夜を楽しみましょう。」
二人は、再度外出し、東京のおしゃれなディナーへと向かった。
30分後、
二人は高層ビルの高いフロアの夜景が見えるロシア料理店で、ボルシチと
ピロシキに舌鼓をうっていた。
ワインも飲んでいる。
「ロシア料理ってめったに食べる機会ないよね。楓ちゃん、ありがとう。案内してくれて。」
「どういたしまして。私も食べたかったんですよ。
優亜さんが、好き嫌いのない人でよかった。
好き嫌いがあると、お店選び大変になりますから。」
「私は、全然好き嫌いないからね。
それだけは自慢できる。」
「私も!優亜さんと仲良くできてよかった。」
食事の最中、
アルコールを飲んだ勢いで、楓はついに気になっていたことを質問する。
「ところで、優亜さん、名古屋の彼氏とはどうなってるんですか?
なんか、全然、名古屋に帰っている感じないし、別れちゃったんですか?
っていうか、うちのお兄ちゃんと仲がいいじゃないですか?
この間も、いっしょにアニメ声優のイベントに行きましたよね。
お兄ちゃんを選んでくれる気になったのかな?なんて、ちょっと思ったんですよ。」
優亜は
(あっ、そういえば、浩史ったら、楓ちゃんにしゃべっちゃったって言ってたなあ。
もう妹に聴かれると、弱いんだから。
まあ、私の正体までは話してないからいいけど。
さて、どう答えよう。
名古屋の彼氏の話はもう続けるのはやめておこう。)
「楓ちゃん、本当のこというね。」
「はいっ。」
「名古屋には、学生時代付き合っていた人はいたけど、別れた。今は彼氏いないよっ!」
(これは、事実だった。
優亜は3人ほど大学生の時に男子と付き合ったが、みんなすぐ別れている。
優亜は美人だったので、すぐ彼氏をつくることができた。
みんな、けっこうイケメンだった。
でも、時期がくるとみんな別れてしまった。
それは、キスまでしか許せなかったからだ。
というか、性転換した人間ということを打ち明けられなかった結果、
セックスをして本物の女性と違う事実がその段階で露呈することを恐れたからだ。
セックスをするような距離感が来ると、別れを告げるという相手側の男性からみると
実に理不尽なことをしてしまっていた。
優亜は本物の女性として、ふつうに過ごしたいという気持ちが強すぎ、男子とのセックスに踏み切れなかった。
優亜にはちゃんと女性器があり、男性とセックスするための訓練であるダイレーションもしていた。
医師からは男性と性交渉することは問題ないと太鼓判も押されていた。
しかし、怖かった。
一番の理由は、愛液が本物の女性ほどは出ないことだった。
医師によれば、経験豊富な男性でない限りわからないし、ちょっとした隙に、膣内に潤滑用のゼリーを塗り込んでおけば問題ないとの話だったが、
なんか、相手を騙すようで嫌だった。)
楓は驚く。
「そうなんですか!
じゃあ、フリーなんですね。
なら、お兄ちゃんでいいじゃないですか?
お兄ちゃんと付き合ってくださいっ!
お兄ちゃんは私にとって自慢の男性です!」
楓は、よく周りの人間にブラコンとからかわれるのだが、まさにブラコン丸出しで、優亜に迫った。
優亜は、やんわりと回答することにした。
本当のことは言えないし、ここは自分の社会人としてのキャリアの説明をして、煙に巻こうとずる賢い作戦をとることにした。
「楓ちゃん、浩史さんは素敵な男性だと思う。
私にはもったいないくらい。
でもね、私、今、男性と付き合う気がしないの。
仕事で今、充実しているから、恋愛という行為をする気がしないの。
ただ、何年かたてば、気持ちも変わるかもしれないけど。」
「ええーっ。
女の旬は短いんですよ。
それに、二人はお似合いです。
趣味も同じだし。
そりゃ、私には交際を強制する権利はないけど。
ぜひ、ぜひ、考えてくださいね。
考えてみれば、お兄ちゃんが、ヘタレなんだ。
優亜さんを強引に奪えないからだ。
うん、お兄ちゃんをちゃんとさせないと。」
(うっ、楓ちゃんの攻撃の矛先が浩史に向かったよ。
ごめんなさい、浩史。
うまく、かわして、ごまかしてね。)
結局、楓の追求はそこで止まって、別の話題に話は展開していき、
優亜はほっとするのであった。
そして、ホテルに戻り、優亜たちは、バスルームの浴槽にお湯を溜め始めた。
「ホテルの浴槽にお湯を溜められるっていいですね。
疲れ取れそう。」
「うん、すごいねっ。楓ちゃん先にはいっていいよ。私、長風呂するタイプだから、
後にする。」
「ええっ?優亜さんが先でいいです。先輩より先に入るなんて、私できません。
私も長風呂だから、優亜さんが先にはいってください。」
「えっ?いいの?
じゃあっ、お言葉に甘えるとするかな。」
優亜は先に風呂にはいることにした。
そして、15分後くらいだった。
優亜はまず、髪の毛と顔を洗った。
その後、シャワー用の液体ソープで身体中を泡まみれにしている時だった。
ガチャっと音がした。
優亜は驚いてバスルームの入り口をみる。
真っ裸の楓がニコニコしながら入ってきた。
「楓ちゃん、どうしたの?」
「へへっ、優亜さんとお風呂はいりたくなっちゃったんです。
優亜さんの裸も見たかったし。
優亜さん、やっぱりスタイルいい!
服のサイズは私と同じといっても、なんかメリハリがちがう。
おっぱいも素敵。」
「えっ!」
思わず、優亜は丸出しだった乳首周辺を手で覆った。
「ふふっ、見ちゃいましたよ。
きれいな乳輪とかわいい乳首でした。
いいなあ。
私の乳輪はちょっと黒いんです。乳首もちょっと大きいし。」
「そ、そんなことないと思う。」
優亜は自分のを隠しながら、楓の胸を観察した。
確かに、優亜と比べれば、乳輪は色が濃く、乳首も大きいが、気にするほどではない。
標準的な乳房の形状だと思われた。
「そうですか?でも、やっぱり、優亜さんの裸っていいっ!」
楓はそう言いながら、真っ裸で優亜に抱きついてきた。
おっぱいとおっぱいがくっつき、変な気持ちになる優亜であった。
結局、優亜は楓と体の洗いっこすることになってしまった。
そして、浴槽にもいっしょにはいる。
すごく恥ずかしかったが、子供みたいな気分になり、楽しくなった。
楓はレズというのではなく、単純にお風呂を二人で楽しみたかっただけなのである。
まあ、裸を見られても、完全性転換している優亜は全然恐れるものはなかった。
逆に3つ下の若い女性の真っ裸をみることができたのはラッキーと思うようにした。
自分とどう違うか、チェックしてしまったくらいである。
「裸のつきあいっていうのも、いいものね。
楓ちゃんとは、そのうち温泉に行こうかしら。」
「優亜さん、ぜひお願いしますっ。」
ほんとにかわいい子だ。この子が妹だったらなあと思う優亜だった。