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第1話 出会い

初めて描く社会人の物語です。

よろしくお願いします。


まじめな男女の恋愛のお話ですが、女性のほうがTSだったために、簡単にはいかないというお話です。

5月半ば…

連休は過ぎ去り、世の中の社会人は仕事モードを取り戻している。


金曜日の午後8時、富谷浩史とみやひろしは、ぐったりした顔で勤務先の近くの繁華街を歩いていた。

日中に発生した仕事のトラブルをなんとか処理し、帰宅するところである。


勤務先は今住んでいる実家のある駅から40分ほど乗ったところにある。

電車に乗っているうちに県をまたぐ。

隣の県に通っているということになる。


浩史の勤務先は知る人ぞ知る日本を代表する大手企業だ。

浩史は春まで東京の本社にいたが、転勤で北関東の支社に来た。

県は違うが、電車にのれば、実家から通えない距離ではなかったので、通っている。

東京にいた時は一人暮らしであったが、今は実家暮らしだ。

自分の好きなように暮らしていた時に比べ、若干窮屈であるし、通勤時間も伸びたが、

食事と洗濯については楽になった。

また、無駄な金を使わなくなり、貯金できる見込みが出来てきた。


それにしても、仕事はきついと思う。

本社にいた時と変わらない。

連日遅くまで残業が続いている。

クタクタであったが、今日はノー残業デーということで、

早く切り上げることができたのが幸い。


「ノー残業なら5時台に帰れると思ったけど、みんな残ってるんだもんな。みんな、仕事中毒だよ。ちゃんとルール守らなきゃ。」


でも、自分自身も5時過ぎに退社できなかったので、人のことを言える立場にはないのだが・・・。


そんな浩史は、会社の最寄りの駅に近づいた時にふと思いつき、書店に立ち寄ることにした。


「そういえば、あのライトノベル、今日発売じゃないか?」

そう思いついたのだ。


浩史は高校時代から、ある作家のライトノベルを愛読している。


(注:ライトノベルというのは若者向けの小説で、表紙や途中に登場人物の絵(漫画的なイラスト)が

書かれており、漫画の原作的なイメージがあるもの。実際、コミック化されたり、アニメ化されたりする。

作者だけでなく、イラストレーターの力やイメージ力も重視されるジャンル。)


その作家は高校生の恋愛模様や人間関係の難しさを独自の観点から描くのが得意で、かなり人気がある。

中毒性があると言われ、熱狂的なファンがけっこういる。


浩史は、その作家の新作については欠かさず買っていた。

彼も中毒者の一人といってよかった。

今回発売される新作についても発売日をチェックをしていたのだが、ここ1週間ほどは仕事が忙しくて

すっかり忘れていた。

一息ついた週末の今、発売日を思い出したのだ。



ところで、浩史は社会人3年目で26才である。

高校生が主人公である小説を買うのはちょっと恥ずかしいといつも思うのだが、

結局、新作が出ると発売日には買いに行ってしまう。


その作家の作品はコミックやアニメになることが多く、浩史が気に入る要因をもっていた。


浩史はオタクといってよかった。

アニメ、漫画が好きだし、

アニメの原作となるライトノベルが大好きだったのである。

声優も好きだった。

ただし、声優のライブやアニメの映画を観に行くほどではなく、仲間もいなかった。

あくまで、一人で自宅で楽しむレベルで収まっていた。




さて、浩史は駅近くにある、大規模書店に入る。


そして、ライトノベルコーナーに向かうと

離れたところからでも人気作品であるということで新刊は

大量に山積みされていることがわかった。


「あっ、売ってる!よしっ!」


そのコーナーをめざして、足を進める。


そのとき、ふいにその山積みの中から一冊取り出し、

レジに向かおうとしている若い女性の姿が眼に映る。


いかにも仕事帰りといった感じの若い女性だった。

年齢は20代前半かと思われた。

メガネをかけていて、マスクをしているので、顔立ちははっきりわからないのだが、

清楚で可愛らしいファッションとバランスのいいスタイル、流れるような長い髪の毛で、もしかしたら

美人かもしれないと思わせる雰囲気をもっていた。


(わっ、あの子気になるっ。美人かも。

それにしても、あの作品はあんなタイプの女の子が読むようなもんじゃねえぞっ。

確かにあの作家の作品は若者の恋愛を扱っているし、ラブコメ要素があって、

一部の女子の人気を得ているとは思うけど、

オタク系のファンが多いような気がする。


あんな、おしゃれな美人オーラの女が読むのか?)


思わず、その女性をじっと見てしまう浩史だった。

その視線に気づいたのだろう。その女性が立ち止まり浩史の方に顔を向けた。

あっという間に眼が合ってしまった。


(やべっ。眼が合っちゃったよ!どうしよっ!)


「あっ、富谷......くん?」


「えっ!(何で俺の名を知ってる?)」

浩史は立ち尽くした。


「もしかしたら・・・」


そう言いながら、その女性は立ち去ろうとしていたライトノベルのコーナーを振り返った。

そして自分が先ほど本を取り出した山積みから、もう一冊同じ本を取り出すと、

小走りに浩史に近づいてきた。


「ええっ!(何だ?何だ?)」


「この本を買いに来たんでしょ?私と同じはずだもん♪」


「きっ、君っ、誰?」


浩史は間抜けな声を出さざるを得なかった。


「あっ、

私のことわかるわけないかっ。

へへっ。

だいぶ変わっちゃったからね。

ごめんなさい。

うっかりしちゃった。」


その女性は話を続けた。

マスクとメガネで顔がわからなくても、魅力的な雰囲気に吸い込まれそうになる。


「まっ、とにかくはまず清算しましょ。」


二人は、レジに並んで同じ本を購入した。

そして、レジの外側で先に清算を終えたその女性は浩史を待っていた。


浩史は何が起こったのかさっぱりわからないといった顔で女性に近づき、


「うーん、思い出せないんだけど、どこかでお会いしましたっけ?

そのおっ、マスクとってもらえばわかるのかなあ。

(もしかしたら、社会人になってイメージチェンジした知り合いの女の子か?)」


「よくお話をした仲だよ。随分前だけど。

この本の話しもしたいし、よかったら、居酒屋でも行って、おしゃべりしない?

女友達とはこの本の話はできないもんっ。

今日は金曜日だから、明日休みなんじゃない?お仕事によっては違うかもしれないけど…

違ってたらごめんなさい。


あっ、居酒屋に行くのならマスクはそこで取るから。」


「えっ?ええっ?(まさかの女性からのナンパか?)


.......えーっと、構わないけど。」


(誰だろう?

ずいぶん慣れ慣れしいな

ついオッケーしちゃったよ。


いきなり、美人?かもしれない女性に誘われっちゃったよ。

どういうことだ?


飲み屋で、本当に知り合いか確かめないと。

マスクを取った顔もみたいし・・・


でも、待て待てっ。

騙されているのかも。


美人局?

居酒屋経由でいかがわしいところに

誘い込む魂胆か?

用心しないといけないな!


取り敢えず、飲み代はこっち持ちになる可能性が高いから

いいところに行くのはやめよう。


もし、

騙されてないとしたら、

ラッキーかも......。


でも、マスクをとったら残念でしたって可能性も大いにある。

よくある話だ(笑)


浮かれないようにしよう。)


浩史は、書店のすぐそばの個室のあるチェーン店の居酒屋に目をつけた。


(うん、あそこなら、もし全額飲み代もっても大丈夫。)


浩史は


「あの店でいいですか?」と誘ってみる。


「うん。」と

返事があり交渉は成立した。


店に入ると、個室席は空いていた。

席に案内されると、二人はすぐ、生ビールとつまみを何品か注文。

ビールがすぐ運ばれてきて、やっと女性がマスクをとった。

そして、メガネまで外す。


美人だった。それもめったにいないレベルだ。

アイドルとか、女優とか、モデルと言われたら信じてしまう美しさと可愛さだった。

浩史は思わず、その美しさに引き込まれ、ぼーっとした。

(綺麗だっ。そして可愛いっ。好みだっ。.........でも、誰だ?わかんないぞっ)


「乾杯しましょっ♡」


女性の声で我に帰る。


「うん、乾杯っ!」

「乾杯っ」


そのあと会話が復活した。


「で、どなたですか?マスクとメガネをとったら思い出せると思ったけど、わかんないんですけど。」


「ふふっ、無理もないかな。

まだ、教えないっ。自分で思い出して。」


「ええーっ。困ったなあ〜。大学の時?高校の時?中学の時かあ?

それとも就職してすぐ参加した合コン?」


「ふふっ。

富谷くんって合コンにも出てるんだね。

気の毒だから、ちょっとヒント出してあげる。

高校生の時だよ♪それ以上のことは教えない。」


「高校?(こんな可愛い子高校の時の知り合いでいたっけ?いや、いない。もし高校の時の知り合いだとしたら、)もしかしたら、高校卒業して、イメージチェンジした?髪型とか体型とか変わった?」


「うん.......そのとおり......だ...よ。

いろいろ考えてみて。」


浩史の身の回りの女子で、卒業後大きくイメージチェンジをした女子は何人かいた。

イメージが変わるタイプの最たる女子は、

高校時代は真面目でおとなしく、髪の毛はショートカットといったタイプ。

卒業して、ロングヘアになり、派手な服装とメイクになると

全く別人になっているというケースを実際見ている。

目の前の可愛い子もそのタイプか?

でも、思い出せない。

だいたい、こんな芸能人級の可愛くて美人の知り合いなんて記憶にない。


しばらく考えていた浩史だったが、

「降参だ。教えてくれっ。」とギブアップした。


「残念だなあ。教えたいところだけど、今日は教えない。しばらく考えてみて。

一応私の名前は伝えとく。

私の名前は、優亜ゆうあだよっ。優勝の優に亜鉛の亜って書くの。

苗字は教えない。

あっ、優亜っていう名前は本名だけど、高校時代と違う名前だからね。

ちょっと事情があって、家庭裁判所に申請して、名前を変えたんだ。」


「まじですか?」


「まじです。」


「本人の結婚や離婚、親の結婚や離婚で苗字が変わるのはわかるけど、

名前が変わる?どんな事情なんだろう?

それはあんまりヒントにならないなあ。」


「ヒントになると思うよ。

あとでよく考えて。」


「えっ?よくわかんないけど、アドバイスどおり後で考えることにするか。

うーん、他の話しよっか?」


「じゃあ、高校時代の話しよっ。」


高校時代の話は盛り上がった。教師の話、文化祭の話、体育祭の話、付き合っている男女の話、部活や生徒会等で活躍した有名人などことごとく話は共通であった。まちがいなく、同じ時、同じ瞬間を共有した仲間であったことは話をしながら確信せざるを得なかった。


「このライトノベルの作者も富谷くんに教わったんだよ。

私も夢中になっちゃって・・・。未だに好きなんだ。」

優亜は買ったばかりの本をテーブルの上に出して、ペラペラめくった。


「変だなあ。俺って、気に入った漫画とか小説は男にしか勧めないはずなんだけど・・・」

浩史は本の表紙を見ながら、あたらめて考える。

(この作者の作品は売れているから、女の子にも薦めたのかなあ?)

そう思いながらも、大好きな作品なので、浩史は小説に対する想いを話し出してしまった。

「やっぱ、この作者はリアルな高校生の生活や感情を描くのがうまいんだよなあ。男目線も、女目線もリアルで、うまくコミニケーションできない若者の葛藤がすごく表現されているんだ。

でもどんな作品でも不器用ながら前に進もうとする主人公がいるんだよな。

それがいいんだ。」


「うんうん、同感同感。」


結局、二人は小説に対する愛情で意気投合し、次々と話しを続けた。

そして、優亜が浩史同様、アニメや漫画、ライトノベル、声優が好きだという

オタク女子であることが判明。優亜は少女漫画だけでなくあらゆるジャンルに詳しかった。話は盛り上がった。

意気投合する中、二人はお互いの勤務先を明かした。

浩史が大手企業に勤めていると説明すると、

優亜は、じぶんはこの市(T市)の市役所勤務だと答えた。


「えっ、じゃあ、俺の妹と一緒じゃないか。妹は今年市役所に入ったんだ。

T市はウチの実家とは全然関係ないし、県も違うし、ちょっと離れているんだけど、歴史的な町だから、

妹は興味持っちゃってさ、なぜかこの市を就職先に選んだんだ。

優亜...さん? はなぜここに就職したの?俺と同じ高校なら、実家は隣の県だろ?不自然だけど何で?」


「偶然だけど、私も妹さんと同じなんだ。

この街の歴史的な背景や観光地、B級グルメとかが好きで、この市に就職したの。


ちなみに、実家は今名古屋だよ。高校卒業する頃、父親が母親の地元の名古屋 に一軒家を建てて、

名古屋に引っ越したんだ。

就職にあたって、親は名古屋近辺を進めたんだけど、わがまま言わせてもらって、

こっちに一人で来た。

首都圏に戻りたかったっていうのもあったの。


それにしても、妹さん、私と同じ職場なんだ。

そういえば、違うフロアに富谷さんって女の子いたかもしれないっ。

うろ覚えだけど。」



「そっか、妹とは同じ部署ではないんだな。

でも、俺の妹は君のこと知っているかも。」


「どうかなっ?市役所は人いっぱいいるからねー。

フロアが違うと、全然顔と名前一致しないよ。」


そのあと、

かなり酔っ払った二人は最後にアドレスと電話番号の交換をして店の前で別れることにした。

浩史は自分が出すといったが、優亜はきちんと割り勘にしてくれた。


「やっぱり送っていこうか?女の子が酔ったあと一人で帰るのはちょっと危ないから。」


「ありがとう。でも近いから大丈夫!

それより、私のことをちゃんと思い出してね。じゃあ、私が誰かわかったら電話ちょうだい!」


「おおっ、了解。」


なぜか優亜はいつの間にかにメガネとマスクを装着していた。


手を振って優亜と別れ、駅に向かって歩きながら浩史は考える。


(今の女の子はいったい誰だろう?

とりあえず誰でもいいや!明日ゆっくり考えようっ。

今は酔っ払っているから、思考能力が低下している。

それにしても

誰が見ても可愛いと断言できるすごい女の子と知り合いになれたのはラッキーだ。

しかも、自分が世界で一番好きな作家を同じように好きだなんて、信じられない!)


あれだけ美人なら、彼氏とか確実にいそうだよな。

まあ、俺と付き合うなんてことはできないだろうけど、友達になれるだけでも、

すごいことだ。

高望みはせず、友達になっておこう。


あっ、マスクしてたけど風邪かなあ

アレルギーか?

メガネは飲んでいる時は外してたけど

そんなに視力が低いわけじゃないのかな?)


いろいろな疑問が湧き出てきたものの

浩史はいい週末になったと上機嫌だった。

舞台は北関東です。

イメージ的には群馬県と埼玉県を考えていますが、ずばりそのものではありません。

土地の位置関係などで参考にさせてもらっています。


しかも、最近は北関東に出かけることがないので、ずいぶん昔のイメージを使用しています。

でも好きな場所なんですよ。


28年4月1日追記


ついに28年度ですね。街にフレッシュな顔ぶれがそろいはじめます。


さて、私の小説のヒロインは美人オーラがあるという設定です。


美人オーラとは?


街を歩いていて、あっ、可愛いとか、きれいっと思わず振り返ってしまうような

女性ですね。


必ずしも、顔の作りがきれいである必要はないんです。

ごく普通でいい。

身長も低くていいんです。


全体のバランスがいいことが条件です。

顔が小さくて、髪の毛がきれいで、

肩幅が狭く、ウエストが細く、足もきれい。

その上で、姿勢がよく、がに股でも、内股でもなく、きれいな歩き方をする女性。

服も、スタンダードな服を着ているのに、体にしっくりしている。


まあ、全体のバランスが整っていて、颯爽と歩く女性って感じですかね。


人混みを歩いていると、若い女性で、そういう方を1日に何人か見かけます。


そういう人を見ると、どこが違うのかなあと、小説の材料にしようと思います。


さて、

がんばって、週末に次回をアップする予定です。

よろしくお願いします。

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