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明るい少女

ーー大切な何かを守ろうと命懸けになり

ーー自分が命を落としてしまった時

ーー大切な何かは深く傷ついてしまう

ーー自分しか守れない大切なものだ

ーー命を懸けず、全力で守っていこう


第1(めい) 「明るい少女」


私の名前は 合田 美咲 (あいだ みさき)

今年22歳、晴れて就職先が決まり

素敵な王子様が現れるまでは、バリバリ仕事を頑張っていきたい。

花の命は短いって言うけれど

私は運命の人なるものに本気で憧れている。

そのうち周りに急かされて歳を重ねていったとしても、焦って結婚なんて事だけは絶対したくないんだ。


とにかく、今日は就職先への初出勤。

身だしなみもバッチリだし、早速運命の人と出会っちゃうかもな〜。

なんて妄想に朝も早くから耽ってしまった。


美咲「ママおはよー!パパは?」


美咲母「みさちゃんおはよう、お父さん行きの電車が遅延してるみたいで、タクシーで職場にむかってったわよ」


美咲「あちゃー!朝から大変だねパパ!」


美咲母「うん…美咲と一緒に駅まで行きたがってて…すごく残念な顔してたのよ」


美咲「…そっか。 本当娘想いな両親の間に生まれたんだね私…幸せだなあ」


美咲母「そうよ、美咲は私達の大切な宝物だからね、初出勤、バッチリうまくいく事を祈ってるからね、お父さんもお母さんも」


パンをかじりながら話していたのだが中々飲み込めなかった。

初出勤の日に涙でメイクが滲んだらどうしてくれるんだと、私は幸せを噛みしめた。


気持ちは落ち着き、時計を見て、少し慌てながら朝食を済ませた。


美咲「ママ!ごちそうさま!お仕事頑張ってくるね!行ってきます!」


美咲母「はーい、気を付けていってらっしゃい!」


玄関の扉を開け、出迎えてくれる朝日を浴び私は意気揚々と歩き出した。


季節は春の中頃

桜の花びらが風に舞っていた。

私はその光景にこれからの自分の未来を祝福されている気がして、とても穏やかな気持ちになった。

日差しが強く少し暑いが、そんな事は全く気にならないほどに。


歩く道の途中、少しボロ目の自転車をこぎながらすれ違った人がいたのだが

見た感じ桜をうっとおしそうに手で払い、暑そうなダルそうなそんな顔をしていた。


そんなこんなで駅に辿り着き会社方面への電車を待った。

美咲(予定通りだったら、パパとさっきまでは一緒だったんだよなあ)

少し寂しい気持ちになりながらも、電車の運ぶ少し強い風が、その気持ちも飛ばして行った。


座席は埋まっていたが、思っていたより電車の中は空いていた。

これが通勤ラッシュってやつか…と洗礼を受ける準備をしていたのだが…。


次の駅に着くと人が少し多めに乗って来て少しばかり、車内が混み始めた。

その中で私が目に付いたのは、新し目のスーツを着た私と同じ歳くらいの人。

電車が発車してから、しきりにネクタイや襟元を正そうとする姿からこの人も今日初出社なのかなと、考えていた。

ーーそんな時だった。


男の声「なあー?婆さんよお?老人には優先席があんだろ?!なんでこっちの席に座ってんのよ?!俺ちょっと飲みすぎちゃってさあ〜ハハハッ!…席どいてくんね?」


その男は見た感じ30代くらいの、俗に言う、ちょい悪オヤジみたいな風貌だった。

話し方といい振る舞いと言い、飲み屋からの朝帰りといった所か、随分酔っているように見える。


そして不思議なのが誰もそれを止めようとはしないのだ。

美咲(なんで?なんで誰も止めないの?日常の風景ってわけじゃないでしょ?!)

そう思いながら私がどうにか声をかけようとするが、やはり悪酔いしている男は怖い…。

そうこう迷っているうちに1人の人間が声をかけた。


青年「ちょっと、すいません」


その青年は先ほどのスーツの青年だった。


青年「酔っていて席に座りたいのはわかります。でも、あなたは明らかに健康体に見えて、それなのにお年寄りの方に席を譲れっていうのは…その…僕には許せない行為です!」


青年は震えながらも果敢に立ち向かっていた。


酔っ払い「なにお前?いきなり割って入ってきてー?許せないなんちゃらー?じゃあお前椅子にしてやるからこっち来い、うん、こっち来いほら、おい」


そう言って酔っ払いは青年の襟を掴みドアに押し付けた。


流石に黙ってられなかったのか、周囲の人間が止めに入るも、罵声と殴る仕草で

追い払ってしまった。


酔っ払いは続けた。


酔っ払い「お前〜次の駅で降りろ!な?ちょっとお兄さんとお茶でもしようや?な?!」


青年は静かに口を開いた。


青年「わかりました。みなさんのご迷惑にもなります、次で降りましょう」


流石に私は黙っていられなかった、と言うより、気付いたら叫んでいた。


美咲「ちょっと!おじさん!!あんたはこれから家に帰るかもしれないからいいけど、そのお兄さんの格好見なよ!仕事に行くんだよ?!それをおじさんの勝手な都合で止める権利なんかないじゃん!」


正直、冷や汗で背中に日本地図が浮かび上がるくらい怖かった。

でも怖いよりも、許せないがどうしても上回ってしまったのだ。


酔っ払いがギロッとこっちを向く。

青年から手を離し怒号を吐きながら私に近寄ってくる。

怖い、怖すぎる、今にも泣きそうだ。


酔っ払い「姉ちゃん姉ちゃん、なんつったの今?よく聞こえなかったからもっかい目の前で話してくれよ?俺女でも容赦しねえからな〜?ハッハッ」


もうダメだ、泣いてしまう。

謝ろう謝ろう謝ろう。

私の頭の中にはそれしかなかった。

なにも謝る必要なんてないのに、悔しかった。


青年「ちょっとあんた!俺と次の駅で降りるんでしょ!余計な事しないでこっち来てくださいよ!」


その瞬間だった、酔っ払いは今までに無いくらい大きな声をあげ、青年に掴みかかった。

訳のわからない言い掛かりを延々とつけている、そんな時だった。


男の声「ちょっと!あけて!通して!おいお兄さん!何してるの!」


騒ぎを聞きつけたのか、男の人が割って入った。

男の人が酔っ払いに声をかけた。


酔っ払い「なんだよお前?俺に言ってんのか?あ?」


男「君以外いないでしょ、次の駅で降りるからね」


酔っ払い「なんだよお前?何様だよ?あ?」


男の人は胸ポケットから手帳を取り出し突きつけた。

私服警官「警察だよ、言いたい事はおりてから全部聞くから今は何も言わなくていいよ」


酔っ払いの顔がどんどん白けていく。


私服警官「あーあとそちらのお兄さんも何があったか聞くから一緒に降りてもらっていいかな?」


青年「わかりました、次で降り…」

美咲「待って!」


私服警官・青年「?!」


美咲「この人は何もしてない!あの人が一方的に突っかかっただけです!」


私服警官「いやね?そうだとしても事情聴取しなきゃいけないんだよ」


美咲「じゃあわかりました、私も次で一緒におります!」


青年は目を丸にして驚いていた。


私服警官「ん?お姉さんも何か関わったのかな?」


美咲「私も少し関わったし、何よりこのお兄さんが絶対に何もしてないっていう証明をしなきゃいけないから!」


青年「いや!大丈夫ですよ!俺の事は気にしなっ」

美咲「いいから!!」

青年「…はい」


私服警官「わかった、とりあえずこれ以上は他の方へ迷惑になるから着くまでは喋らないでね。」


そして次の駅に着き、警察の事情聴取が始まりずいぶん長い時間を取られ、ようやく解放された。

携帯には会社からの着信がズラリと並んでいて私は青ざめた。

青年も携帯を見て青ざめていた。


青年「本当にすみません!僕のせいで巻き込んでしまって…会社…大丈夫じゃあないですよね…?」


美咲「謝らないでください、それにそれはあなたもですよ、一緒に言い訳考えます?」


美咲が茶化すと、青年は優しく微笑んだ。


青年「そうですね!僕は〜今日が初出勤なんで、寝坊してしまったなんて言って謝りましょうかね!」


美咲の予想は当たっていた。


美咲「わ、わたしも初出勤なんです!じゃあわたしもその理由にしようかな笑」


青年は少し驚いた後 2人で大きく笑った。

そしてよく話してみると2人は会社が同じだった事がわかり、これなら全て証明出来るという事で一緒に会社へ向かう事にした。


美咲は思った、これは運命の人と出会ったかもしれないと。

しかし、物語は美咲の思った方向へ進む事は無く展開していく事になる。


ーー続くーー







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