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第三話 勇者降臨

「あ、あのぉ。入部希望者ですけど……」


 マズイ、非常にマズイ。

 こんな真面目そうな、文学少女を部に入れたら。

 読書部ではなく、厨二部だと、バレてしまう。

 どうする、恭子!?


 恭子は、文学少女に近づき、肩に手を置いた。

 文学少女は、少し震えながら止まっていた。

 そして、恭子の口が開いた。


「うむ、いいだろう。君のような人を待っていたよ」

「ウソ言うなぁぁ!! この部が待っているのは、厨二病患者と、幻想力の強い人間だ!!」


 その言葉を思わず口にした瞬間。

 俺の腹に、鈍い痛みが走った。痛い……。

 下を見ると、そこには細い、綺麗な足があった。


 足フェチではないが、美しい足だった。

 そこで俺は気付いた。俺、蹴られている。

 気付けば、足から吹き出す衝撃と共に、俺は飛んだ。


 そして、背中を壁に打ち付けた。

 いってーな……。誰がやったんだ? いや、見当はついている。

 視線を上げた。


 そこには、足を高く上げた、由美の姿があった。


「必殺……ダークの 瞬蹴ブランザム……神への暴言は許さない」

「う……ぐっ……良い蹴りだった……足も綺麗だったよ」


 俺はその後も、ボコボコに蹴られ続けた。


「あ、あのぉ。大丈夫ですか? 怪我しているのでは……?」

 

 文学少女が、俺に寄って来た。

 そして、ハンカチで俺の汚れた顔を拭いてくれた。

 なんて、優しい子だ。


 髪はセミロングの黒髪で、吸い込まれそうな青い、海のような瞳。

 うむ、彼女にしたい。


「あ、ああ。大丈夫だよ、たいして痛くなかったし」


 ここで、さりげなく若干、由美のなんたら蹴りを侮辱。

 由美も負けじと、言い返してきた。


「そいつ、キモい病だから危ないわよ」

「おまえは、厨二病だろ?」


 俺が笑いながら言うと、再び由美の蹴りが飛んできた。

 

「先生、これで人数は足りました。良いですよね?」

「いいわよ、恭子ちゃん。先生は、会議があるから後は、まかせるね」

「はい、先生」


 母さんは、皆に「また、明日~」と言うと、部室を出た。

 さて、どうするか……。どうせ、厨二共が騒ぐに決まってる。

 俺は、カバンに随時しまっている、ラノベを取り出し、読書に行動を移した。


 すると、恭子も、由美も、琴音も、文学少女も、本を取り出した。

 そいえば、名前聞いてなかった。後で聞こう。

 それにしても、真面目に読書している。


 いや、こいつらに限ってそれはない。

 今に見てろ、きっと化けの皮が剥がれるに違いない。

 俺は読書に集中した。


   ――三十分後――


 おっと、読書に集中しすぎてしまった。

 最近の異世界ファンタジーはおもしろい。皆も読んではどうだろうか?

 さてさて、化けの皮は……何だと!?


 俺の目の前に座っていたはずの、四人の姿が消えていた。

 どういう事だ……?

 俺は、かすかに後ろから声が聞こえ、振り返った。


 窓……運動場か!?

 俺は、窓を開け、運動場を見下ろした。


 そこには、琴音と文学少女が対立している姿と。

 それを観戦している、由美と恭子の姿が……。


「一之瀬 由香里!! 私は魔界の王の娘として、貴様を葬る!!」


 一之瀬 由香里? ああ、文学少女の名前か……。

 と、由香里に目線を向けた。

 由香里の手には、木刀が握られてた……まさかっっ!!


「私は、勇者の娘として、貴様を倒し、人々に平和をもたらしてみせる!!」


 おまえも、厨二病だったんかーーーーーいっっ!!!!

 おいおい、嘘だろう……あんな優しい文学少女が、裏では勇者やってましたってか?

 痛すぎんだろっ。


 俺は、机に戻り、由香里の読んでいた本を見てみた。


  ――正義の勇者道――


 対立の原因はこれだろう。

 魔界の住人、それも魔王の娘と、勇者の娘。

 闇と光。


 まあ、よくあるシナリオだな。

 俺は、もう一度外を見た。


 そこには、ボロボロになっていた、琴音の姿が……。

 何があった!? 


「ふん、魔王の娘でも所詮この程度……呆れたものだ」

「なんだと……貴様……私は、真の魔王となる者。まだまだいける!!」


 ※ ここからは、彼女たち(厨二病)の幻想域突入の模写となります。

   彼女たち(厨二病)の努力と妄想力を暖かく見守ってください。

   所詮、幻想と妄想なのでご注意を……。


 突如、闇を表す、黒いオーラが琴音を包んだ。

 そして、琴音は立ち上がった。


「私は……負けない!! 第195の魔法。ダークフレイムの(・)咆哮アリースト!!!!」


 琴音の押し出された右手の掌から、名の通り、闇の炎が噴き出され、由香里に向かった。


「こんなもの、この聖剣で受け止めてやるっ!!」


 由香里は、聖剣(木刀)で、闇の炎の咆哮を受け止めた。

 さすが、勇者。と言うべきか……。


「ふん、ツメが甘いな。勇者よ」


 その瞬間。

 由香里が受け止めていた、闇の炎が弾けて、爆発した。

 聖剣は、弾かれ、由香里は生身で受けてしまった。


「きゃあああああ!!!!」


 その叫びと同時に、由香里は力尽きた。


 運動場には、勇者を嘲笑う魔王の姿と、それを可哀想な眼で見ていた、

 生徒と職員の姿があった。

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