StarDust
>>reentry sequence : final phase 97%
そこに響いているのは噛み合う鉄の音
ここに響いているのは電子音だけだ
周回軌道上の作業ステーション、この場所には生命が存在していなかった。さもありなん、元来稼動していたのはもう千年は前の単位であったしそれ以来訪れるモノはなく管理用ドロイドの補修作業以外で動く物は皆無だったからだ。
だった、という言葉のとおり現在では確かに存在しているモノ、あるいはその使命のために長い間なかった新規作業を試行中の機内は往年の輝きを取り戻したかのごとく煌々と光を漏らしている。
ステーションの一室、と言い表すには巨大すぎる空間の中、ありていに言えばここは発着ベイだった場所。
港内には船体はなくがらんどうの空間が広がっていてそこ彼処に年月の積み重ねか補修痕と錆が目立つ。
その中央にはある『モノ』が静かに存在していた。
備蓄とデブリから回収した資材で形作られているのは一見すると装甲材の押し固まった物のようだ、継ぎ接ぎだらけで色も斑。けっして正規品には見えないがしいて言えば卵、あるいは棺桶のようにも見えなくもないがそれを評価するものは誰もいなかったし機械にとってはデザインすら機能の一部として設計されているのでそれに叙情感を求めるのは酷と言う物だろう。
レールにすえつけられた『てつのかたまり』はある条件を満たすためだけに作られ、最終作業工程を終え――
>>reentry sequence : final phase launched!
ゴゴンという重低音が響き、続いて爆発が起こった。
放置されていた端材や塵が横に流れていく、ベイ全体が切り離され移動しているのだ。
しばらくすると部屋全体がガタガタと揺れ隔壁が破れたのか空気とともに塵が吸い出されていく。
壁の一面が吹き飛ぶが音はしない、完全に真空になったのか外には薄青暗い宇宙が広がっている。わずかずつだが青の濃さが増していき星の光は遠くなっていく……降下しているのだ。
何度かの軌道変更の後振動は激しさを増し、摩擦による炎の尾を引きながらベイは落ちていく。
そんな時突如左舷側に爆発が起きた。今までの軌道変更に必要なスラスターの噴射とは別物の巨大な爆発だ。
角度と速度に致命的なズレが発生したのか全体を覆う炎は増し、フレームがむき出しになっている部分もある。
残された右舷側スラスターによる制動を懸命に行っているようだがついに力尽きたのか重力に引かれるままだ、とその時。
残された底部から何かが突き出された、レールだ。すぐにそこに鎮座していた『てつのかたまり』が射出される。
数瞬のうちに爆発四散するベイ、さらに落ちていく『てつのかたまり』。
『てつのかたまり』もまた熱に侵され流星の尾を引いている、外装がバラバラに弾けていき中から現れたのは大気圏突破に必要な耐熱装甲。
つるりとした黒光りする装甲に包まれたこの物体――急造品の突入用シェル――は大気の摩擦に耐え……突入に成功したのだ。
陽光が色を取り戻し分厚い雲に飛び込む寸前、それは一つの信号を発した。
残されたステーション、その大きさは分離前の三分の一ほどしか残っていない。
管制区画にあるステーション管理AIは突入成功の信号を受信し光学映像を精査するのを中断する。
作業にミスはなかった。ただ惜しむらくは2点、一方はありえなくもない偶然。もう一方は悪魔めいた確立で発生した事故でこの命令を完遂するには少々の時間を必要とすることになるのだろう。
彼(あるいは彼女)の体を構成する各部位は経年劣化でもはや限界が近い。今回の作業のために予備部品は使い尽くし、維持に必要なブロックまで突入に使ってしまっている。加えて軌道変更による構造体の捩れは限界を超えた。
試算では20数時間の後に崩壊し重力に引かれ落ちていくはずだった。ただ彼はそれでもよかったのだ、命令を遂行する、それだけが彼の全てであり存在意義でもあったのだから。
その中に彼自身の保全は待機状態でなければ課されてはいない命令だったし今回の命令はそれを上回る物だから――
彼は考える、作業完了予定時間が延びれば自分は存在していないだろう、と。投下したモノからの完了信号を受け取ることなくして自分が命令元に情報を送信することは出来ないだろうと考える。
今すぐに報告したところで遠い宇宙の果てに届くのは数十日を要するだろう、彼は決断しなければならなかった。
そして
暗い部屋の中残されたのは最後のメッセージだけ
>>primary task : reboot CNP
最後のメッセージだけだった。
これはテストです 実際怪しくない、安心です
ニンジャ的成分が明らかに不足している系の不具合、修正されテッ




