7.父と娘①
夕食の時間はつつがなく過ぎました。
というのも、明日に立太子の儀を控え、誰もが忙しかったからです。いつもほどの会話もなく、早々と食事を終えました。兄の軽口も冴えないのは、やはりこんなひとでも緊張しているせいでしょうか。立太子の儀は成人の儀。というより成人するから皇太子として立てるわけですが、‥‥そうですか。こんなひとでも明日からは大人として認められてしまうわけですか。立太子がどうこうより、そちらのほうに不安を覚えるのは何故でしょうね。
慌ただしい食事を終え、先生に連行される兄を見送って、私も一度自室へ戻りました。
それから、国王の私室へ向かいます。
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ノックの音が響きました。応えはすぐに返ります。
ちなみにノックをしたのは私ではありません。国王の私室には控室があり、そこに常駐する騎士を兼務する父の侍従のひとりです。王族というのは基本、自分の手を動かさないものですから。
「父陛下、参りました」
「マールか。入りなさい。
それからお前たちは下がってよろしい。明日は忙しくなるからな」
わらわらと、侍従やら騎士やらとすれ違います。明日は忙しくなると言いながら、この時間まで公務をしている父に、仕事中毒の称号を差し上げたくなりました。尊敬はしているのですが、少し休まれたらいいと思います。
もっとも、これから厄介な案件を持ち込もうという私がする心配ではありませんね。
「それで、どうした?」
私は父に頭を下げました。
「‥‥明日の立太子の儀が終わったら、私の為に叙勲の儀があると聞きました」
単刀直入する私に、父は苦々しい顔をして見せました。
「‥‥聞いたのか。礼を言うために来たのでは、ないだろうな」
「はい。
私に騎士は必要ありません」
叙勲の儀を中止するのは無理です。すでに騎士に上がる者の選抜は終わっているでしょうし、式典というものは行うのも中止するのもとてつもない労力がかかるものです。だから、私の騎士にしないだけでよいのです。