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宵闇の騎士  作者:
第1部
7/59

6.王族の食事事情

 みっちりと鍛錬をつけてもらい、夕食前に汗を流すべく私は自室に戻りました。


 騎士がついていないのは名の事情のせいだとしても、私には侍女の一人もおりません。それは、おそらく王侯貴族としてはありえないと言ってもいいくらいのことでしょう。けれど私がそのことについて文句を言うことはありません。私は確かに10歳の小娘ですが、自分のことくらいは自分でできます。


 それに遠ざけたのは私のほうですから。


 もちろん両親をはじめ、大人のかたがたは反対しました。今だってありえないと思っていらっしゃるようですが、けれど今のままで問題がないこともひとつの事実。文句も言えないことを歯がゆく思っているのは知っていますが、私だって譲る気はありません。


 私に周りの者など必要ない。いてほしくないのです。


 夕食後には父の元へ行く予定ですから、少しばかり動きやすさよりも見目のよさを優先して、私は準備を整えて食堂へ向かいました。


 私自身も大概、王侯貴族としては規格外でしょうが、私の家族もかなり王族としては変わり者の部類だと思います。王族と言えば、血で血を洗う争いを繰り広げていてもおかしくはない、とまで言えば言いすぎですが、それでも家族仲など冷え切ったものであるのが常識のようなものです。それもどうかと思いますが。そんな中、クルサンドの王家の家族仲は普通です。いわゆる市井のひとびとの普通くらいの仲のよさ。


 一日の食事のうち、夕食だけは必ず家族で摂ります。まぁそこは王族ですので、当然給仕の者たちはいるわけですが、それも最低限として。


 ただほやほやとしているだけが理由ではありません。そこで、血族としての密談が行われることも珍しくはないようです。が、現状、王家には王と王妃、そして二人の子供しかありませんので、これまでは市井のかたがたの普通くらいの会話が交わされる程度でした。明日立太子の儀を経て、兄が皇太子となれば、また話は変わるのかもしれませんが。


 準備を整えて食堂に向かうと、席に着いていたのは父だけでした。


 直前まで母の剣士を相手に鍛錬をしていたものですから、それに付き合っていた母も、直前まで鍛錬場にいました。準備にはまだかかるでしょう。兄にしても、鍛錬前に出会ったあの調子だと、また無邪気に先生がたをヒートアップさせていそうです。


「父陛下」


 扉のところから呼びかけると、食堂にまで仕事を持ち込んでいた父が、書類から目を上げました。


「夕食後に時間を取っていただけると聞きました」


「マールか。

 お前が無理を言うなど珍しい。人払いをしておくから、私の部屋に来なさい」


「ありがとうございます、父陛下」


 人払いをしておく、とこんなに堂々と口にして、警備とか大丈夫なんでしょうか?


 疑問は覚えましたが、ありがたく受けました。誰かに聞かれると面倒くさい事でもありますしね。

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