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宵闇の騎士  作者:
第3部
30/59

29.さらに4年が過ぎました

 わが唯一の姫を見出した私は、目に見えて落ち着いた、そうです。



 あまり自覚はなかったのですが、やはり余裕がなかったそうなのです。私はわが姫に再びお会いすることだけを望んで今世を生きていました。己の主を見失った騎士など、それはそれは哀れなものです。よりどころがないのですから、そりゃ影を背負うというものです。まして私は忌み名を持つもの、実は多くのひとたちに見守られ、言い換えれば監視されていた、そうです。私はまた、魔法使いと同じ名を持ち、鍛えてはいないもののかなりの魔を持つ私の力が暴走しないように注視されているのだと思っていましたよ。


 だから、私があの日、封印の塔の封印を解いたことは、父は知っていました。ということは私のその手に鍵板(かぎばん)があったことも知っていたということです。案の定兄は叱られていましたが、それは自業自得というものです。恨めし気に見られたところで私のせいではないじゃないですか。


 もっとも、封印の塔には私以外誰も入られませんでした。宵闇のエンの封印が、そう簡単に解かれるはずもありませんけどね。封印した本人でさえ、きちんと名を思い出さなければ締め出されっぱなしだったくらいですから。


 私は自分に監視の目があることは承知していました。


 だから、あの日、一人で塔に入ったはずの私が塔から女性を連れ帰っても、父は驚きませんでした。すでに報告は行っていたのでしょうね。そして私が彼女を侍女にと望んでも、やはり諦めたように嘆息するのみでした。


 そう、今私の傍らには、常にわが姫がいらっしゃいます。表向きは、他人嫌いの困った王女が唯一気を許す侍女として。


********************************************


「‥‥わが姫。ありがとうございます」


「疲れたときはお茶でしょう?」


 わが姫が手ずから淹れてくださったお茶を賞味します。あぁ、美味しい。


 準備は当然私がしますよ。表向きは侍女なので、この部屋に運び入れるところまでは致し方なくお手をお借りしますが、部屋に入って扉を閉めればしめたもの。私が席を準備して、茶菓子を並べて、そしてお茶だけ淹れていただきます。わが姫の淹れるお茶はとても美味しいのです。


「‥‥それで、王様は何て?」


「私の隣国への輿入れが、決まったそうです」


 そう、私は父に呼び出されておりました。


 もっとも内容については予想していました、私も昨年成人を無事迎えたことですし、兄の婚約者様も、兄との成婚はまだですが、この半年ほど逗留されています。お式もそろそろでしょう。


 ということは、私がこの国を去る日も近付いていたということです。

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