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宵闇の騎士  作者:
プロローグ
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プロローグ

 例え何を敵に回そうとも、守ろうと決めていたのだ。


「わが姫」


 空高くそびえる尖塔の頂上、見渡す限り青空しか見えないその場所で、闇色のその人は己の姫と向き合っていた。


 頭髪も瞳も、まとうものも全て、宵闇の色を宿していた。


 対する姫は、黄金の長い髪と、今日の空を映したかのような瞳を持っていた。姫、と聞いて大方のひとが想像するようなきらびやかさとは無縁だが、仕立ての良いドレスをまとっていた。


 荒れ狂う風の音、けれど尖塔の上に立つ2人の周りは穏やかなものだった。


「わが姫、願ってください」


「‥‥分かっているの」


 美しい、よりは可愛らしいと表現されることのほうが多い、そんな姫の表情はけれど悲痛で、鈴のようなと表現される声は、か細く絞り出すかのようだった。


「分かっているの‥‥エン、分かっているの、わたしにだって‥‥」


「私は貴女の騎士です、わが姫」


 だから願って。


 例え何を敵に回そうと、貴女の願いを叶えるから。


 誰の怒りも怖くない。貴女の涙ほどには、闇色のエンにとって痛手とはなりえない。


 かつて飽きるほど繰り返したそれは、事実。


「わたしは‥‥

 争いの元になるのなら、災いの元となるのなら、こんなわたしなんて――」


 それがただ逃げることだとしても。


 全ての責任から逃れることだとしても。


「‥‥分かっています、わが姫‥‥」


 貴女の憂いはこの私が、絶ってみせましょう。


*******************************************


 その日、大陸唯一の国の、唯一の姫が、消えた。


 同時に、常にその傍に控えた、闇色の魔法使いもその姿を見せなくなった。


 国は分裂し、新たに建ち、争い、併合し、消えては生まれ――


*******************************************


 それから数百年後、かつての首都だったところに興った小国から、物語は動き始める。

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